Enchanted April(魅せられて四月)イギリス映画 美しいイタリアの風景

「Enchanted April(魅せられて四月)」は1992年のイギリス映画。

エリザベス・フォン・アーニムの小説「The Enchanted April」が原作で、何度も舞台化され、1935年には最初の映画化もされました。日本では1993年6月に公開。

第一次世界大戦後のロンドンで抑圧された生活に疲れた4人の女性が、イタリアの別荘「サン・サルヴァトーレ」で1か月の休暇を過ごすことで、それぞれが心を開き、友情を深め、自己発見と人間関係の再認識を体験します。イタリアの自然や風景が息をのむほど素晴らしく、こちらまで心が癒されてしまうおすすめの映画です。

オープニングタイトルは、ロティが女性クラブに向かう途中のバスの中の様子。バスには軍服を着た人も同乗しており、戦争がまだ身近だった時代であることがうかがえます。現在ではマナー違反とされる喫煙も、当時では普通に行われていました。(画像は引用目的で使用しています)

※ ネタバレしています!

目次

「Enchanted April(魅せられて四月)」あらすじ

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第一次世界大戦後のロンドン。ロッティ(ジョージー・ローレンス)は、トッテナム・コート・ロードの「女性クラブ」へ向かうバスの中で、乗客が読む新聞に掲載されていたイタリアの古城「サン・サルヴァトーレ」の4月の賃貸広告を見つけます。

ケチで人脈作りに熱心な弁護士の夫メラーシュ(アルフレッド・モリーナ)との退屈で不幸な結婚生活に疲れていたロッティは、クラブ到着後、その新聞を探し出し、同クラブ所属のローズ(ミランダ・リチャードソン)に費用を折半して1か月の休暇を共に過ごすことを提案します。同じクラブに所属していても、話をしたことはない二人。ローズがあまり幸せそうではなかったから声をかけたといいます。突飛な提案にローズは驚き拒絶するものの、次第にその気になっていきます。

二人は賃貸の支払いのためブリッグス氏(マイケル・キッチン)を訪ねます。彼は目が悪く、ローズの声や話し方から彼女が良い人だろうと推測します。戦争直後で多くの女性がそうであったことから、二人も戦争未亡人だと思われました。

ロッティたちはさらに費用を抑えるため、同行する女性を募集したものの、応募してきたのは二人だけでした。
一人は高齢の未亡人フィッシャー夫人(ジョーン・プロウライト)。厳格かつ気難しく、高貴な社交界で出会った今は亡きヴィクトリア時代の著作を読み返し思い出に浸っていました。歩行杖をつき、彼女の態度と同じようにその歩き方も重々しいものでした。

もう一人は華やかな社交界の美女キャロライン・デスター(ポリー・ウォーカー)。家柄と美貌を理由に執着する男たちにうんざりし、常に注目されることにも疲れていました。彼女は男性のいないサン・サルヴァトーレで1か月の隠れ家を求めていました。

ローズが夫にイタリア行きを話すと、夫フレデリック(ジム・ブロードベント)はあっさり承諾し、あまり気に留めていない様子。信心深いローズは、偽名で官能小説を書く夫の活動に反対しており、そのため二人の関係は冷え切っていました。フレデリックはキャロラインの母親が主催する文学サロンや社交界に出入りし、既婚者ながらキャロラインを気に入り、会うたびに彼女を誘っていました。ローズはそれを知りません。キャロラインは彼をうっとうしく思い、また常日頃から自身の美しさを自覚しつつ「美しいのが面倒くさい、私を放っておいて欲しい」と考えていました。羨ましい悩みですね笑。

ロッティがメラーシュに旅行のことを話すつもりでいると、驚いたことに彼はロッティを連れてイタリア旅行を計画しているといいます。ロッティは、知人にもうイタリア旅行に誘われたから行けないというと、メラーシュは大反対し行ってはいけないと命じます。ロッティは珍しく夫に反抗し、サン・サルヴァトーレを決行します。

ロッティとローズはイタリアへ旅立ちます。船と電車で移動し、そして夜のひどい雨の中、最寄り駅で迎えを待つ二人は、やって来たサン・サルヴァトーレの使用人たちを強盗と勘違い。しかも、到着した別荘は薄気味悪いぐらい暗く、二人はまるで幽霊の館に着いてしまったかのような表情。屋敷に入り閉まる入り口のドアもホラー映画のようです・・・笑。

