「Mind Your Language」は、1970年代にイギリスで放送されたシットコムで、今でも根強い人気があります。
舞台はロンドンの語学学校で、イギリス人の先生がさまざまな国から集まった生徒たちに英語を教える日常が描かれています。生徒の国籍はイタリア、スペイン、パキスタン、インド、中国、日本など多彩で、英語の言い間違いや文化・宗教の違いから生まれるやり取りが笑いのポイントです。
70年代のイギリスの多文化社会を背景に人種や国民性のステレオタイプを大げさに描いたコメディとして人気を集めました。当時は放送規制もゆるやかだったため、現代の視点からすると問題視される表現もあるかもしれません。同じ設定で今このようなドラマや映画を作れないとは思いますが・・・。
オープニングタイトルは、ブラウン講師が「Mind Your Language」と黒板にタイトルを書いているアニメーション。彼の生徒たちやコートニー校長も登場し、それぞれに特徴が出ています。(画像は引用目的で使用しています)
Mind Your Language(へなちょこ英会話スクール)とは?
日本では「へなちょこ英会話学校」というタイトルで何年も前に放送されていたようです(どの局で放映されたのかは不明です)。
「Mind Your Language」はITV制作の作品で、残念ながら2004年のBBC「イギリスのベストシットコム」にはランクインしていません。1977年から1979年までITVで放映され、1986年に短期間だけ復活しています。
舞台は1970年代のロンドンにある成人向け英会話学校(校内にはカフェテリア、木工教室、体育館などの設備があるようです)。ファッションだけでなく、町の雰囲気、ブラウン講師の部屋、たまに訪れるスーパーマーケット等、70年代らしいレトロな雰囲気を見ることができます。
オックスフォード卒のブラウンが新任の英語教師として赴任しますが、多様な移民の生徒たちは文化や言語の違いから誤解や騒動を起こし、初日からドタバタが始まります。生徒はイタリア、スペイン、ギリシャ、パキスタン、インド、中国、日本などさまざまな出身で、それぞれの国を象徴するような個性的なキャラクターを持っています。英語の理解度や文化的背景も異なり、文法や発音の間違いだけでなく、宗教や国民性の違いから対立が生じることも。
70年代のユーモアが詰まった作品ですが、ステレオタイプ(偏見)を強調した描写も多く見られます。当時のイギリス社会や文化を背景に、イギリス人が気軽に楽しめるよう作られたシットコムということですね。

Mind Your Language キャスト
「役名(役者名)」で記しています。
ブラウン講師(バリー・エヴァンズ)
オックスフォード大学卒の真面目なイギリス紳士。穏やかで忍耐強い性格ですが、生徒たちの予測できない行動にしばしば振り回されます。彼のユーモアと諦めが入り混じった対応は、教室内の混乱を和らげる役割を果たしていますが、生徒たちの強い訛りに影響されてつい同じような訛りで話してしまうことも笑。
風邪をひいて寝込んだときには、生徒全員がお見舞いに訪れたり、また、生徒の家に招かれたりするほど慕われています。そして毎回、何かしらの騒動に巻き込まれてしまうのです。
外で両手いっぱいの風船を持ったときには、宙に浮いてしまったこともあります笑。
多国籍な生徒たち
ジョヴァンニ:イタリア人生徒(ジョージ・カミラー)
イタリア系のカトリック教徒で、職業はシェフ。クラスのまとめ役をすることが多く、クラスリーダー的な存在です。ブラウン講師のことを「プロフェソーリ(Professori)」とよく呼んでいます。いつも楽天的で声が大きく、クラスではわざと間違った答えを出して生徒たちから笑いを取ろうとします。
身振りも非常に大げさで、驚いたり戸惑ったりしたときには、「サンタ・マリーア(Santa Maria)!」「ウーップス・ア・デイジー(Whoops a Daisy)」「オーキー・コーキー(Okey Cokey)」「ホーリー・ラビオリ(Holy Ravioli)!」と叫んだりします。謝罪するときには「スクージ(Scusi)」(イタリア語で「ごめんなさい」)などを使います。けんか腰の口調になると、けんか相手を「その国の名前+食べ物」で呼んだりもします(「スパニッシュオムレツ!(スペインのオムレツ)」など)。
