ドラマ「クランフォード」は、物語の魅力はもちろん、登場人物一人ひとりが個性的で、衣装や舞台もとても丁寧に作られていておすすめです。
どのシーンもまるで絵画のようで心を奪われます。家の中の足音、ドアの開閉音、女性たちの歩く音、馬の蹄の音など、細やかな音の演出も美しく印象的です。
特に心に残ったシーンのあらすじをまとめておきます。
エピソード2: 1842年8月のあらすじ
レディ・ラドローのガーデンパーティの準備
レディ・ラドローは、彼女の息子が静養が理由でガーデンパーティには来ることができないと知り、残念がります。
日曜の朝、礼拝に集まったクランフォードの女性たちは、レディ・ラドローのガーデンパーティの話で盛り上がります。
パーティに間に合うよう馬車を整備しているというジェイミーソン夫人。ミス・ポールとフォレスター夫人は「招待状は郵送で届いたのですか?」と質問すると、「いいえ、レディ・ラドローの従僕が直々に届けてくれたのよ」と返答します。この手の質問は毎年してそう笑。
マティも、「パーティではバンドの演奏があったり、素晴らしい軽食が用意されたりするのよ。ここ2年間はアイスクリームも出たのよ」と、楽しげにメアリーに説明します。
そして町の女性たちは、ロレンシアの帽子店でガーデンパーティ用の帽子についてあれこれと賑やかです。
「私の顔を長く見せる帽子はないの?」
「イタリア産の麦わらと普通の麦わらって、何が違うの?」
「ターバンなんてどうかしら」
ロレンシアはおしゃべりに夢中な女性たちの騒がしさに少しうんざりしている様子で、一度奥の部屋に引っ込んでしまいます。女性たちは小声で「ロレンシアはあまりおしゃべりに興味がないのよね」「レースがついた服を着ているのを見たことがないわ」と話します。
ロレンシアはレディ・ラドローの保護のもとハンブリー邸で育った経緯があり、マナーや教養が洗練されています。現代でいうところの、仕事ができて自立したタイプの人物でしょう。ほかの女性たちのようにレースを身に着けて、お茶を飲みながらおしゃべりに興じるタイプではありません。
クランフォードの女性たちは、ジョンソン氏の雑貨店でもドレス用のパンフレットや生地を見ながらあれこれ騒がしい笑。
ミス・ポールが「この色、とても素敵じゃない?」と生地を見せると、トムキンソン姉妹の姉が「それはルバーブ色ね(野菜の名前)」と答えます。そして、トムキンソン姉妹がパンフレットを手に「なんて素敵なドレス!」と声を上げると、ミス・ポールが背後から笑、「素敵ねー。若々しいソフィーならきっとよく似合うわ。彼女のウエストは杖のように細いから!」と軽くリベンジします笑。
メアリーは継母から手紙を受け取ります。継母はガーデンパーティに来る予定だと書いており、メアリーはとてもがっかりします。
ハリソン医師は、ガーデンパーティにほとんど興味を示していませんでした。家政婦のローズ夫人(レスリー・マンヴィル)に、「ガーデンパーティに招待されることは名誉なことですよ」と言われても、「へえ」といった態度。
しかし、ソフィーたちがガーデンパーティに行くと聞いたとたん、「ガーデンパーティ?もちろん行きます」と態度が急変します笑。
ハリソン医師に恋するキャロライン
キャロラインがドレスの生地を選んでいるとき、馬に乗ったハリソン医師が店の外を通りを通り過ぎました。その瞬間、キャロラインの心臓はどきどきと高鳴り、顔が火照ってきます。
これはもうハリソン医師に恋をしている状態。しかし、当の本人は自分に何が起きているのか分からず、まわりの女性たちも慌てます。その後、キャロラインはハリソン医師に往診に来てもらいますが、彼に対する思いはますます強くなるのです。
ガーデンパーティでは、キャロラインはまた胸がどきどきするからとハリソン医師を呼び、木陰で診てもらいます。しかし、ハリソン医師の心が他に向いていることは明らか。ソフィーがいるからソワソワしているのです笑。
彼はキャロラインだけに付き添っているわけにはいかず、他に呼ばれてしまいます。町には若い男性がいないのか?半ば引っ張りだこ状態です笑。
帰るときにもキャロラインは「まだ回復したわけではないのに」と不満そうですが、ハリソン医師は「ごきげんよう」と言ってそのまま通り過ぎてしまいます笑。彼は少しでもソフィーと一緒にいたいらしく、ソフィーが乗っている馬車の方に向かうのでした。
ゴードン少尉のプロポーズ
ブラウン大尉の家に、ゴードン少佐(アリスター・ペトリ―)が訪れることになり、大尉は「ジェシーと二人だけで迎えるのは寂しい」ということで、デボラ、マティ、メアリーを招待します。