共同生活を始める4人

翌朝、目覚めたロッティが窓を開けると、そこには別世界が広がっていました。
暗い部屋とまばゆい外の景色が対照的で、美しい鳥の声も聞こえます。光り輝く海を目の前に、ロッティは何が起こっているのか理解するのに時間がかかるくらい驚いている様子。
庭にはすでにローズが出ており、美しい自然を堪能していたところでした。

主要な撮影地はイタリアのポルトフィーノにあるカステッロ・ブラウンで、原作者エリザベス・フォン・アルニムが1920年代に滞在した場所とのこと。
「サン・サルヴァトーレ」のモデルとなっており、緑豊かな庭園や色鮮やかな植物がとても素晴らしいです。本当に天国のようです。

キャロラインは前日に到着しており、フィッシャー夫人はすでに朝食をとっているところでした。
優雅な二人はどちらもイタリア語を話し、フィッシャー夫人はキャロラインのほうが上手で、自分のイタリア語はダンテから学んだ古い英語だ説明します。

パンをほおばりながら席を立つロッティ。ロンドンでこのようなマナーをすることはないでしょう。誰よりも早く、イタリアの自然の中で彼女のリズムに変化したようです。ローズはフィッシャー夫人に気を遣い、ゲストであるはずのフィッシャー夫人はまるで自分が招待したかのように振る舞います。そんな夫人の態度を気にするローズに対し、「ここは天国だから気にする必要はなく、何かをしなければならないこともない」とロッティはいいます。

ランチの時間にはきちんと席に着くフィッシャー夫人。イタリアなのでスパゲティが出されており、当時のイギリス人は慣れていないのか、フォークとナイフでとても食べづらそうです笑。ロッティとローズは急いで席に向かいますが、キャロラインは皆から距離を置きたいし放っておいてほしい様子。ローズが心配するものの、ロッティは「彼女は放っておいてほしいのよ」と理解を示します。ロンドンではしばしば言葉が乱れがちなロッティが、まず最初にこの自然の中で癒されているようです。彼女の楽観的なところが滞在者たちの変革を促すのです。

フィッシャー夫人は、二つあるリビングルームのうち一つを一人で使いたいと主張します。ローズはいら立ちますが、ロッティは「夫人はすぐに皆と共有したくなるだろう」と放っておきます。そして、ロッティは夫メラーシュを呼ぶための手紙を書きます。夫たちから離れたくてイタリアまで来たというのに、ロッティの行動が理解できないローズ。ロッティは「こんな天国を独り占めできないし、彼を置いてきたのは自分勝手だった」というのです。そしてローズにも自分の夫に手紙を書くよう勧めます。

城や美しい自然、満開の花々、海の景色が彼女たちを癒し始めます。フィッシャー夫人の心が少し軽くなり杖を使わずに歩けるように。
ローズは「自分はいつも夫を飽きさせるから、手紙を書いても来ないだろう」と一人泣いてしまいます。

メラーシュとブリッグス氏の到着

ロッティの夫メラーシュがサン・サルヴァトーレに到着します。
彼はロッティの手紙から、自分の人脈づくりのためにキャロラインと知り合っておきたいと意気込んでいます。それを聞いたロッティは少しがっかりするものの、じきにメラーシュも変わるから大丈夫だと楽観的です。家政婦が持ってきた請求書の束についてフィッシャー夫人とキャロラインの間で揉めそうな雰囲気になると、メラーシュは間に入りその場を収めます。キャロラインは彼の冷静で媚びない態度を気に入ります。

そして、ついにローズは夫のフレデリックに手紙を書くことに。彼女も自分なりにイタリアの美しい自然のリズムに同調していきます。

メラーシュもイタリアの魔法にかかってしまったのか、もはやロンドンでの彼ではなくなっており、どうしてもっと早くロッティの魅力に気づけなかったのかと語ります。

ここに旅の途中で立ち寄ったブリッグ氏がサン・サルヴァトーレに加わります。ロンドンで会ったときから彼はローズを気に入っていた様子。オーボエが趣味のブリッグス氏は、エルガーの「Chanson de Matin」(ショナン・ド・マタン)を演奏し、その音色は城や周囲の自然に響き渡り、滞在者全員にも共鳴しているようです。