フランス人生徒のダニエルがお気に入りで、マックスと争ったりします。各国を代表する衣装で登場したときには、ゴッドファーザーのようないでたちで現れました笑
マックス:ギリシャ人生徒( ケヴォーク・マリキャン)
「マックス」とよく呼ばれています。ギリシャ彫刻のように顔の彫りが深いです(これは私の偏見笑)。ギリシャ正教徒で、アテネの海運会社で働いています。ジョヴァンニとコンビを組むことが多く、ジョヴァンニのフラットメイト(ルームメイトのこと)でもあります。ジョヴァンニ同様にダニエルを気に入っています。
彼の英語の特徴は、なんにでも「h」を付けて発音すること。それがブラウン講師や他の生徒を混乱させることがあります。各国を代表する衣装で登場したとき、ギリシャの衣装で登場したのになぜか爆笑の声が・・・笑
ダニエル:フランス人生徒(フランソワーズ・パスカル)
フランス系のカトリック教徒で、職業はオーペア(au pair)。
(※「オーペア(au pair)」は、「ホームステイ付きの子守り」や「家事手伝い」をする外国人のこと。家事や育児を手伝う代わりに、宿泊と食事を提供されます)
男子生徒たちは、可愛くてちょっとセクシーなダニエルが大好き。彼女はいつでも「Love(愛)」のことについて話すのが好きで、ブラウン講師のことを気に入っています。そして授業中でもかまわずにブラウン講師を誘惑します。ブラウン講師のことは「ムッシュー・ブラウン(Monsieur Brown)」と呼ぶことが多いです。
彼女の発音は、フランス訛りの英語で、特に「R」を喉の奥の方で発音するのが特徴。それが彼女の「フランスらしさ」を際立たせる要素であり、とてもチャーミングだと思います。「Oh là là !」などのフランス語もしばしば登場します。
シーズン2からクラスに参加するスウェーデン人生徒のイングリッドに男性生徒たちが注目すると、ダニエルはライバル心を燃やします。
アナ:ドイツ人生徒(ジャッキー・ハーディング)
アナは、まじめ・勤勉・効率的重視な西ドイツ人生徒で、ダニエルと同じくオーペア(au pair)。
がっしりした体型をしており表情はいつでも真面目。力も強く、マックスやゾルタンにパンチをお見舞いすることも笑。正直で口調は強めのトーンですが信頼できそうなタイプです。
ドイツ人特有の発音で、「V」と「W」をあべこべに発音し、ブラウン講師がそれにつられてしまうことがよくあります。ブラウン講師の誕生日にはアップルストゥードゥル(Apfelstrudel)を作って教室に持ってきました。
アリ:パキスタン人生徒(ディノ・シャフィーク)
パキスタン出身のイスラム教徒。宗教的および文化的な違いにより、しばしばシーク教のランジートと衝突します。丁寧な口調でぺらぺらと話しますが、勘違いしながら会話が進むことがよくあります。それに慣れたブラウン講師が、先回りして話すことも。
彼は「Yes」や「Yes, thank you.」と言うところを、いつでも「Yes, please.」と言います。また「Excuse me, please.(すみません)」と言いたいところを「Squeeze me, please.(私を絞ってください)」と言う笑。首を振りながら話す姿が可愛らしいです。
ディノ・シャフィークは、BBCのシットコムに多数出演しています。
ランジート:インド人生徒(アルバート・モーゼス)
パンジャブ出身のインド人。ロンドン地下鉄職員。敬虔なシーク教徒です。イスラム教徒のアリとお互いにライバル意識を持っており、しばしば口論に発展することがあります。ひとたび怒りに達すると、シーク教が携帯する「キルパン(kirpan)」という短剣を取り出して戦おうとすることも。普段はとても丁寧で愛想がよく、間違えたりすると「Thousand apologies.」と言って手を合わせます。
アルバート・モーゼスは、「007/私を愛したスパイ(1977)」「An American Werewolf in London(1981)」「The Jewel in the Crown(1984)」などに出演しています。
