Gosford Park(ゴスフォード・パーク)ダウントン・アビーのモデル、アンサンブル

「Gosford Park(ゴスフォード・パーク)」は、2001年公開の映画(イギリス、アメリカ、イタリアの合作)。

ゴスフォード・パークはイギリスの人気ドラマ「ダウントン・アビー」のモデルとなった映画で、アカデミー脚本賞を受賞。上流階級と使用人階級という二つの世界を巧みに描き、ユーモアと優しさ、同時に悲劇性もあり、ダウントン・アビーとアガサ・クリスティが掛け合わさったような映画だと思います。

1932年の英国郊外の豪邸「ゴスフォード・パーク」で、貴族たちが週末の射撃パーティーを楽しむ中、当主ウィリアム卿の殺害事件が発生。上流階級の客人と使用人たちが抱える秘密や欲望、階級対立、不倫、そして過去の因縁も明らかになっていきます。

脚本はジュリアン・フェローズ。他には「悪女(Vanity Fair)」「From Time to Time」「ヴィクトリア女王 世紀の愛」「ダウントン・アビー」シリーズ、「Belgravia」など多数手がけています。「The Monarch of the Glen」ではキルウィリー卿役で出演しています。

共同原案のボブ・バラバンはワイズマン氏として登場します。

キャストは、アイリーン・アトキンス、アラン・ベイツ、エミリー・ワトソン、クライヴ・オーウェン、クリスティン・スコット・トーマス、クローディ・ブラックリー、ケリー・マクドナルド、ジェラルディン・サマーヴィル、ジェレミー・ノーサム、スティーブン・フライ、ソフィー・トンプソン、チャールズ・ダンス、デレク・ジャコビ、トム・ホランダー、ヘレン・ミレン、ボブ・バラバン、マイケル・ガンボン、マギー・スミス、ライアン・フィリップ、ローレンス・フォックスと豪華。

画像のオープニングタイトルの背景は、ひどい雨の中、ゴスフォード・パークへ向かう馬車に乗り込んだトレンサム伯爵夫人を送り出す執事の姿。(画像は引用目的で使用しています)

アイリーン・アトキンス、ボブ・バラバン、アラン・ベイツ、チャールズ・ダンス、スティーヴン・フライ、マイケル・ガンボン、リチャード・E・グラント、デレク・ジャコビ、ケリー・マクドナルド、ヘレン・ミレン、ジェレミー・ノーサム、クライヴ・オーウェン、ライアン・フィリップ、マギー・スミス、クリスティン・スコット・トーマス、エミリー・ワトソン
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目次

Gosford Park(ゴスフォード・パーク)あらすじ

1932年秋の週末、英国の上流階級の豪邸「ゴスフォード・パーク」では、ウィリアム・マッコードル卿(マイケル・ガンボン)と妻シルヴィア(クリスティン・スコット・トーマス)が狩猟会と晩餐のパーティを開催。招待客には親族や貴族のほか、映画スターのアイヴァー・ノヴェロ、アメリカ人プロデューサーのモリス・ワイスマンらが集まります。屋敷には多くの使用人が仕え、来客それぞれに従者や侍女が同行します。

大邸宅を舞台にしたアンサンブルなので登場人物が多く、邸宅内でさまざまな人間関係が交差します。一度観ただけでは理解しにくい部分がありますが、人物を整理して再視聴すると深く楽しめます(観直す価値ありです)。伏線となる登場人物の微妙な表情や意味深なセリフ、配置されたアイテムが回収されていく点も見どころです。

トレンサム伯爵夫人(マギー・スミス)に仕える新米侍女メアリー(ケリー・マクドナルド)は、夫人に同行し、初めてゴスフォード・パークに滞在。そこで彼女は使用人たちと共に働き、使用人社会の慣習や人間関係、上流階級の複雑な関係性を目の当たりにします。ケリー・マクドナルドが初々しくスコットランド訛りも魅力です。マギー・スミスの貴族役はいつもいながら素晴らしいです。

「上流」と「使用人」の階級を区別する「upstairs/downstairs」という表現は、使用人たちが地下(downstairs)で働き、上流階級が階上(upstairs)で暮らすことから来ています。イギリスの1970年代シットコム「Upstairs, Downstairs」が由来で、2010年にはその続編が放送されました(脚本は「クランフォード」のハイディ・トーマス)。

客人たちの到着

屋敷の入り口ではウィリアム卿とシルヴィアが客人を迎え、アフタヌーン・ティーが振る舞われます。
(マイケル・ガンボンは「ハリー・ポッター」のダンブルドア役で有名、「クランフォード」や「妻たちと娘たち」にも登場しています。クリスティン・スコット・トーマスは「フォー・ウェディング」「イングリッシュ・ペイシェント」「キーピング・ママ」のグロリア役など)

トレンサム夫人はシルヴィアの叔母で、ウィリアム卿に金銭的に依存し、到着早々悪天候の道中に不平を言い、シルヴィアと共にウィリアム卿の子犬の陰口を叩きます。

ウィリアム卿は、ストックブリッジ卿の妻でシルヴィアの妹のルイーザ(ジェラルディン・サマーヴィル)を好んでおり、ウィリアム卿の図書室で二人きりになると、従者プロバート(デレク・ジャコビ)が気を遣って部屋を出るあたり、何かある様子。晩餐の席順ではルイーザを隣に望み、シルヴィアに不満を言うのです。とはいえシルヴィアもストックブリッジ卿(チャールズ・ダンス)に接近します。