スコットランド出身のゴードン少佐はとても素敵な人物で、「クランフォードを訪れるのは今回が初めてです。こんな素敵なところに訪れたことがなかったのは不運でした」と話します。彼はブラウン家とは以前からの知り合いで、特にブラウン姉妹の姉は、彼がスコットランド訛りでロバート・バーンズの詩を朗読するのが好きだったといいます。
デボラの催促によりジェシーがピアノを弾き、ゴードン少佐とともにスコットランドの歌「Loch Lomond」を歌います。とても美しい曲です。
(「Loch Lomond」はスコットランドにある湖の一つ。「Loch」とはスコットランド語で「湖」を意味します。スコットランドには「Loch ○○」という名前の湖が多数あります。ネッシーで有名な「ネス湖」は「Loch Ness」です)
「true love」という歌詞のところで目が合う二人・・・。
愛の気配が漂います・・・。
後日、ジェシーはゴードン少佐からアネモネの花を贈られます。デボラたちは「アネモネの花言葉は何かしら」と花言葉の本を広げ、まるで占いに夢中になる少女たちのようにはしゃぎます。
実はジェシーには、ゴードン少佐からのプロポーズを一度断った過去がありました。母を亡くした直後に少佐から求婚されたものの、体の弱い姉の世話があったためやむを得ず断ったのです。
そしてゴードン少佐は2度目のプロポーズをします。彼のスコットランド訛りの英語がとても素敵です。差し出す指輪も素敵。
しかし少佐は任務のため3週間後にインドへ旅立つ予定。インド行きについて始めて知ったジェシー。喪中であること、そして父を一人残してインドへ行くわけにはいかないという思いから、彼女は涙をこらえてプロポーズをまた断ってしまいます。
ピアノに向かってしんみり座るジェシーに、「今日はピアノは弾かないよね?」と言う大尉。悲しいことに、大尉はジェシーが2度もプロポーズされたことを知らない様子。人情味のある父親なのですが、娘のことや女性の気持ちがあまり分からないのかな・・・。残念なことですね・・・。
ハリーとカーター氏
ハリーの家(小屋と言った方がいいかも)では、父親が不在のときに母親が出産します。産後で体力を失っている母親は、食べるものがないため赤ちゃんに母乳を与えることもできません。ハリーは小さな弟にフォレスター夫人の牛からミルクをとってくるように指示し、自分はレディ・ラドローの敷地内でウサギを捕りに行きます。
ある日、いつものようにあちこちで見つけたものを家に持ち帰ると、父親が帰ってきていました。父はハリーの10歳の誕生日のために、革のブーツを持って帰ってきました(それまでは裸足・・・!)。
ブーツが包まれていた新聞紙に「James」という文字を見つけたハリーは「僕たちの赤ちゃんの名前と一緒だ!」と喜びます。しかし父は「なんでそんなことを知っているんだ?我々に教育なんて必要ない」と怒り、新聞紙を取り上げてしまいます。
そして父に「仕掛けた罠を見てこい」と命じられたハリーは、レディ・ラドローの敷地へ向かいます。そこで温室に入り珍しい植物やブドウに目を奪われます。温かい空気に包まれ、思わずその場で眠ってしまいます。
そこへ現れたのがカーター氏です。元軍人らしく歩く姿には威厳があります。ハリーを見つけたカーター氏は怒り心頭でハリーの首根っこをつかんでオフィスに連れて行きます。「何も触っていない」と言うハリーに「何かに触れたかどうかは問題ではない。これは不法侵入だ」というカーター氏。
「主の祈りには『我らの不法侵入を赦しなさい』とあります」と反論するハリー。なぜそんなことを知っているのかと質問するカーター氏に、「教会で聞いたことがあるからです。僕は温室の果物は食べていません」というハリー。
その証拠にタイミングよく空腹のためにふらつくハリー。カーター氏はハリーにパンと水を与え、彼の賢さと誠実さに気づきます。そしてカーター氏はハリーに仕事を手伝うように提案します。ハリーはよく働き頭も良いため、カーター氏も彼を気に入っている様子です。
カーター氏のオフィスの雰囲気も印象的です。
ガーデンパーティの準備の仕事中、ハリーは「アイスクリームって何ですか」とカーター氏に尋ねます。パーティが終わった後、カーター氏はハリーをオフィスに呼びアイスクリームを食べさせます。そのおいしさにハリーは満面の笑みを浮かべます。
ハリーは「クランフォードには学校がありません。あるのは家事を習うための学校だけです。教育はすべての人のためにある訳ではありません」と話します。カーター氏は「無知であることは犯罪ではない。しかし、無駄にすることは罪だ(ハリーのような賢い子を学ばせないこと)」と言い、ハリーに仕事を与え、さらに読み書きを教えることを提案します。
ガーデンパーティにて
ガーデンパーティでは、大人も子供もおしゃべりをしたりゲームをしたりして楽しんでいます。
