From Time to Time(タイムトラベル)のあらすじ:アレックス・エテル、マギー・スミス

「From Time to Time」は、2009年に公開されたイギリスのファンタジー映画です。

舞台は、ケンブリッジシャー州ヘミングフォード・グレイ村にある邸宅「マナーハウス」。
オープニングに「Lucy M. Boston」と表示され、台詞に「Green Knowe(グリーン・ノウ)」という言葉が出てきたので「ボストン夫人」の原作だと気づきました。

ボストン夫人は「グリーン・ノウ」シリーズとして6冊の子供向け小説を発表しています(1954~1976年出版)。また、パッチワーク作家としても知られています(ボストン夫人のパッチワーク)。

グリーン・ノウという古い屋敷は、当時ボストン夫人が実際に住んでいた家で、小説に登場するアイテムの多くが屋敷内にあるそうです。

イギリスはおいしい」の著者である林望先生は、1990年代にイギリス滞在中、このボストン夫人のお宅に2年ほど下宿されていました。林先生の大ファンなので記憶に残っていました。(「イギリスはおいしい」はとても面白いのでおすすめです)。

「From Time to Time」は「グリーンノウの煙突(The Chimneys of Green Knowe:1958)」が原作で、歴史、ミステリー、ファンタジーが融合された心温まる作品です。

目次

「From Time to Time」のあらすじ

第二次世界大戦末期のイギリス。13歳の少年トリー(アレックス・エテル)の父親は兵士としてフランスに出征し、消息不明となっていました。母親は父の手がかりを探すためロンドンに滞在することとなり、トリーは安全のため、一時的に田舎にある父方のオールドノウ夫人・オールドノウ夫人(マギー・スミス)の屋敷「グリーン・ノウ」で過ごすことに。

グリーン・ノウは広大な土地に建つ歴史ある美しい建物。戦時中でしばらく徴用されていたものの、ちょうど使用期間が終了したところで、トリーが到着したときには兵士たちは撤収していました。

オールドノウ夫人が心配そうに父の写真を見つめているので、トリーは「生きているから大丈夫」と声をかけます。駅まで迎えに来た庭師のボギス氏や、家政婦のトゥイーディー夫人にも「行方不明なだけで、きっと生きている」というのです。

オールドノウ夫人が母について尋ねると、トリーはオールドノウ夫人が母をあまり好いていないことを知っていると答えます。夫人は否定しますが、トリーは、オールドノウ夫人が父へ宛てた手紙に「普通の民間人だから好きではない」と書いていたと指摘します。手紙は自分で見つけたと明かしました。

何年も屋敷を訪れていなかったトリーは客間に並ぶ多くの肖像画について尋ねます。オールドノウ夫人はそれが一族の先祖であると説明します。そして、戦時中ということもあり、屋敷の維持が難しく、売却を考えざるを得ないかもしれないと話します。

グリーン・ノウには広い庭やたくさんの部屋、ミュージックホール、小さな礼拝堂、昔のローマ風呂など、今ではあまり使われていない古風な設備も多く残っています。手入れが行き届かず荒れている場所もあります(私だったら怖くて一人で歩き回れない)笑。

トリーは、屋敷を絶対に売ってはいけないと強く訴えますが、夫人は先祖のマライア・オールドノウが浪費家だったために家計が傾き、以来代々が苦労してきたのだと語ります。客間にはマライアの肖像も飾られていました。マライア・オールドノウはオランダ出身で、キャプテン・オールドノウとインドで出会い、その後イギリスに移り住んだ人物です。彼女のために建てられた別棟は火災で焼失してしまったそうです。
オールドノウ夫人は、屋敷を守るためにできることがあるならそうすると話します。

その夜、トリーはダイニングルーム横の古い扉を開けてみると、レンガで塞がれた壁を発見します。また、2階へ上がると、泣き声が聞こえ(お約束のように笑)、その部屋で古い箱を見つけます。家政婦のトゥイーディー夫人は、それがマライアのジュエリーボックスだろうと話します。マライアの唯一の資産は、宝石商の父から譲られた宝石類でしたが、すべて盗まれてしまったといいます。

マライアとキャプテンにはセフトンとスーザンという子どもがいました。トリーたちはセフトンの子孫にあたります。セフトンは甘やかされて育ち、スーザンはその反対だったといいます。塞がれていたドアは、かつてマライアの別棟へ通じていたものでした。

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少女の幽霊と遭遇する

19世紀のグリーン・ノウでは、オールドノウ家の家族と執事のカクストン、使用人たちがキャプテン・オールドノウの帰宅を迎えます。彼の家族は、美しい妻マライア、わがままで甘やかされて育った兄セフトン、そして盲目の妹スーザンです。