フアン:スペイン人生徒(リカルド・モンテス)
スペイン出身のカトリック教徒で、バーテンダーです。
登場した当初はほとんど英語を話さず「Por favor(スペイン語で「Please」:お願いします)」と答えるだけでした。イタリア人生徒のジョヴァンニが翻訳で間に入ることも。しかし回を重ねるごとに「実は英語が分かっているのでは?」と思わせる場面が増えてきます。
というのも、ブラウン講師がフアンを少しからかうような発言をすると、苛立ったトーンで「Por favor?」と返すことがあるからです笑。しかし都合が悪くなると「Por favor」ととぼけるのです。
ブラウン講師のことを「セニョール・ブラウン(Señor Brown)」とよく呼んでいます。粗野な感じですが紳士的なところもあり、そこが愛らしいキャラクターだと思います。彼もジョヴァンニのように喧嘩っ早く、相手を料理の名前で呼ぶこともあります(「イタリアンマカロニ!」のように)。
「生徒の前で何か面白い話を英語で披露する」という課題では、フアンはスペイン語でまくし立てて1人で大爆笑。各国を代表する衣装で登場するときには闘牛士に扮したり、また、ギターを持ってフラメンコの流しのように歌ったりと、ラテン気質の楽しいキャラクターです。
リカルド・モンテスは、「Saint(1962–1969)」「Auf Wiedersehen, Pet(1986–2004)」「Pirates of Blood River(1962)」「Mamma Mia!」などに出演しました。

タロー:日本人生徒(ロバート・リー)
このクラスには日本人生徒も在籍しています。彼の名前は「ナガズミ・タロウ」さん。架空の日本の電子会社「武士道電子」のロンドン支社の代表とのこと。
彼はいつでも礼儀正しく、スーツを着てクラスにやってきます。外を歩くときには帽子を身に着け、とても紳士的なスタイルです。自社製品なのか、首からカメラをぶら下げていることがよくあります。
1970年代の日本人のイメージは「カメラ」だったようですね。(70年代の「ナショナルジオグラフィック」には日本のカメラの広告がたくさん掲載されています。以下のような感じ)



授業中、ブラウン講師に話しかけられると、タローさんは立ち上がり、いつもお辞儀をします。本人は丁寧に会話しているつもりで「ああ、そう!」とよく返事をします。ところが「あー、そう」は、ときに「asshole(アホ、おしりの穴)」にも聞こえたりするため、周囲をどきっとさせます。
また、彼の英語には、ほとんどすべての単語が「-o」の母音で終わるような癖があります。これは日本人英語のつもりで描写しているようです。一部の日本人が「ローマ字英語」で話す傾向にあるからかと思われますが、実際には「-o」というよりも、その単語の語尾の母音が強くなるのかなと思います。例えば、犬なら「doggu」、猫なら「kyatto」のように。
ジャミーラ:インド人生徒(ジャミラ・マッセイ)
ジャミーラはインド人主婦。クラスに初めて参加したときにはほとんど英語を話さず、自分の名前を黒板に右から左へ書きました。編み物をしながら授業を受けることが多く、さらには、歩きながら編んでいることも(強者だ笑)。ブラウン講師がインフルエンザを患ったときには、袖が長すぎる手編みのカーディガンを贈りました。
ブラウン講師のことを「マスタージ(Masterji)」とよく呼んでいます(ヒンディー語で「先生」または「教授」)。
英語が読めなかったため、「Free」と書いてあっただけで店からいろいろ持ち帰ってしまい、結果、万引きで警察に連行されたこともあります。そのときはクラスメート全員で、それぞれの洋服に商品を隠して店に返しに行きました。
ジャミラ・マッセイは、BBCのドラマ、ソープオペラ、ラジオなどに多数出演しています。
スーリー:中国人生徒(ピク・セン・リム)
スーリは、中国大使館で秘書として働く中国共産党の女性。いつも礼儀正しく、きちんとしています。彼女が常に崇拝しているのは毛沢東であり、毛沢東語録をいつも持ち歩いています。意見を述べるときには、毛沢東語録を参考にすることが多く、そのたびにブラウン講師は「いろんな意見があるからねー」とやんわりとかわします。政治的思想を交えて意見を述べるときには、超絶流暢な英語になるので、学校に通う必要があるのかと思ってしまいます笑。