子供たちはポニーに乗り、大人たちはボートに乗り、音楽も演奏され、珍しい軽食やアイスクリームも振る舞われます。
マティの言うように、クランフォードの人々がアイスクリームに出会ったのはここ数年のことのようで、女性たちがアイスクリームを口に入れた瞬間の戸惑ったような表情がなんとも言えません。
マティはホルブルック氏という男性に声をかけられます。
長年を経た後の再会のようで、ホルブルック氏はとても嬉しそう。マティも氏が去っていく姿を何度も振り返りながら見送ります。ここにも愛が漂っている様子・・・。
ホルブルック氏扮するマイケル・ガンボンは、「ハリー・ポッター」シリーズのダンブルドア校長としてよく知られています。
一方、メアリーの継母は、メアリーを何としても結婚させたい。何かを期待して独身のハリソン医師とメアリーをボートに乗せます。しかし、メアリーは「私たちの間には何も起こりませんので気にしないでください」と丁寧に前置きを入れます。そして、ハリソン医師はソフィーのことを好きなのではないかと質問します。ハリソン医師はその通りだと素直に告白します。
ガーデンパーティでソフィーと距離を縮めることができたハリソン医師。ところがその夜、ソフィーの弟が突然体調を崩し、懸命に治療を試みたものの命を救うことはできませんでした。それにより、せっかく近づいたソフィーとの関係は、再び遠ざかってしまいます。
ハリソン医師とともに全力で看病を手伝うソフィーと、ただ祈るしかできなかった牧師の父の二人の対照的な姿が、とても印象的でした。
クランフォードに鉄道が!?
ミス・ポールとフォレスター夫人は、パーティーに来ていたチャールズ卿とロレンシアの会話から、クランフォードに鉄道が通る計画があることを偶然耳にします。
クランフォードの女性たちは、鉄道という新しい技術に対して不信感や恐れを抱いていました。鉄道が開通すれば人や物の行き来が活発になり、町が騒がしくなったり、外部からの影響を受けたりするかもしれないと感じていたようです。特に、伝統や礼儀、地元のつながりを大切にしている彼女たちにとっては、静かで上品な暮らしが乱されるのではないかという不安があったと思います。
ミス・ポールたちから話を聞いた女性たちは、興奮しながらブラウン大尉のもとへ詰め寄ります。一緒に暮らすジェシーでさえもその話は知らなかったようです。
女性たちが一斉に「キャプテン・ブラウン!」「キャプテン・ブラウン!」と呼びかける姿に、大尉もさぞ驚いたことでしょう笑。
大尉は女性たちをなだめるつもりだったのでしょうが、
「変わる部分もあるでしょう。鉄道はクランフォードに素晴らしい機会をもたらします。農産物の運搬や人の移動も楽になります。生活のペースは速まることで私たちは現代社会に加わることができます。私は鉄道会社に雇われることになり、工場長になる予定です」と、もちろん悪気は全くないのでしょうが、女性たちが聞きたいこととは正反対のことを言ってしまいます。
デボラは「あなたはこのコミュニティを壊す中心人物です。ジェシーだけでなく、隣人そして町全体を裏切っている。その計画を私たちに秘密にしていたなんて!」と非難し「私たちはもはや友達ではありません」と言い放ちます。
ああ・・・せっかく友達だったのに・・・。
落胆したのはデボラだけではありませんでした。
ブラウン大尉が鉄道事業で長期にわたって家を空けると知らされたジェシーも、自分が下した決断を悔やみます。「私だって結婚できたのに」と泣きじゃくりますが、残念ながらこの時点でもブラウン大尉はジェシーが二度もプロポーズされていたことをまったく知らないようです。現代のようにすぐに連絡が取れるわけではありませんしね・・・。
それにしても、お父さん気づいてあげてよって思うのですが・・・。
怒りながら帰宅したデボラたち。
デボラはひどい頭痛を訴え、寝室に入るなり倒れてしまいます。そしてそのまま息を引き取ってしまいました。デボラがいつも座っていた椅子は空っぽになってしまいました。
マティ―がひとりで暖炉の前に座る姿は、まるで美しい絵画のようでした。
おわりに
デボラの家では、どうやらカーペットの張り替えが行われていたようで、家具がさかさまに寄せられている光景にマティは驚き慌ててしまいます笑。キッチンの扉を開けると、ジェムや作業員たち、そしてメイドのマーサが賑やかにおしゃべりをしており、マティはさらに驚きます。
そこへデボラが現れ「落ち着きなさい。お茶はキッチンで飲めばいいわよ」と言います。マティは「キッチンで?それは私たちの慣習ではないわ」と戸惑いますが、デボラは落ち着いた様子で「今朝はキッチンで大丈夫だから」と言い切ります。
慣れ親しんだ慣習と違うことをすることは大変なこともあるんだなと思わずにはいられません笑。