キャプテンはマライアとセフトンに土産を渡しますが、2人の反応は少し冷めています。そしてスーザンには、黒人の少年ジェイコブを連れてきます。ジェイコブは奴隷として売られるのを逃れて密航していた少年で、キャプテンが保護してきたのでした。

黒人の少年を見て周囲が戸惑う中、スーザンはジェイコブの手を取り、「庭を一緒に歩いて、見えるものを教えて」と嬉しそうに話しかけます。2人はすぐに仲良くなり、ジェイコブのおかげでスーザンはより自由になり、行動範囲が広がります。木登りまでするようになり、その様子を見たキャプテン・オールドノウが喜びます。

グリーン・ノウに到着した晩、トリーは自室で少女のゴーストに出会います。驚きで声も出ないトリーに、少女は「そこにいるのはセフトン?」と尋ねます。そこへ家政婦が現れ、「スーザン、何してるの?階段から落ちたら危ないわ」と声をかけて連れて行きます。

トリーは急いで階下のオールドノウ夫人のもとへ行き、青ざめながらゴーストを見たことを伝えます。夫人は驚かず、「誰を見たの?」と聞きます。「スーザン」と答えるトリーに、「あれだけ質問していたらそうなるわよね」と、驚きません。何か知っているような様子です。

翌日、トリーが木に登っていると、少女の笑い声が聞こえてきます。木のくぼみには古びた拍車(乗馬で使う馬具)が隠されていて、オールドノウ夫人はそれがセフトンのものだといい、もう片方をトリーに見せてくれます。

フレッドに渡した懐中電灯

ジェイコブの存在が気に入らないセフトンは、彼を屋敷から追い出すよう執事のカクストンに頼みます。不満があるたびにカクストンに訴えるセフトンに対し、カクストンも「キャプテンが不在の間はセフトンがこの家の主だ」と使用人に言い聞かせます。

ある日、セフトンは「撃った鳥が煙突に入り込んだ」からと、ジェイコブに取ってくるよう命じます。スーザンが激しく反対し、使用人たちも非難の視線を送る中、ジェイコブは「大丈夫だから」とスーザンを安心させ、暖炉の中に入って煙突を登ります。しかし、セフトンは意地悪にも使用人に火をつけるよう指示します。ジェイコブがなかなか戻らないため焦ったのか、「冗談に決まってるじゃないか」と火を消すよう命じます。自分の手を汚さないところが卑怯ですねー。

ジェイコブは煙にむせながらも煙突の中を進み、他の部屋の暖炉へとつながる通路を見つけます。セフトンの部屋にたどり着くと、彼が自慢していた拍車(父からの土産ではない)の片方を見つけてポケットにしまいます。そして自室で心配そうにしていたスーザンを見つけ、「セフトンにちょっとしたたずらをしよう」と持ちかけます。

スーザンはマライアを連れてセフトンと使用人たちがいる戻ります。マライアは「ジェイコブが怪我をしたらキャプテンにどう説明するの」とセフトンを叱ります。すると、ちょうどジェイコブが暖炉から現れ、持ち帰った鳥をさしだします。でも、それはなんとニワトリ。マライアは「最近の紳士はニワトリを撃つのね」と皮肉を言って皆を笑わせ、セフトンは気まずい思いをします。

ジェイコブが持ってきたニワトリは、屋敷の農場や庭で飼われていたもののようです。セフトンは、貴族が狩りで仕留めるような鳥(キジなど)を撃ったから、それを取ってこいと命じました(実際に撃ったのかは不明で、単にジェイコブを困らせたかったのかも)。ジェイコブは、身近で簡単に捕まえられるニワトリを持ち帰り、セフトンの嘘や見栄を皮肉る形となりました。

一方、トリーは自分が現代と19世紀初頭の屋敷を行き来できることに気づきます。その時代にいる特定の人々にはトリーの姿が見えて会話もできますが、それ以外の人はトリーを通り抜けるのです。

トリーは、庭にいたスーザンとジェイコブから、フレッド(ボギス氏の先祖)がウサギを捕まえたことで密猟の疑いで捕えられたと知ります。これは、フレッドがジェイコブの味方をしたことへの、セフトンとカクストンの仕返しと考えられます。

「キャプテンがいればこんなことにはならない、このままだとフレッドは奴隷船に売られてしまうかもしれない」と心配する2人。トリーはキッチンにいたメイドのローズから食料をもらい、屋敷の庭にあるバス(昔のローマ風呂)の建物に隠れていたフレッドに届けます。暗い中でも過ごせるよう、トリーは持っていた懐中電灯も渡します。

