海賊じいちゃんの贈りもの(What We Did Do On Our Holiday)スコットランドが美しいコメディドラマ映画

「What We Did on Our Holiday(海賊じいちゃんの贈りもの)」は、2014年のイギリス映画(ジャンルはブラックコメディドラマとのこと笑)。デイヴィッド・テナント、ロザムンド・パイク、ビリー・コノリーの出演。

BBCのテレビシリーズ「Outnumbered」のクリエイターによる作品なので、3人の子役が素晴らしく、彼らの魅力がよく出ていると思います。スコットランド・ハイランズの壮大な風景も見どころで元気をもらえますし、スコットランド調のBGMも優しくて癒されます。

オープニングタイトルはダグの父のボートが揺られていたスコットランドのLoch(スコットランドで「湖」のこと)。湖のそばにある山や雲も美しいです。スコットランドでは雲が低い位置に見えることがよくあります。(画像は引用目的で使用しています)

目次

What We Did on Our Holiday(海賊じいちゃんの贈りもの)あらすじ

別居中で、離婚の手続きを始めようとしていたダグ(デヴィッド・テナント)とアビー(ロザムンド・パイク)。

二人は、末期がんを患うダグの父ゴーディ(ビリー・コノリー)の75歳の誕生日を祝うため、3人の子供を連れてスコットランドの田舎へ向かうところでした。アビーは二人の関係をゴーディに正直に話すべきだと主張しますが、これが最後のパーティになるだろうと予期しているダグは、アビーを説得し、子供たちにも「我々は一緒に住んでいること」を装うよう念を押します。ダグの兄で大富豪のギャビン(ベン・ミラー)は、近隣の有力者を招いて豪華なパーティーを企画していました。

ダグとアビーは顔を合わせるたびにすぐに口論になり、子供たちが「(口論を)始めないで」と止めることもしばしば。子供たちはそんな両親に不満を感じないわけはなく、半ば諦めている状態。ダグとアビーは出かける前にドタバタ。家の中にはものが多く、鍵が見つからなかったり、乱暴な言葉が飛び交ったり、その中で当然のように口論になるのです。

長女ロッティ(エミリア・ジョーンズ)は、両親が別居して嘘をつき合っていることに不信感を抱き、彼らの発言をノートに記録するようになっていました。弟のミッキー(ボビー・スモールドリッジ)はバイキングに夢中で、出発前までバイキング式の葬儀の映像を見ていました。

ジェス(ハリエット・ターンブル)は石やブロックに名前をつけるほど想像力豊か。でも、自分の主張が通らないと息を止めてストライキを起こすことがあります。気絶するまでやめなかったことも過去にあり、ダグとアビーは恐々としています。この子は長いセリフも難なくこなし、ダグとの会話でも、彼よりも台詞が多いのではと思ってしまうほど。玄関先で子供らしくシールの本を広げているのに、母の乱暴な言葉をたしなめる台詞も秀逸で、仕草も素晴らしいです。

車の中でも口論を繰り返す二人。子供じゃなくても一緒にいて疲れてしまいますよね・・・。
「ロンドンからスコットランドに1日で車で行けるわけがない」というアビーに対し、「もちろん行ける」と言うダグ。「口論しないで」とロッティーが口をはさみ、ジェスは「そして警察がくるんだよ」と続けます。どうやら過去に警察のお世話になったこともある様子・・・。両親は子供たちに「一緒には住まないけど、3人のことは愛しているし大切に思っている」と説明しますが、子供たちは両親の口癖や口論のパターンを覚えてしまっています。

(実際にはロンドンからスコットランドに車で1日で行くことは可能で、私も何度か行ったことがあります。ただし6時間ほどかかります笑)

途中、渋滞に巻き込まれていると、ギャビンから到着時刻を尋ねる電話が入ります。アビーは長時間のドライブは大変だから途中で泊まろうと提案しているのに、「遅くなるけど今日中には着く」と返答してしまうダグ。お互いに話は聞かないようです。そして途中で車を降りて外で口論を始める二人。それを車内から見ることになる子供たち。気の毒です・・・。

スコットランドでは、ゴーディがギャビンの息子(つまりゴーディの孫)ケニー(ルイス・デイヴィー)と一緒に山の上からLochに沈む夕日を眺めていました。ケニーは真面目そうな学生で、Lochを目の前にバイオリンを弾きますが、ゴーディは「好きな曲を弾いたら」と提案します。しかしケニーは「試験の練習をするから」とクラシックを弾き続けます。

なぜかこの映画には、ときどきダチョウが横切ります。どこから来たのかは観ているうちに判明しますが、エピソードを通して登場し、忘れたころにまた姿を見せるのです。

スコットランドに到着する4人

ギャビンの豪邸に到着すると、ダグとアビーはわざとらしく良き夫婦を演じます。ギャビンは屋敷全体がスマートハウス・システムで管理されていると誇らしげ。しかし、ジェスやミッキーはそれのどこがいいのかと子供ながらの疑問を口にしたり、ギャビンの職業についてもあれこれと子供の視点から意見を述べたりします。

