クランフォード(Cranford)第4話のあらすじ

ドラマ「クランフォード」は、物語の魅力はもちろん、登場人物一人ひとりが個性的で、衣装や舞台もとても丁寧に作られていておすすめです。どのシーンもまるで絵画のようで心を奪われます。家の中の足音、ドアの開閉音、女性たちの歩く音、馬の蹄の音など、細やかな音の演出も美しく印象的です。

特に心に残ったシーンのあらすじをまとめておきます。

※ 一部ネタバレしています!

目次

エピソード4: 1843年4月

ホルブルック氏の遺産を相続した甥は家財の多くをオークションに出品します。会場となった故ホルブルック氏の自宅には町の人々が集まってきます。

ミス・ポリーはマティのために、ホルブルック氏の横顔のシルエット画を「私のいとこの形見だからいいわよね?」と購入してきてくれます(値切って笑)。それは、かつてマティがホルブルック氏宅に招かれたときに愛おしそうに見つめていたものでした。

モーガン医師とハリソン医師もオークションに参加しています。会場にいたソフィーを見つけて嬉しそうなハリソン医師。
漆塗りの中国製のテーブルを「あれは良い品物だ」と勧めるモーガン医師に影響されて、ハリソン医師はそのテーブルを競り落とします。オークション担当者に「これを贈る女性がいるのですか?」と皆の前で聞かれたハリソン医師は「もちろんです」と答えます。

ところが持ち帰ってみると、それはソーイングテーブルであることが判明します。彼には使い道がないためローズ夫人に譲ってしまいます。

その後、ハリソン医師はソフィーへの求婚の許しを得るためにハットン牧師を訪ねます。真摯な気持ちを受け止めたハットン牧師は快く承諾します。そして二人が部屋を出ると、廊下には花を活けていたソフィーが。

多分・・・、聞こえていたはず笑。

若い二人の距離は少しずつ縮まっていきます。
二人が歩く庭はまるで絵のように美しく、風に揺れる木の葉の音にも心が癒されます。

勘違いをする人たち

当時は、気持ちを直接言葉にすることは少なく、相手の気持ちを探ったり、花言葉を調べて一喜一憂したりすることがあったようです。
また、クランフォードのような田舎町では、都市部よりも保守的で暗黙のルールや習慣が強く残っていたり、異性関係の経験も多くないため、ちょっとした誤解や勘違いも起きやすかったのではと思います。

ローズ夫人

ある日、ミス・ポールがローズ夫人を訪ねると、部屋の中のソーイングテーブルに気づきます。
ここでもお手本のように二度見するミス・ポールはとても素晴らしい笑。

「ホルブルック氏のソーイングテーブルだわ!」とミス・ポールは声を上げます。

そしてミス・ポールは、フォレスター夫人の家でお茶をしながら「あれは婚約の意味があるのでは?」と推測に花を咲かせます。ソーイングテーブルは、花嫁道具として持参できるものであり、また、婚約をほのめかす品としても使われていたようです。

後日、フォレスター夫人がローズ夫人を訪ねると、ローズ夫人はハリソン医師が自分に気があるなんて信じられないと話します。フォレスター夫人は、ソーイングテーブルは明らかに婚約の品であると指摘し、他にも何らかのほのめかしがあるのではと探ります。

ローズ夫人は、ハリソン医師からホウキと薄紫色の美しい手袋をもらったと話します。ただ、それらはハリソン医師がソフィーに会いたくてジョンソン氏の雑貨店に立ち寄り、手ぶらで帰るのが気まずくて買っただけのものでした。フォレスター夫人に促されて、ローズ夫人も「そうなのかしら」と思い始めます。

そして、ミス・ポールとフォレスター夫人はローズ夫人の髪を染めることに。染髪料の匂いに戸惑いながら「本当にこれが必要なのかしら」「ハリソン医師が戻ってきたらどうしよう」と、不安げなローズ夫人。染め粉はインディゴで、ミス・ポールは「アフリカの野菜なのよ!」と自信満々です。ローズ夫人の自然な髪色も素敵だと思うのですが・・・。

染め上がった髪を水で流すミス・ポール。どこかフェルメールの「ミルクを注ぐ女性」を思わせる、美しいシーンです。

出来上がりを鏡で見ながら、ローズ夫人はまんざらでもない様子でした。

キャロライン

もう4月だというのに、マーシュランド医師が書いた無記名のバレンタインカードがいまだに手の中にあるキャロライン。ハリソン医師からは何の働きかけもないため(もちろんですが)「私のことを無視している」と気をもんでいます。

そんな様子を見かねた姉のオーガスタは、キャロラインが外出しているときを狙い、ハリソン医師を家に招いて話をすることに。ハリソン医師はちょうど牧師館を訪れ、ソフィーとの結婚の許可を得たばかりで幸せな気持ちに包まれていました。

