「クランフォード」はイギリスのテレビドラマで、エリザベス・ガスケルの小説「クランフォード」や他の中編を原作に、2007年に全5話、続編が2009年に放送されました。
歴史的な描写へのこだわりや魅力的な登場人物、コメディとドラマの絶妙なバランスが高く評価され、多くの賞を受賞。衣装は初期ビクトリア朝様式を再現するために丁寧に制作され、生地や色、仕立てなど細部まで美しく、1840年代の雰囲気を豊かに感じられます(思わずスクリーンショットを撮りたくなるほど!)。また、登場人物の家や雑貨店、邸宅、オフィスなどの舞台セットも魅力的で、見ているだけで心が満たされます。
俳優の演技に加え、衣装やヘアメイクの完成度も評価され、英国アカデミー賞では各部門でノミネート。ヴィクトリア朝時代を忠実に再現したそのプロダクションの質の高さが際立っています。
「クランフォード(Cranford)」あらすじ
物語の舞台は、1840年代初頭のイギリス・チェシャー州にある架空の田舎町「クランフォード」。
ジュディ・デンチやアイリーン・アトキンスら豪華キャストが、温かさとユーモアを交えて、個性的な町の女性たちを丁寧に演じています。コメディを交えつつ感動的な展開もあり、19世紀イギリスの田舎の暮らしや、小さな共同体の魅力、そして産業革命による社会の変化に向き合う姿が描かれています。
「エピソード1: 1842年6月」のあらすじ
「エピソード2: 1842年8月」のあらすじ
「エピソード3: 1842年11月」のあらすじ
「エピソード4: 1843年4月」のあらすじ
「エピソード5: 1843年5月」のあらすじ
原作「クランフォード」
このドラマは、エリザベス・ガスケルが1849〜1858年に発表した中編小説「Cranford」「My Lady Ludlow」「Mr Harrison’s Confessions」に、「The Last Generation in England」の要素を加えて構成されています。続編「Return to Cranford」は、「Cranford」「The Moorland Cottage」「The Cage at Cranford」がベースです。
物語は、ガスケルが育ったチェシャー州ナッツフォードの体験に着想を得ており、この町が架空のクランフォードのモデルになっています。
「クランフォード」は日本語にも翻訳されており、「女だけの町―クランフォード」というタイトルで出版。物語の冒頭で「女性が多い町」と紹介されますが、男性キャラクターも数多く登場します。
エリザベス・ギャスケル
エリザベス・ギャスケルは、ヴィクトリア朝時代のイギリスの小説家・伝記作家・短編作家です。1810年9月29日にロンドンで牧師の娘として生まれ、母の死後はチェシャー州ナッツフォードの叔母に育てられました。その後、ギャスケル牧師と結婚してマンチェスターに定住します。
彼女はシャーロット・ブロンテやチャールズ・ディケンズ、ジョージ・エリオットとも親交があり、息子の死をきっかけに執筆を始めました。貧困層や産業労働者など、社会の幅広い階層を描いた作品で高く評価されています。
代表作には「クランフォード(Cranford)」のほか、「メアリー・バートン(Mary Barton)」「北と南(North and South)」「妻たちと娘たち(Wives and Daughters)」「シャーロット・ブロンテの生涯(The Life of Charlotte Brontë)」などがあります。
また、マンチェスターには「エリザベス・ギャスケルの家」があり、中心部からおよそ30分ほどの場所にあります。
https://elizabethgaskellhouse.co.uk/
Elizabeth Gaskell’s House
住所:84 Plymouth Grove, Manchester, M13 9LW
登場人物(相関図的に)
登場人物を相関図的にまとめています。()は役者名。
1. ジェンキンス家
デボラ・ジェンキンス(アイリーン・アトキンス):町の道徳的指導者で、礼儀や伝統を重んじる。意見は強いが、正しい判断をすると信頼されている。
マティルダ・“マティ”・ジェンキンス(ジュディ・デンチ):デボラの妹で独身。温厚で優しく謙虚な性格で、町を静かに支える。変化にも立ち向かう強さを持つ。
メアリー・スミス(リサ・ディロン):ジェンキンス家の客。好奇心旺盛で思いやりがあり、知性と機転でクランフォードの潤滑油となることが多い。ハリソン医師の助手で、新しい価値観を持つ女性。
