イギリスでの歯科医院(NHS・プライベート)の利用体験

イギリスに住んでいるので、当然こちらの歯科医を利用しています。引っ越しをすると、その度に新しい地域での歯科医を探さなければならず、歯科医によって質がさまざまであると感じています(日本でも同じですが)。ロンドンの日系歯科医を利用したこともありますし、担当医の診断に疑問を感じて他の歯科医でセカンドオピニオンを受けたこともあります。

目次

イギリスの歯医者:NHSとプライベート

イギリスにはNHS(国民保健サービス)扱いの歯科医があり、これはGPを通さずに直接登録や予約が可能です。妊娠していた頃に無料で治療を受けたことがありますが、NHSでの治療は最低限の内容でした。治療内容によっては一部費用が請求される場合や、プライベートとほぼ同じ料金になる場合もあるそうです。私がNHSの歯科医を利用したのはそのときだけで、それ以降はプライベートの歯科医を探して登録しています。理由はプライベートの方が予約を取りやすく治療内容も充実しているからです。

NHSは予約が取りづらく待ち時間が長いことが多いと言われています。プライベートの治療は高額といわれますが、歯科医院のウェブサイトにはたいてい料金が掲載されているので事前に確認できます。多くの歯科医院はNHSとプライベートの両方を扱っているようですが、最近ではNHS扱いの新規患者を受け付けていないところが多い印象です。ある歯科医院に連絡したとき、ウェブサイトには「NHS」と記載がありましたが、メールの返信では「現在の受付はプライベートだけなので治療費がかかりますよ」と案内されました。

歯科医を見つける

イギリスに来たばかりの頃は、知り合いや近所の人におすすめの歯科医院を尋ねて通っていましたが、最近ではグーグルマップで調べる方が早いです。自分の住む地域にはたいてい複数の歯科医院があります。例えばインプラント希望だったら、レビューにインプラントに関するコメントがあるかどうかを確認します。そしてその医院のウェブサイトで料金や雰囲気を見てみます(直感も大切笑)。

そして試しに簡単な相談のメールを送ってみます。返事がない歯科医院はそこで終了。返信が遅い場合や、返信があっても要領を得ない内容の場合は要注意。いまだにメールを使いこなせていなかったりチェックが行き届いていなかったりするのは、プロとは言えないと思います。

ただし返事が早かったとしても要注意の場合も。以前、すぐに返信があった歯科医院に行ってみると、私の電話番号やメールアドレスを口頭で聞き、それをメモして打ち込むという、まるで90年代後半のような業務スタイルのスタッフがいて一抹の不安をおぼえました。そのスタッフは案の定打ち間違えをしていて、予約カードや領収書、見積もりといったメールやテキストが届かず、こちらが何度も指摘する羽目に。治療自体はさほど悪くなかったものの、そのスタッフの采配で待合室で何十分も待たされるなど、良い経験とはいえませんでした。

また、過去にはどういうわけか見積もりをすぐに出さない歯科医もいました。歯科医の作業が遅いのか、決断力がないのか、受付との連携が取れていなかったのかは今となってはどうでもよいことですが、考えられないと思いました。通常は相談や治療を終えて受付に行くと、即日で次の治療の見積もりが出るものです。それにもかかわらず、その歯科医は数日後や1週間後などに平気で見積もりを送ってくることがありました。単にやる気がなかったのかもしれません。

ロンドンで日系の歯科医院を利用したこともあります。スタッフが丁寧なのは非常に良かったのですが、丁寧すぎて個人的にはまどろっこしく感じてしまいました。治療内容は、他の一般的な歯科医院のそれと大きくは変わらないように思います。

あくまでも個人的な過去の経験ですが、おしゃべりが多い歯科医は私は苦手です。初回のアポイントメントではたいてい「お国はどちらですか」と聞かれて「日本です」と答えます。「日本の歯科医の技術は高いですね」と言われることも多く、中には、私が日本で治療した歯を見て「やっぱり違いますね」と感心する歯科医も。見物料を治療費から引いてくれてもよかったのですが笑。

しかしさらに「先月日本に旅行にクルーズ旅行に行きまして・・・」とか「数年前に日本を訪れたときは・・・」などと、自分の日本旅行の話をしばらく続ける歯科医は苦手。最初はフレンドリーなつもりで話しているのだろうと聞いていましたが、おしゃべりばかりで技術がいまいちな歯科医もいたので、その印象が拭えないのかもしれません。私の治療に関する話であれば長くなっても構わないけど、彼らの旅行話には興味はないな・・・悪いけど笑。

イギリスは歯医者が不足している?

