Cold Comfort Farm 都会娘が奇妙な農場の呪縛を解き放つコメディ

「Cold Comfort Farm」は、1995年公開のイギリス映画。ステラ・ギボンズの1932年小説「Cold Comfort Farm」に基づくコメディです。チャールズ・ディケンズ、ジェーン・オースティン、ブロンテ姉妹などの作品からのパロディ要素がいくつか含まれているといわれています(「おわりに」で後述)。

都会育ちのフローラが家族経営の農場を営む親戚のもとに身を寄せることになり、そこでの風変わりで閉鎖的な因習や迷信を、若さと機転で次々とポジティブに開放していきます。牧歌的な田園像を期待すると肩透かしを食らってしまいます笑。

キャストは、アイリーン・アトキンス、ケイト・ベッキンセイル、シーラ・バレル、スティーブン・フライ、フレディ・ジョーンズ、ジョアンナ・ラムリー、イアン・マッケラン、ミリアム・マーゴリーズ、ルーファス・シーウェルと豪華。

オープニングタイトルは、牧歌的な田舎の農場をイメージさせます。(画像は引用目的で使用しています)

アイリーン・アトキンス、ケイト・ベッキンセイル、シーラ・バーレル、スティーヴン・フライ、フレディ・ジョーンズ、ジョアンナ・ラムリー、イアン・マッケラン、ミリアム・マーゴリーズ、ルーファス・シーウェル
目次

「Cold Comfort Farm」あらすじ

ストーリーの冒頭、田舎の少女が納屋の中にいる何か恐ろしいものを見つけてしまいます。これが家族経営の農場の長年の呪縛となってしまいます・・・。

1930年代のイングランド。両親を亡くしたフローラ(ケイト・ベッキンセイル)は、ロンドンの洗練された生活で育ち社交界に通じているものの、残された収入は少ないことが判明。裕福で自立している友人のメアリー(ジョアンナ・ラムリー)に、仕事をするよう勧められるものの、作家志望のフローラは親戚のところに身を寄せるつもりでいます。しかし都会の親戚たちからの返事がなく、田舎の親戚にまで手紙を書くことに。

夜の社交界では、フローラを気に入るチャールズ(クリストファー・ボーエン)が「母も喜ぶから」と、彼の家での滞在を提案。彼が飛行機を所有することに少し感動しながらも、フローラは整理したり片づけたりすることが好きで、チャールズはもうすでにきちんとしているし、執筆するために本物の生活を学んでみたいからと断ります。

田舎の親戚たちからの手書きの返信はそれぞれ個性が出ています。私はネイティブの方々の手書き文字が苦手で笑、一瞬映し出される手紙はやはり読めない笑(ネイティブは読めるんでしょうけど)。インクがあちこちにじんでいる手紙もあります。

サセックス州のコールド・コンフォート・ファーム(農場)からの手紙は鉛筆書きで、封筒の匂いを嗅いで少し驚くメアリー笑。農業主は叔母エイダであり、その娘ジュディス・スターカダー(アイリーン・アトキンス)からの手紙です。文面からは冷たさや威圧的な印象が・・・。

ジュディスが言うには、この一家はかつてフローラの父親に何らかの罪を犯し、その子供から連絡が来るのを20年も待っていました。それを償うためにフローラを全面的に迎え入れるつもりだけど、罪については聞かないように、とのこと。フローラは興味をそそられ、コールド・コンフォート・ファームでの滞在を決めます。

メアリーは「農場にはトイレさえないだろうし、都会育ちのフローラはすぐに帰ってくるだろう」と予想。フローラは「農場には性欲の強い若い男性が暮らしており、彼らの名前はたいてい『セス』か『ルーベン』だ」と推測するフローラ。実際にジュディスの息子は「セス」と「ルーベン」なのです笑。

若いケイト・ベッキンセールが初々しいです。ジョアンナ・ラムリーは、ABFABでのパッツィは酒浸りの乱暴なキャラクターでしたが、彼女はこの社交界のような役柄がやはり似合います。アイリーン・アトキンスは「ゴスフォード・パーク」のクロフト夫人、「クランフォード」のデボラ役、「Wicked Little Letter」のメイベル役など多数に出演。

迷信と因習に支配された農場

コールド・コンフォート・ファームへ向かうために列車を乗り継ぐフローラは、車内で執筆をします。でもその文章はどこか気取っており、いつも「黄金の球体が・・・」というフレーズで筆が止まってしまいます。

到着駅で迎えに来た使用人のアダム(フレディ・ジョーンズ)は、農場は荒廃していて「スターカダー家の呪い」のせいだと語ります。二人が農場に到着したのは夜で、駅からかなり遠いことが分かります。夜の農場は陰鬱で、朝になってもなお陰鬱です・・・笑。