マーサ(クローディ・ブレイクリー):ジェンキンス姉妹のメイドで、忠実かつ心優しい。後にジェムと結婚する。
ジェム・ハーン(アンドリュー・ブキャン):大工でマーサの婚約者。ハリソン医師の最新技術で助けられる。
ピーター・ジェンキンス(マーティン・ショウ、ニコラス・ル・プレヴォスト):姉妹の弟。長年行方不明だったが帰郷する。
クララ・スミス(フィンティ・ウィリアムズ):メアリーの継母で社会的地位を気にし、メアリーの結婚話に熱心。
トーマス・ホルブルック(マイケル・ガンボン):農夫でマティの過去の求婚者。パリから戻り亡くなる。
2. 医療関係者
モーガン医師(ジョン・ボウ):町の外科医で伝統医療を支持。当初はハリソン医師の新技術に懐疑的だった。
フランク・ハリソン医師(サイモン・ウッズ):ロンドン出身の医師。最新技術を用いて手術を成功させる。新しい価値観を持ち、ロマンスのトラブルに巻き込まれる。
ローズ夫人(レスリー・マンヴィル):ハリソン医師の家政婦。世話好きで謙虚な女性。
ジャック・マーシュランド医師(ジョー・マクファデン):ハリソン医師の友人で、社交的かつユーモアを愛する。
3. ハンベリー家と関連人物
レディ・ラドロー(フランチェスカ・アニス):ハンベリー邸の貴族未亡人。厳格に伝統と階級秩序を重んじる。
カーター氏(フィリップ・グレニスター):レディ・ラドローの地所管理人。ハリーを指導し、進歩的な考えで教育を推進。
ロレンシア・ガリンド(エマ・フィールディング):帽子職人。準男爵の娘であり、レディ・ラドローの保護下で育った。ハリーを支援。
セプティマス・ハンベリー(ロリー・キニア):レディ・ラドローの息子。イタリアで浪費し、ハリーを騙して借金を帳消しにしようとする。
チャールズ・モールヴァー卿(グレッグ・ワイズ):治安判事。鉄道問題に関与し、レディ・ラドローと貴族としてつながる。町の行政を監督。
ハリー・グレグソン(アレックス・エテル):貧しい少年。密猟で家族を助け、教育を受けて成長。カーター氏の遺産を継ぐ。
ジョブ・グレグソン(ディーン・レノックス・ケリー):ハリーの父で労働者。家族を支えるために密猟で捕まった後、レディ・ラドローの敷地で働く。
4. ブラウン家
ブラウン大尉(ジム・カーター):退役軍人。鉄道を支持しクランフォードの近代化に賛成している。
ジェシー・ブラウン(ジュリア・サワラ):ブラウン大尉の娘。控えめで家族に忠実、ゴードン少尉と結婚する。
ゴードン少尉(アリスター・ペトリー):ブラウン大尉の友人、軍人。ジェシーを長年慕ってきた。
5. その他の親しい関係
オクタヴィア・ポール(ミス・ポール)(イメルダ・スタウントン):ゴシップ好きの独身女性。町の社交界で情報交換の中心人物。
フォレスター夫人(ジュリア・マッケンジー):牛をペットとして愛する未亡人。ミス・ポールと親しい。
オーガスタ・トムキンソン(デボラ・フィンドレイ):独身女性。妹キャロラインをいつも気にかけている。
キャロライン・トムキンソン(セリーナ・グリフィス):オーガスタの妹。ハリソン医師に恋をし、彼からのプロポーズされたと勘違いする。
バーサ(ハンナ・ホブリー):ミス・ポールのメイド。
6. ハットン家
ハットン牧師(アレックス・ジェニングス):町の牧師。娘ソフィーの父。
ソフィー・ハットン(キンバリー・ニクソン):ハットン牧師の娘。妹や弟の世話をし、特に弟ウォルターは生まれた時から面倒を見てきた。ハリソン医師に気に入られる。
豪華なキャスト
「クランフォード」には、ジュディ・デンチ(マティルダ・“マティ”・ジェンキンス役)、アイリーン・アトキンス(デボラ・ジェンキンス役)、マイケル・ガンボン(トーマス・ホルブルック役)、イメルダ・スタウントン(オクタヴィア・ポール役)、フランチェスカ・アニス(レディ・ラドロー役)、ジム・カーター(ブラウン大尉役)、ジュリア・マッケンジー(フォレスター夫人役)、レスリー・マンヴィル(ローズ夫人役)、フィリップ・グレニスター(カーター氏役)といった世界的に有名で多くの受賞歴を持つキャストが多く出演しました。
視聴方法など

ドラマ「クランフォードは」アマゾン・プライムで観ることができるようです。私がもっているDVDはイギリスのアマゾンで購入したもので英語の字幕がついています。登場人物のほとんどがきれいな英語なので聞いていて心地よいです。
おわりに
ドラマ「クランフォード」は、こんな小さな町でそれぞれのキャラクターが個性的に詰め込まれていてストーリーとしては優秀だし、衣装やセットもすばらしく見ごたえがあると思います。何度も観てしまうぐらい大好きなドラマです。