口止めされていても、つい本当のことを話してしまう子供たち。小さいので無理もありません。
ミッキーは無邪気に、ゴーディの誕生日パーティはこれが最後だと、両親が話していたことを口にしてしまいます。ゴーディは気にも留めず、心配するロッティに自分の病気について話します。ロッティはそれを書き留めながら両親がよく嘘をつくことを打ち明けます。ゴーディは、ときに嘘には良い意図を持ったものもあるから、と励まします。

ゴーディが、過去に受けたDNAテストで自分の血の84パーセントがバイキングだと判明したと話すと、ミッキーは興奮します。ミッキーはバイキングが崇拝していた北欧の神オーディンが好きだと語ります。

ダグは、アビーが水面下で子供たちを連れてニューキャッスルに引っ越そうとしていることを知り、また口論に。口論する二人の声は、階下のキッチンにいたゴーディとギャビンの妻マーガレット(アメリア・ブルモア)にも聞こえます。ミッキーは「心配しなくて大丈夫。二人は別々の家に住んだりしてないから」と、フォローになっていません笑。子供だから仕方ありません。

ダグとギャビンの兄弟げんかも通常のようで、二人の言い争いが始まりそうになると、ゴーディは「ほら、また始まったよ」と残念そうな様子を見せます。

マーガレットは良妻賢母タイプですが、ギャビンの自己中心的な態度が原因でうつ病を患っています。抗うつ薬の副作用で感情を抑えきれなくなり、スーパーマーケットで他の客に暴力を振るうメルトダウンを起こしたことも。CCTVに記録されたその様子はYouTubeで拡散されていました。息子のケニーはその動画の存在を知っていましたが、マーガレットは知らず。ギャビンに関しては彼女がうつを患っていたことさえ理解していませんでした。

そして、ゴーディの誕生日。朝からパーティの準備が始まり、大きなマーキーも設営されます。ゲストは200人以上と聞いて驚くダグ。

しかし、ゴーディは出かけると言い出します。皆が彼の体調を心配する中、ゴーディは自分の誕生日は好きなように過ごしたいというのです。7時までには帰ると約束し、ロッティ、ミッキー、ジェスを連れて出かけてしまいます。道すがらの景色がどこも美しいので必見です。

4人はゴーディの友人ドーリーンの農場に立ち寄ります。そしてそこにはダチョウがいるのです笑。
ミッキーが、アビーが乱暴な言葉で弁護士のことを話していた、と話すので、ゴーディもドーリーンも何事だろうと思案します。そしてロッティが両親が離婚するかもしれないと話したので、ゴーディは事情を呑み込みロッティに寄り添います。

バイキング式の弔いを

海辺に到着した4人は、散策したり石を投げたりして遊びます。子供たちがゴーディを砂に埋めて遊んでいると、冗談好きなゴーディーは死んだふりをして3人を心配させます。そして何気なく自分の葬式は派手なものでなく、誰も言い争うことなく、バイキング式のシンプルなものだったらいいのにと語ります。

両親の嘘について怒りを感じていると話すロッティに、ゴーディは「それが愛する人のありのままの姿だったら腹を立てても仕方がない。人にはみんな滑稽なところがあって裁いたり争ったりしても最後には問題ではなくなる」といって励まします。

子供たちがカニを探しに行くと、ゴーディは亡き兄フレイザーの姿を見ます。自分の迎えが来たことを知ったゴーディはそのまま浜辺で息を引き取ります。戻った3人はまたゴーディが死んだふりをしているのかと疑いますが、そうではないことに気づきます。

「大人を呼びに行くべきだ」というロッティに、ミッキーは「大人は口論ばかりで、おじいちゃんはもうたくさんだと言っていた」と反論します。とにかく屋敷に急ぐロッティ。その間、ミッキーとジェスはゴーディの遺体の見張り役をします。走るロッティも、見張りをする二人の姿も本当に愛らしいです。

屋敷に着いたロッティはダグとギャビンが口論していたので、アビーに話そうとします。しかし、そこにダグがやって来てまた口論に。ロッティは必要なものをまとめて海岸に戻り、「ミッキーの言う通り大人は口論ばかりだから、おじいちゃんの願いだったバイキング式で弔おう」と提案します。

準備をする彼らの会話も愛らしいです。ゴーディを乗せるためのバイキングのボートをどうするのかという問題に、ミッキーは「ヨークに1つあるのは知ってるけどね」と言います。ヨークにはヨービックセンターというバイキングの展示で有名な博物館があります(なかなか面白い博物館です)。

「だけど、博物館が貸してくれるとは思えない。燃やしちゃうし」と肩をすくめますが、まずはスコットランドからヨークまで行かないといけないですけどね・・・笑。

3人は車を動かしたり材料を集めたりしていかだを作り、ゴーディの遺体をその上に乗せます。ロッティは簡単に弔辞を述べて「話ができる人がいて本当に良かった」と続けます。そして、いかだに点火して海に流し「おじいちゃんは私たちを誇りに思ってくれている」というのです。