フローラに用意された部屋は埃だらけで、ベッドはひどく軋みます。窓を開ければ、木に登ってどこかの部屋をのぞいている男が。翌朝は窓の外で言い争う声でフローラは目を覚まします。外を見ると、映画スターのようにイケメンでセクシーなセス(ルーファス・シーウェル)が顔を洗っているのが見えます。濡れたセスはキラキラと輝いており、フローラにウィンクします笑。セスは悪人ではないのですが、性欲が旺盛で(そのせいでメリアムが妊婦に)、農作業よりも映画を観に行ったり俳優の写真集めに関心があります。

フローラが朝食をとりにダイニングに降りると、そこは薄暗く汚れた食卓が。家族の男性陣は不愛想で打ち解けない様子です。ジュディスの夫アモス(イアン・マッケラン)は支配的な態度で、家族を叱責し、怠慢や信仰心の欠如を激しく非難し、それぞれに農作業の指示を出します。

彼らが出て行った後、フローラは使用人のアダムが木の枝を使って皿を洗っているのに気づきます。もっと効率的な道具があると提案しても、アダムは長年のやり方が良いと譲りません。

フローラは「スターカダー家の呪い」とは、叔母エイダが、幼い頃に納屋で「何か恐ろしいもの」を見たというトラウマを理由に、部屋に閉じこもり、一族全体を心理的に支配していることだと知ります。叔母の食事はいつも叔母の部屋の前に置かれます。まるで引きこもりですね笑。

気難しいルーベン(アイヴァン・ケイ)は、フローラが農場を横取りしに来たのではないかと疑っています。フローラはそんな責任を負うつもりはなく、経験のある者が担うべきだといいます。

農場には、親戚のエルフィーネも住んでいます。彼女はいつも自然の中でゆったりと踊っている妖精のような娘。使用人で家族の一員でもある遠縁のアークは、エルフィーネを気に入っており、木に登って彼女の部屋を覗いていたのも彼。しかし、エルフィーネが好きなのは、近所の貴族のモニター家のディック。二人は惹かれ合っているものの、そこには越えがたい身分の差がありました。

農場にはハウスキーパーのミセス・ビートル(ミリアム・マーゴリーズ)と、その娘メリアムとレネットも暮らしています。メリアムはセスの子どもを納屋で出産し、フローラは心配しますが、メリアム本人は慣れた様子。フローラは、メリアムに避妊について教え、さもないと永遠に妊娠しているだろうと諭します。レネットは「井戸に落ちたような」見た目だと形容されるほど顔も服も泥だらけで、農作業をするだけでほとんど口をききません。(ミリアム・マーゴリーズは「ブラック・アダー」や「ラヴェンダーの咲く庭で」でユニークなキャラクターを演じています)

ジュディスの部屋にはセスの写真が多く飾られており、セスを気に入っている様子。叔母エイダも彼を気に入っています。ジュディスは、依然としてフローラの父に何をしたのかは語りません。

コールド・コンフォート・ファームは、農場や家だけでなく、住人達も汚くて乱雑、原始的で閉鎖的な環境なのです。

フローラの整理が始まる

アモスは「震える兄弟団の教会」という宗教団体(もちろん架空笑)の牧師(過激な説教者を誇張・パロディ化したものと思われます)。彼は終末と神の怒りを強烈な言葉で描写し、人々に恐怖と悔い改めを促します。聴衆は体を震わせながら(揺さぶらせながら笑)どっぷりと聞き入っています。「お前たちは地を這う虫だ!」「穀倉に群がるネズミだ!」「お前たちは皆、呪われている!」「お前たちの体は燃え、あの恐ろしい痛みに刺され続ける!」と、辛らつな説教です笑。会衆はこれがクセになっているのかも。

アモスは、説教は準備したものではなく、天から与えられる言葉だとフローラに説明します。フローラは、世界で説いて回ればもっと多くの魂を救えるのではと提案します。

フローラは叔母の食事に、メアリーから送られてきた最新の雑誌を添え始めます。最初の雑誌は「Vogue」で、当時のイラストの表紙がおしゃれです。叔母(シーラ・バーレル)は、娘のジュディスに「フローラが農場を奪いに来たのではないか」「家族や農場の秩序が脅かされているのではないか」と警戒します。

アダムは「きれいすぎてもったいない」と、フローラが用意した食器用のモップは使わず、それよりも、エルフィーネと上流階級のディックとの身分の違いを心配します。将来は詩集を出すことが夢だというエルフィーネは、農場での暮らしが嫌で、祖母がアークと結婚させようとしているとフローラに語ります。さらに、近々開かれるディックの誕生日パーティーで、彼が他の誰かとの婚約が決まるかもしれないと心配します。フローラは、そのパーティーにエルフィーネを送り込むべきだと考えます。

いまだにフローラを疑うルーベンに、フローラは「アモスが説教の旅に出たら、ルーベンのような能力のある人物が農場を管理すべき」と伝えます。ルーベンはその考えに心を揺さぶられるものの、引きこもっている叔母が決して許さないだろうと反論します。