「電池が切れるから使いすぎないように」と言うトリーに、「電池って何?」と、もちろん聞き返すフレッド笑。

トリーが外に出ると、そこは現代に戻っており、オールドノウ夫人は「屋敷にあった古い懐中電灯の謎がやっと解けたわ」と、戸棚から古い懐中電灯をとってトリーに見せました。

帰還したキャプテンは、フレッドの件でセフトンを叱責し、カクストンを解雇します。マライアは、2日後に地元の名士たちが宿泊に来る予定があるから執事の不在は困ると猛反対しますが、キャプテンは聞き入れません。

「こんな辺鄙な場所で、一人で人間関係を築かなくてはいけないのに」と愚痴が止まらないマライア。キャプテンは、彼女がギャンブルや社交に明け暮れるのは健全ではなく、自分たちの結婚自体が誤りだったと語るのでした。

パーティでの火災

キャプテンが再び航海に出たあとも、カクストンは屋敷に残り、マライアと共に客人を迎える準備を進めていました。客人が到着し、マライアが夕食のために着替えているとき、彼女は自分の部屋の宝石類がすべて盗まれていることに気づきます。

それでもマライアはパーティを続けました。客人たちは長い旅路の末に到着し、もともと宿泊予定だったため屋敷に滞在します。夕食会の席で、カクストンが「奥様、残念ですが屋敷が火事です」とマライアを驚かせます。

客人たちは慌てて外に逃げ出し、使用人たちは消火作業をしながら貴重品を次々と運び出します。マライアはフェルメールの絵画や他の重要な品が無事か心配し、セフトンもダイニングの貴重な食器を案じています。ジェイコブに指摘されるまで、マライアはスーザンがまだ避難していないことに気づきませんでした。カクストンに話しかけるも、彼は荷物を持って立ち去ってしまいます。

ジェイコブは暖炉の煙突を登って見つけた通路を通り、スーザンを助けに向かいます。無事戻ったスーザンをマライアは抱きしめ、ジェイコブに心から感謝を伝えます。その瞬間、雨が降り始めました。
トリーはオールドノウ夫人から「スーザンを救ったジェイコブがその後マライアに大切にされた」と聞き、笑顔になります。

マライアは失った宝石を取り戻すため、近くのジプシーのコミュニティに助言を求めました。占い師は、その夜いた全員の髪の毛を集め、それを使って屋敷を刺繍するように告げます。それでも宝石は見つからず、カクストンが盗んだのかも分からないままでした。

トリーとオールドノウ夫人は、先祖の話やトリーの体験を語り合いながら少しずつ心を通わせていきます。そこへ「明日屋敷に行く」というトリーの母からの電報が届き、ふたりは緊張します。

トリーは「母が来たら優しくしてあげてほしい」と夫人に頼みます。夫人は、もちろんそうするしこれまでの態度を恥じていると言いました。
「僕たち3人全員が父のことを大切に思っている」と、母の立場も祖母の立場も公平に尊重するトリー。おそらく彼の母も良い人なのだろうと思わせます。

その夜、ベッドの中でトリーは、昼間にボギス氏から聞いたミュージックルームの様子や近くの煙突、さらに、マライアの刺繍した屋敷のことを思い返していました。
そして、ふと何かに気づきます・・・。

ネタバレしない方が良いかと思いますのでここまでで・・・。

おわりに

「From Time to Time」は、ファンタジーやタイムトラベルに興味のある方、家族向けの作品を探している方、歴史に関心のある方、そしてルーシー・M・ボストンのファンにおすすめです。

フレッドは敷地内でウサギを捕ったことで奴隷船に送られそうになります。一方、1940年代のその子孫であるボギス氏は、戦時中の食料不足を補うためにウサギを捕まえ、キッチンにいつも届けてくれていました。オールドノウ夫人は「とても助かるけれど、ウサギに変身しそう」と苦笑いしながら口にします。

また、マライアの宝石を身につけて「似合うかしら」とトリーに尋ねるオールドノウ夫人の姿も可愛いです。

キャストについて:マギー・スミスは説明不要の世界的な女優。トリー役のアレックス・エテルは「クランフォード」でのハリー役、キャプテン・オールドノウ扮するヒュー・ボネヴィルは、私が最近観たものでは「パディントン」シリーズでブラウン氏として登場しました。

私が所持しているDVDはイギリスのアマゾンで購入したもので、英語字幕がついています。

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