彼女の英語は「r」と「l」の発音を常に混同しています(日本人も似たような傾向があるかと)。初期の頃は、日本人生徒のタローと意見が対立したり、カンフーと空手で対決しようとしたり。でも後半では友人関係になります。
ピク・セン・リムは、「The Bill(1990s–2000s)」「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬(2011)」「Fortitude(2015)」などに多数出演しています。
イングリッド:スウェーデン人生徒(アンナ・バーグマン)
イングリッドはスウェーデン人のオーペア(au pair)で、シリーズ2からクラスに加わります。ダニエルと同じくらい魅力的で、彼女もブラウン講師のことを気に入っており、授業中でも誘います。そのため、ダニエルとライバル関係に。シリーズ2が終わると転校により姿を消しますが、短期で放送されたシリーズ4で復帰します。
ゾルタン、ハンガリー人生徒: ガボール・ヴァーノン(Gabor Vernon)
ゾルタンはブダペスト出身のハンガリー人。シリーズ2からクラスに加わります。
彼はほとんど英語を話さず、いつでも「Bocsánat?」(ハンガリー語で「すみません?」)と言いながら、小さな会話集を相手に見せて会話をしようとします。ブラウン講師がある程度話した後に、ゾルタンが「Bocsánat?」と質問するので、ブラウン講師がまた最初から説明する羽目になることが多いです。
なぜかスペイン人生徒のフアンが、ブラウン講師とゾルタンの間の通訳をすることがあり、フアンは先輩風を吹かせます笑。
ゾルタンがプチパニックになり、フアンが彼を黙らせようと何かが割れるような大きな音を真似しながら、口の近くでボキッと折るような仕草をしました。周りの生徒も(おそらく視聴者も笑)その意味は不明だったはず笑。それなのに、ゾルタンには通じて彼は静かになりました・・・笑。ゾルタンはシリーズ2で帰国します。
その他のスタッフ
コートニー校長( ザラ・ナトリー)
コートニー校長は、典型的なイギリス女性。強気で礼儀に厳しく、フェミニストなところがあります。ときおりブラウン講師の教室を訪れて生徒たちに質問し、勉強の進捗状況を確認することも。悪い人ではありませんが、みんな彼女に少々怯えているところがあります。
グラディス:カフェテリアのスタッフ(アイリス・サドラー)
学校のカフェテリアのティーレディ。70代の活発でおしゃべり好きな女性で、コートニー校長の厳しさとは対照的な母性的なキャラクター。普段はカフェテリア用の制服ですが、ブラウン講師とダンスパーティに出かけるときにはゴージャスなドレス、エリザベス女王訪問の際にはユニオンジャックが頭からつま先まであしらわれた衣装を披露しました。
シドニー、用務員:トミー・ゴドフリー(Tommy Godfrey)
シドニーはロンドンの下町出身の用務員。コテコテのコックニー訛り(Cockney、下町)でいつも話し、韻を踏んだ俗語をよく使います。フレンドリーな性格なので生徒たちにもよく話しかけますが、その独特な話し方が生徒たちを混乱させることがあります。ブラウン講師でさえ理解するのに少し時間がかかるほど。
エリザベス女王の学校訪問がキャンセルされたにもかかわらず、なぜかそっくりさんが校内に入ってきてしまい、シドニーは慌てふためいて「カーテシー(curtsy/女王の目の前で膝を曲げて頭を低くする動作)」をしたり(男性の場合は軽くお辞儀をするのが一般的なのに笑)、ブラウン講師が警察署で一晩過ごすことになったときには、なぜかシドニーが上の段のベッドで寝ていたり、ブラウン講師の実の父親はシドニーではないかという疑惑が出たりと、ストーリーに面白い要素を加えてくれます。
トミー・ゴッドフリーは、イギリスのテレビ番組に多数出演したベテランのキャラクター俳優。コックニー風のキャラクターとして知られています。
英語学習に使える?
視聴方法は?
日本とイギリスのアマゾンそれぞれでDVDが入手できます(が、Youtubeでも色々とエピソードがあがっているようです・・・)