イギリスでは「歯科医院が不足していると感じる」という声があるそうですが、実際にはイギリスに登録されている数は年々増加しているとのこと。なぜなのでしょうか。

これは「歯科医院がない」というよりも「NHS診療を行う医院の割合」の低下が理由だとされています。特に、フルタイムでNHSに従事する歯科医院が減少しているらしいです。歯科医院側からすると、NHSの契約制度の仕組み上、NHS扱いの治療を行うことが採算に合わない場合があるようです。だから、より自由度が高く収入面でも有利なプライベート診療にシフトする歯科医院が増えているらしいです。

そのため、NHSでの予約が取りづらくなり、待ち時間も長くなり、さらに新規のNHS患者を受け入れないとなれば、実際の歯科医院数は増えているにもかかわらず「不足している」ということになるのかと思います。

現在利用している歯科医

私が現在利用している歯科医も、グーグルマップで見つけました。

インプラントを希望していたので「インプラントが上手」というレビューがあるかどうかで主に判断しました。それらのコメントとともに「良心的な料金」というコメントがいくつかあったので、その医院のウェブサイトを見てみました。すると全ての治療において、これまで通っていたどの歯科医よりも低い料金設定であることに少し驚きました。

インプラントを希望していた歯については、しばらく前に歯科医院Aでその歯を指摘され「普通に治療するか、希望するならインプラント」と提案されました。これについてセカンドオピニオンが欲しかったので、歯科医院Bで相談したところ、そこの歯科医はなんとその歯を見逃したのです。歯科医院Aで説明されたことを話すと、歯科医BはXray(レントゲン)を撮影し「問題があるとしたらこの歯」と、なんとも頼りないことをいうのです笑。問題の歯は若いころに日本で治療したもので、次に何らかの治療が必要になった場合はインプラントかなと思っていました。

歯科医院Aに戻ってもよかったのですが、そこには前述の手入力スタッフがいて心配だったので、他の歯科医院を探してみたという次第でした。試しに、その良心的な料金設定の歯科医院Cにインプラント相談の予約を入れてみました。予約、アカウント登録、問診表の記入もオンラインで完結するという手軽さで、スタッフによる打ち間違いの心配もありません。

インプラント相談では、最初にCTスキャンで詳細に(360度)分析され、どのように治療できるかを説明されました。そしてインプラント料金には、インプラント相談、CTスキャン、抜歯にかかる費用、X線(レントゲン)、マウスウォッシュ、抗生物質なども含まれており、いちいち追加料金を請求されることもありませんでした。

そしてその歯科医も「お国はどちら」と尋ねてきました(気にし過ぎなのは分かっていますが笑)。「日本です」と答えると「日本の技術は素晴らしく、日本人歯科医の知り合いが何人かいますよ」といった歯科に関する話題程度で、それ以降は主に私の治療に関する話だけでした。これはポイントが高いです笑!。

同時に、通常の治療をする担当医との予約も入れてもらいました。担当医は、インプラントを希望していた歯以外で、私が前々から気になっていた部分(それに関して歯科医A・Bは気づかなかった又は指摘しなかった)についても指摘してくれて、そちらの治療も全て完了しました。歯科医A・Bでインプラント治療を受けていたらかかっていただろう費用で、歯科医Cではインプラントと他の箇所の治療もすべて終わってしまったのです・・・。

衛生歯科医(Dental Hygienist)

衛生歯科医(Dental Hygienist)とのアポイントメントでは、歯石取り(スケーリング)、クリーニング、予防指導を受けることができます。定期的な予約が推奨されており、新しい歯医者に登録したときや、久しぶりにチェックアップ(検診)を受けるときに「衛生歯科医の予約も入れてください」と案内されることがあります。

これは個人的な経験ですが、歯科医や衛生歯科医との初回の予約では「歯ブラシは何を使ってますか」とよく尋ねられます。「普通の歯ブラシです」と答えると、電動歯ブラシを勧められることが多いです。そして実際に歯の状態を見せると「普通の歯ブラシにしては、状態がとても良いですね」と褒められます(治療した箇所こそあちこちありますが笑)。これはおそらく日本の歯ブラシを使っているからだと思います。私の子供たちも普通の歯ブラシを使っていますが(日本製!)虫歯は一本もありません。

あるとき、熱心な若い衛生歯科医に当たったことがあります。いつものように「普通の歯ブラシ」と答えると「どうしてですか?」と食い下がって質問してきます。「あまり好きじゃないから」と答えると「電動歯ブラシの方が効率的です」「すぐに慣れます」「使えばその良さが分かります」「今日から考えてください」と、かなり熱心です。

その上で、私の歯の状態を見て「普通の歯ブラシにしては良好な状態です」とコメント。私はデンタルフロス、マウスウォッシュ、ジェットウォッシャーも使用していることを説明しましたが、その熱血衛生歯科医は、電動歯ブラシと歯の模型を持ってきて使い方を実演し、さらにジェットウォッシャーも出してきて実演するのです。正直、説明書を読めば分かる内容ですし、ジェットウォッシャーはもう10年ほど使っているので実演も必要ありません。でも、熱意は十分に伝わりました笑。

この衛生歯科医によれば、衛生歯科医との予約は「Mandatory」であり、6か月ごとに入れるようにと言います。あなたさっき「良好な状態です」と言ったばかりなんだから、1~2年に1度ぐらいでいいのでは?と思ってしまいました。これまでもそのようにしてきたし、いきなり「Mandatory」と言われて変えたくもありません。どうしたかというと「はい、はい」と聞くだけ聞いて、自分のペースで予約を入れました。

おわりに

虫歯のない私の子供たちは、NHSでチェックアップだけ受けています。毎回「指摘することはありません。次回の予約は2年後です」と言われます。予約を忘れるとNHSでの価格が適用されなくなるので注意するように、とのことでした(その前にこのサービス自体もなくなるのかもしれませんが)。私は日本でも治療を受けていたため年齢を重ねるうちにまた診てもらう必要があるので、プライベートでの治療は切り離せません。

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