美しい景色と可愛い子供たちの後ろ姿・・・

3人が歩いて屋敷に戻ると、大人たちは「何があったのか」「ゴーディはどこだ」と慌てます。「おじいちゃんは死んだ」と子供たちが話すと、ギャビンがどこかに電話をします。しかし「海に流されていった」「燃やされた」「バイキング方式で」といった子供からの追加情報により、必要なのは警察なのか、救急車なのか、沿岸警備隊なのか分からず、いたずら電話だと思われてしまいます。ダグとギャビンが浜辺に行くと、満潮により半分水没したゴーディのトラックを発見します。

そうこうするうちに屋敷には次々と人が集まります。家族が慌てふためく中、ミッキーは招待客の中に黒い眼帯をしたカザロット氏(ラルフ・リアック)を見つけ「Odinが来た」と喜びます。

マーガレットは客にゴーディの死を知らせますが、子供たちの行為はすぐに招待客の間に広まってしまいます。そして、ミッキーとジェスがケニーのパソコンをいじっていると、マーガレットのスーパーでの動画が屋敷で流れてしまい、マーガレットの秘密も露見してしまいます。

屋敷には警察がやってきて、ソーシャルワーカー(セリア・イムリー)も同行。ソーシャルワーカーはそれぞれの子供たちに話を聞き、ロッティとの会話の後、彼女のノートを預かることに。ロッティが書き綴った内容から、ソーシャルワーカーは子供たちを両親から引き離すべきではないかと検討し始めます。もちろん心配するダグとアビー・・・。

ほどなくして、マスコミが家に押し寄せ、ロッティたちのバイキング式の弔いが世界中のニュースで報道されてしまうのです・・・。

「海賊じいちゃんの贈りもの」キャスト

ダグ役のデイヴィッド・テナントは、スコットランド出身の俳優。舞台や映画と幅広いジャンルで活躍しています。テレビドラマ「ドクター・フー(Doctor Who)」の第10代および第14代ドクター役で知られています。「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」では、バーティ・クラウチ・ジュニア役を務めました。

アビー役のロザムンド・パイクは「007 ダイ・アナザー・デイ」でMI6の潜入捜査官兼二重スパイであるミランダ・フロスト役を演じました。エリザベス・ギャスケルの「Wives and Daughters」ではレディ・ハリエット役、「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬」ではケイト役を務めました。

ビリー・コノリーは、スコットランドの俳優、ミュージシャン、テレビ司会者、芸術家であり、かつてはスタンダップ・コメディアンでした。

ギャビン役のベン・ミラーは、コメディアン、俳優、作家。アレクサンダー・アームストロングと共にコメディデュオ「アームストロング&ミラー」のメンバーとして名声を博しました。「ジョニー・イングリッシュ」シリーズのアンガス・ボフ役、BBCの犯罪ドラマシリーズ「デス・イン・パラダイス」のリチャード・プール警部役、「ドクター・マーティン」ではスチュワート役で2回出演しました。

ロッティ役のエミリア・ジョーンズは、ドラマ映画「CODA」で英国アカデミー賞主演女優賞にノミネート。父のアレッド・ジョーンズは、ウェールズ出身の歌手、ラジオ・テレビ司会者、俳優で、10代の頃に聖歌隊員として「Walking in the Air」を歌唱した人物。「The Snowman(スノーマン)」の主題歌として広く知られており、Classic FMのプレゼンターとしても活動しています。

セリア・イムリーは、イギリスの女優、作家であり、名脇役として長年にわたり多数の映画やドラマに出演しています。「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズ、「カレンダー・ガールズ」、「ナニー・マクフィー」、「マリーゴールド・ホテル」、「マンマ・ミーア!」、「ハイランダー」、「フランケンシュタイン」、「聖トリニアンズ」、「アブソリュートリー・ファビュラス」シリーズ、「輝ける人生」、テレビドラマ「キングダム」、エリザベス・ギャスケル原作「クランフォード」など。

アネット・クロスビーはスコットランド出身の女優。BBCシットコム「ワン・フット・イン・ザ・グレイブ」のマーガレット・メルドリュー役で最もよく知られています。英国アカデミー賞テレビ部門最優秀女優賞を2度受賞。「カレンダー・ガールズ」ではジェシー役、BBCドラマ「リトル・ドリット」(チャールズ・ディケンズ原作)ではミスターFの叔母役など。

ラルフ・リアックはスコットランド出身の俳優で、キャリアをスタートさせたのは50歳から。スコットランドが舞台のドラマ「ヘイミッシュ・マクベス」ではTVジョン役、「モナーク・オブ・ザ・グレン」ではジョーディ役を務めました。

おわりに

子供たちがとても可愛らしく、演技も上手だったのでそれだけで観る価値があると思います。あちこちにユーモアがありましたが、それほどブラックユーモアという感じでもなかった気がします。
スコットランドの壮大で美しい風景に癒され、元気をもらえる映画でした。

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