オーガスタは「あなたは結婚する準備が(キャロラインと)できているのでしょうか?」と尋ねます。頭の中がソフィーでいっぱいのハリソン医師は、彼女との将来を思い描きながら「結婚はお金だけの問題ではなく、神聖なものだと真剣に考えている」と答えます。

オーガスタはオーガスタで、彼の回答を妹との結婚について語っているものだと勘違いし、すっかり満足します。そして「私は彼女の結婚資金として4,000ポンドを用意しています」と話すのです。

キャロラインが帰宅して、オーガスタは「ハリソン医師は、メイ・デーのお祭りでプロポーズするだろう」と推測し、二人ともその気になります。メイ・デーはバレンタイン・デーと並んでロマンチックな日でもあったようです。

手紙を書くメアリー

ジェシーの家でお茶をしながら、ジェシーはメアリーに「父は仕事でしばらく帰ってこないし、ゴードン少尉からも何の連絡もないの」と話します。

「2回もプロポーズしてくれたのにどちらも断れば、少尉は私のことなんて忘れてしまって当然よ。それより、もう戻ってこないと思う」と、切なげな表情を浮かべます。

その夜、メアリーはマティから「弟のピーターはインドの『Chunderabaddad』(おそらく架空の都市)にいる」と聞きます。ジェシーとの会話でもその地名が出てきたことをふと思い返していたようです。

メアリーはジェシーの状況をゴードン少尉に伝える手紙を書きます。そして、もう一つのあるお願いも添えるのでした。

学ぶ機会を取り上げられる

カーター氏とハリーは馬に乗って鉄道敷設予定地へ向かいます。
そこでハリーはブラウン大尉からレディ・ラドロー宛の手紙を預かります。しかしハンブリー邸へ向かう途中、ハリーは馬の上でその手紙を読んでしまいます。そしてお約束のように風に飛ばされる手紙・・・。

ハリーは正直にレディ・ラドローに手紙を紛失したことを謝罪します。
「どうしたら手紙をなくせるんだ、ポケットに入れておかなかったのか」と詰問されます。

それに対してハリーは「大丈夫です。内容を覚えています。手紙はブラウン大尉からで、内容は・・・」と説明します。
「覚えているって、どういうこと?」と驚くレディ・ラドローに、ハリーは「僕が手紙を読んだからです」と答えるのです。現代でもびっくりな回答ですね笑。

使用人は読み書きなど必要なく仕事さえしていればよいという考えのレディ・ラドローは、ハリーが手紙を紛失したことだけでなく、勝手に読んだことにも怒りを露わにします。

読み書きを教えていたカーター氏は、叱責を受けます。

「文書の仕事が山ほどあるので、ハリーには事務の能力が必要です」と弁明しますが、レディ・ラドローは「クランフォードに読み書きできる者は大勢いる。ハリーは畑で働くべきです」と断じます。カーター氏は「ハリーは学校へ行くべきです。時代の流れに合わせてください!」と訴えます。

後日、レディ・ラドローはカーター氏の助手として「すでに十分な読み書きができて手先も器用だから」と、ロレンシアを連れてきます。カーター氏は「女性ですか?!」と声を上げます。

「そうですけど、それが何か?」と答えるロレンシアに、レディ・ラドローは「どうか時代の流れに合わせてくださいね」というのです。

カーター氏とロレンシアは共に働く中で、意見がぶつかります。
彼はロレンシアを「ただの帽子職人」と評しますが、ロレンシアは「私は帽子やボンネットを作ることを望んでいるわけじゃない。私は生計を立てる必要があるのに社会にはその選択肢がない。もしハリーに教育が必要だとお考えなら女性にも平等に与えられるべきです。女性だってあらゆる職業や専門職に就くことができるはず」と主張します。

まったくその通りです。
彼女は生まれる時代を間違ってきたようです(150年ほど早かった笑!)。

しかし、ハリーはレディ・ラドローに命じられ、牛小屋で作業をすることに。それでもハンブリー邸での雇用は正式なものであり、家族を養える待遇で一生その職にとどまってもよいという条件でした。ハリーと同じ階級の人々から見れば恵まれているかもしれませんが、実際には牛の世話をするだけの単純作業です。

「ハリーに読み書きを教えたことを後悔はしていない。学ぶことに罰を与えるような社会に後悔している」と語るカーター氏に、「カーター氏でもどうにもできないことがあります」とハリーは諦めるのです。
階級や性別によって教育の機会に差があった当時の現実が浮き彫りになります・・・。

一方で、レディ・ラドローは、イタリアで浪費生活を送る息子のために継続して資金を工面します。「息子に駄目と言うべきなのは分かっている。ハンブリー邸への責任と息子への愛の間での葛藤があるけど、やはり息子が一番大事なのです」と語ります。

マティの経済的困難

マティは、自分が投資していた「Town & County」銀行が倒産したことを知ります。経済的にかなり厳しい状況に陥ったことを友人たちに気づかれないよう気を配ります。