フローラはドアの外から叔母に声をかけ、対話を試みますが、叔母は「納屋で恐ろしいものを見た」という決まり文句を繰り返し、追い払おうとします。しかし、叔母は何を見たのかも、どの納屋だったのかも記憶が曖昧になっている様子。フローラは、叔母が恐怖や被害者意識を理由に、家族を従わせてきたのだと指摘し、揺さぶりをかけます。

解け始める呪縛・・・

フローラは、エルフィーネをロンドンに連れ出し、メアリーの手助けを借りてエルフィーネを社交界でも振る舞えるように教育します(数日で教育するのは無理だろうけど笑)。ロンドンの社交の場で、フローラは映画プロデューサーのネック氏と知り合います。

農場に戻り、フローラはエルフィーネとセスを連れてディックのパーティに潜入。エルフィーネの装い成功し、周囲からちょっとした視線を集めます。ディックとダンスをするエルフィーネは、自然の中で踊っていたような独特の振り付けが混じっていて笑、それを見たディックの母(アンジェラ・ソーン)が顔をしかめます。(「To the Moanr Born」でマージョリー役のアンジェラ・ソーンは上流階級の役柄がぴったりです)

フローラは車を出してくれたチャールズとダンスを楽しみ、セスは、その整い過ぎた容姿のせいで笑、女性たちに囲まれます。最後のスピーチでディックはエルフィーネと婚約したことを電撃発表し、彼の母を驚愕させます。出席者たちからは拍手と祝福の合唱が起こり、婚約がほとんど公然のものとなります。

その頃農場では、何かを察したのか、叔母が定期的に行っている儀式を突然すると言い始めて降りてきます。この儀式は祖母が年に一度、一族を集めて人数を確認するというもの。もちろん叔母は「昔、恐ろしいものを見た」を繰り返し、家族もその台詞を暗記するほどに・・・。

そこにパーティーから戻ったフローラたち。エルフィーネの婚約を告げて一同を驚かせます。するとアモスが、世の中を説いて回るため家を出ると宣言します。一族の呪縛が解け始めます。叔母は驚愕し、泣き叫ぶジュディス。エルフィーネを失ったアークは、メリアムとペアになってしまいます。

翌日、映画プロデューサーのネック氏がフローラを訪ねてきます。そしてセスという逸材を発見します。セスの女性を惹きつける魅力や屋外での逞しさがまさにうってつけ。しかし、ジュディスはセスが農場を離れることに猛反対し、泣き叫びます。セスを気に入る叔母まで降りてきて「恐ろしいものを見た・・・」とまた繰り返します笑。ネック氏は「その恐ろしいものもあなたを見たでしょう?」と皮肉を言うのです。

旅立つセスの背景に流れるのは「風と共に去りぬ」の「タラのテーマ」。壮大なアメリカ映画で、セスの将来はハリウッドで素晴らしいものになる予感・・・笑。セス役はルーファス・シーウェルにしかできないと思います笑。セスを乗せた車は音楽を背景に走り去って行くのです・・・。

ルーベンが管理するようになって大幅に改善した農場は、明るい雰囲気が漂っています。そしてコールド・コンフォート・ファームではエルフィーネの結婚式の準備が行われますが・・・。

おわりに

残念ながら、最後までフローラの父が何をされたのかは明かされません。これは原作でも明示されていないようです。

この映画は、英国文学のパロディといわれています。例えば:叔母エイダはメアリー・ウェブ作品に見られる呪われた農村の長老女性を思わせ、ジュディスはD.H.ローレンス作品の息子への執着や罪悪感に苛まれる母親像を連想させます。セスはD.H.ローレンス作品の原始的で情熱的な農民、エルフィーネはメアリー・ウェブ作品の自然の中で育ったヘイゼルが人間社会になじめなかったことを指しますが、ここではフローラの指導によっていとも簡単に社交界に適応します。

また、ジェーン・オースティンの「エマ」では、エマがハリエットの恋愛を成就させるために教育を施し、一族の風変わりなキャラクターは、ディケンズ作品で見られるような奇妙な親族や宗教的狂信者像を風刺しているとのことです。さらに、フローラ自身がオースティンの「Persuasion」のような小説を書きたいと語り、また、フローラを大いに気に入っている作家のマイヤーバーグ氏(スティーブン・フライ)は、ブロンテ姉妹の作品は兄弟のブランウェル・ブロンテによって書かれたという論文を執筆中であるというくだりもあります(当時のロンドンの知識人は、女性の創造性を軽視することがあったため)。

アダム役のフレディ・ジョーンズは、イギリスの長寿ソープオペラ「Emmerdale」のサンディ・トーマス役を長年務めた他、「ラヴェンダーの咲く庭で」のペンドレッド役など多数に出演。息子ビー・ジョーンズは「ミスター・ベイツvsポストオフィス」のベイツ氏役、「ハリー・ポッター」シリーズのドビーの声など変幻自在のキャラクター演技で評価されています。

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