滞在者たちは城の庭でピクニックをしてゆったりした時間を楽しみます。フィッシャー夫人はジョークまで言うようになり、表情も朗らかになっているのが分かります。キャロラインはブリッグス氏とここで初めて会い、「また男だわ」と心の中でうんざりするものの、ブリッグ氏はキャロラインにはさほど興味がなく、むしろローズに関心があることを知って驚きます。

ブリッグ氏は近くにある夾竹桃(キョウチクトウ)の木の話をします。彼によると、氏の父が新たに木を植えるための目印として桜材の歩行杖をその場所に差して放っておいたところ、杖から枝が延びて現在の木になったというのです。

フレデリックの到着

しばらくすると、ローズの夫フレデリックが到着します。
残念ながら、彼はローズの手紙に反応したのではなく、キャロラインを追って来たようです。サン・サルヴァトーレでまったく男性にまとわりつかれないのを寂しいと思い始めたのか、キャロラインはフレデリックの到着を少し喜んでいるようです。

ディナーの時間を待つ間、フレデリックは空いていた部屋でうたた寝をしてしまい、そこにローズが現れます。ローズはフレデリックが手紙を受け取ってイタリアまでやって来たのだと思い込みます。フレデリックが目を覚ますと、ローズは情熱的にキスをします。ローズももはやロンドンにいたころの彼女ではなく、二人の間の愛が再燃します。ローズが未亡人だと思い込んでいたブリッグス氏はがっかりします。でも、ローズもフレデリックが到着するまではブリッグス氏のことを多少なりとも気にかけていたのではと思います。

キャロラインが遅れてダイニングルームにやって来ると、フレデリックは念を押すように自分の「本名」を繰り返し、ローズの夫であることを告げます。察したキャロラインは、気を利かせてフレデリックを知らないふりをします。ディナーが終わると、ローズは愛に包まれて幸せそうに月明かりの下を歩きます。キャロラインはそんなローズを美しいと感じ、泣いてしまいます。美しさとは外見ではなく、愛を心から感じることができる状態であることを悟ったのかもしれません。

キャロラインはブリッグ氏がローズが未亡人ではなかったことをがっかりしているのではないかとそれとなく尋ねます。するとブリッグ氏は目が悪いせいもあり、いつも見た目よりもその人の内面を重視しており、ローズの声からとても素敵な人だと思っていたと語ります。内面が重要だというブリッグス氏の言葉にキャロラインは予期せず心を動かされ、そんな彼に惹かれます。

一方、自室として使っていたリビングルームに一人座るフィッシャー夫人。過去の作家の本は素晴らしいものではあるけれど、それよりも今を生きたいと感じ始めます。ロッティとメラーシュがやって来て、ローズもキャロラインもペアになって月明かりの庭を楽しんでいると話すと、フィッシャー夫人は幸せなペアは恋人や配偶者だけではないといいます。ロッティはフィッシャー夫人の手を取り、「私たちは素晴らしい友人としてペアになりましょう」と優しく語りかけるのです

皆が優しくなり、軽くなり、心から愛に溢れた言葉を発しているようです。サン・サルバトーレの美しい建物と豊かな自然がロッティたちの中に潜んでいた愛を発動させたのかもしれません。

サン・サルヴァトーレを去る日

そして幸せになった一同がそろってサン・サルヴァトーレを去る日。
ここは美しい場所、とても素敵な時間だったと全員が名残惜しそうにしながらも、これからの人生も楽しいものであると知っているかのように、自然の中の小道を軽やかに歩いていきます。

歩行杖なしに歩くフィッシャー夫人は、ロンドンから持ってきた杖を道端に差して颯爽と去っていきます。
しばらくすると、その杖には美しい枝が延び始めているのです・・・。

おわりに

Enchanted April」は、イタリアの美しい景色や色とりどりの大自然が元気をくれる、とても素敵なストーリーです。旅っていいですねー。

城の内部は、別のロケーションで撮影されたそうですが、あちこちが素敵で見ごたえがあります。

ミランダ・リチャードソンはイギリスのシットコム「ブラックアダーII」でコミカルなエリザベス1世を演じています。

また、この頃のフレデリック役のジム・ブロードベントは若く、ローズと情熱的にキスをする姿から「ハリー・ポッター」シリーズ(スラグホーン先生)の姿がどうもリンクしません笑。彼はイギリスのシットコム「ブラックアダー」シリーズにも何度か出演しており、イタリアの通訳者やアルバート公などコミカルな演技を見せています。

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