苦渋の決断で、メイドのマーサには辞めるよう切り出します。マーサは「マティは親切そのもののような人で、あのお宅以上に良い職場環境はない」とジェムに話していたところだったので、大きなショックを受けます。そして「無償でもいいからここに置いてほしい」と涙ながらに訴えます。

そしてジェムと結婚し、二人でマーサの家に住んで家賃を払うというアイデアを思いつきます。

メイ・デー(May Day)

メイ・デー(May Day)のお祭りは、春の訪れと夏の始まりを祝う伝統的な行事です。

草木で覆われたカゴのようなものに人が入って踊るジャック・イン・ザ・グリーン(Jack-in-the-Green)、モリスダンス(Morris dancing)、メイポールダンス(maypole dancing)などが登場し、町の人々が集まって踊りや音楽を楽しみます。コミュニティの結束や階級間の交流の場であり、クランフォードではロマンスの機会としても機能していたようです。

祭りの朝、町の人々が集まり、それぞれ楽しそうに準備を進めます。小さな舞台を作る人、バンドの音合わせ、ジェムたちはジャック・イン・ザ・グリーンの仕上げを行います。ハリソン医師も準備を手伝っていますが、できるだけソフィーのそばにいたい様子。

ハリーの父も仕事をしていて、ジャック・イン・ザ・グリーンに使う草木を他の作業員と集めています。葉のついた枝を何本も持ち、先陣を切って川の浅瀬を元気に走ってきます笑。そして「とってきたぞー」と威勢よく作業場に戻るのです。適した仕事場があれば、彼はいい仕事をする人なのでしょう。

祭りの会場にジャック・イン・ザ・グリーンが到着しイベントが始まります。緑に包まれたジャック・イン・ザ・グリーンが揺れながら踊る様子は、まるで森の妖精のように可愛らしいです。

レディ・ラドローは、メイ・クイーン(May Queen)の役割をする少女に王冠をかぶせる役目があります。彼女が会場に現れると一同は静かになります。そして衣装を身にまとったハリーが、ロレンシアが作った王冠を持ってやってきます。ハリーの母は彼を誇らしそうに眺めます。

一人残されたハリソン医師

キャロラインはハリソン医師がソフィーを愛おしそうに見つめているのに気づき、「ソフィー・ハットンが叩いているタンバリンがうるさくて頭が痛い」と訴えます。オーガスタはハリソン医師に診てもらうよう頼み、ハットン牧師からソフィーのパラソルを借りに行きます。

そのときハットン牧師に「今日、婚約の発表ができるそうだ。妹はハリソン医師からプロポーズを受けるだろう。4,000ポンドの持参金を持たせるつもりです」と話します。当然、彼は顔色を変えます。

ハリソン医師がソフィーに話しかけているところに割り込んだハットン牧師は「君が金に左右されるとは思わなかった。他の人とも約束を交わしているのか」と責めます。「何のことですか」とハリソン医師は戸惑います。

そこへ人々が集まってきます。

オーガスタは「何も知らないわけがない。4,000ポンドの持参金のことを知っているはず」と指摘。

ハリソン医師は「あなた方の持参金は私には何の関係もありません。それは私に提示されたものではない。私はソフィーにしか興味がありません」と断言します。

ショックを受けたのはトムキンソン姉妹だけでなく、そこにやってきたローズ夫人たちも動揺します。
ミス・ポールは「ローズ夫人、あなたの婚約者(ハリソン医師)が困ってるわ」と言います。

「ローズ夫人?!」
と、ローズ夫人の話はどこから?というような驚きの表情のハリソン医師。

ローズ夫人は「公式には婚約こそしていない。でも我々の間には何かしらの理解があった」と遠慮がちに話すものの、すぐにそれが勘違いだったと気づき、めまいを起こします。

キャロラインは「バレンタインのカードは『結婚』をほのめかしていた。『約束の不履行』で訴える。法廷で約束違反の証拠として提出する!」と怒りで震えます。

ショックを隠せないソフィーはハットン牧師に連れ去られます。

全く身に覚えのないハリソン医師。つい5分前までは幸せな気分だったのに・・・。
女性たちが去った後、一人残されたハリソン医師は困惑したままエンドロールを迎えます。

ただし、そのシーンは写真のように美しいです(ハリソン医師には気の毒ですが・・・)。

おわりに

女性たちがジョンソン氏の雑貨店で服飾アクセサリーを物色しながら楽しそうに賑わう様子は、現代の女性と何ら変わりません。ジョンソン氏の店も趣があって素敵です。

私の大好きなミス・ポールはチェック柄の生地を手に取り、フォレスター夫人に「このタータンチェック、私に似合いそう」と自分に合わせてみます。すると「スコットランド人に間違われるわよ」と返されます。

「じゃあストライプ柄はどうかしら」と言えば、「あら、ストライプ?ふくよかな体型には引き締め効果があるわね」と少々ピリッとした返答が。いつもニコニコして可愛いおばちゃまのフォレスター夫人にしては珍しいです。そう言われて無表情になるミス・ポールもコミカルでした。

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