チャールズ・ダンスは「ラヴェンダーの咲く庭で」の監督・脚本・製作総指揮を手がけています。ルイーザ役のジェラルディン・サマーヴィルは「ハリー・ポッター」シリーズのハリーの母リリー役。

資金難のアンソニー・メレディス少佐(トム・ホランダー)と妻ラヴィニア(ナターシャ・ワイトマン、シルヴィアの末妹)はウィリアム卿との事業で打開を目指します。ラヴィニアはシルヴィアの末妹。

フレディ・ネスビット卿(ジェームズ・ウィルビー)と妻メイベル(クローディ・ブラックリー)も同じく資金難。フレディはウィリアム卿の娘イゾベル(カミラ・ラザフォード)に金銭援助の口利きを要求し、二人の過去の関係暴露で半ば脅迫めかします。イゾベルが気に入っているルパート・スタンディッシュ卿(ローレンス・フォックス)は友人ブロンド氏を伴い遅れて到着予定。ルパートはイゾベルとの結婚を期待しています。

ウィリアム卿の従弟でイギリスの映画スターアイヴァー・ノヴェロ(ジェレミー・ノーサム)も到着します。彼は、アメリカ人映画監督モリス・ワイズマン(ボブ・バラバン)とその従者を連れており、ワイズマン氏は到着後すぐにカリフォルニアへの国際電話をしたいと要求し、映画製作のことしか頭にない様子。

客人と従者が到着する中、家政婦長ウィルソン夫人(ヘレン・ミレン)は、各所に指示を出していきます。従者たちは荷物や銃にラベルを付け所定の場所へ運び、宝飾品は金庫室へ。早い段階で金庫室に示唆的に「poison(毒)」の瓶があり、「poison」の瓶は屋敷内のあちこちで登場します。

メアリーは「トレンサム嬢」と呼ばれるので訂正しようするものの、訪問従者は主人の名で呼ばれる慣習だと知ります。メイド長エルシー(エミリー・ワトソン)の部屋に泊まることになり、エルシーはトレンサム夫人がメアリーを安く雇ったと推測したり、シルヴィアとその父カートン伯爵を辛辣に評価します。

ストックブリッジ卿の従者パークス(クライヴ・オーウェン)も慣習を知らず自分の名前を名乗ると、ウィルソン夫人が「ノーリッジのパークス氏は親戚か」と確認します。

階上(貴族)と階下(使用人)

興味深いのは、1930年代の貴族と使用人の日常がそれぞれの視点で描かれ、二層社会の距離や依存関係が浮き彫りになるところ。貴族たちの華やかなパーティや狩り、晩餐、豪華な室内、階下の使用人たちといったコントラストが際立ちます。当時の階級制度や礼儀作法、身分差、貴族の虚栄心や没落の兆しも垣間見えます。

貴族たちは礼儀正しい会話や社交的な振る舞い、表面的な優雅さを見せ、個人的な問題は直接話さない傾向。しかし裏では、金銭依存や虚栄心、没落への不安、互いの悪口や皮肉があり、冷たさや偽善も見えます。使用人たちは表では厳格な階級秩序を守り、忠実に奉仕し、主人の前では控えめで「見えない存在」として振る舞います。しかし裏では、ゴシップを共有し、主人たちの秘密や弱点を詳しく知り、文句や皮肉を言い合い、主人たちより多くの情報を持っていたりします。

階下(使用人たち)

使用人たちは階上の貴族たちのゴシップで活気づき、俳優のアイヴァー・ノヴェロの世話係になることを期待する者もいます。彼らはトレンサム夫人がウィリアム卿に手当の増額を求めるだろうと予想し、ラヴィニアの夫アンソニーは人はいいのに運に恵まれない、ラヴィニアよりも姉たち(シルヴィアとルイーザ)が良い条件で結婚した、父カートン卿もウィリアム卿の援助を受けていたため娘を嫁がせたかった、貴族たちは皆ウィリアム卿に金銭的に依存し自立できない等と噂します。

侍女を連れていないメイベルの世話を任されたエルシーは、メイベルがドレス一着しか持たず、彼女の衣類が安物で扱いにくいことに不満を漏らす一方で、甲斐性のない夫フレディに耐えていることに同情も示します。

映画監督ワイズマン氏の従者デントン氏(ライアン・フィリップ)も主人の名前で呼ばれる慣習を知り、キッチンで主人がベジタリアンだと伝えると、料理長クロフト夫人(アイリーン・アトキンス)は狩猟パーティーなのに肉を食べないのかと驚きます。デントン氏は屋敷内をうろつき、ダイニングでテーブルセッティング中のジョージ(リチャード・E・グラント)に追い返されます。ジョージとアーサー(ジェレミー・スウィフト)はデントン氏の態度や話し方から普通の従者ではないと推測。
スコットランド出身のメアリーも、デントン氏のアクセントからスコットランド出身でないことに気づいていました。

階上で晩餐が始まると、階下では使用人たちの手早い夕食が始まります。執事ジェニングス氏(アラン・ベイツ)が上座に座り、席順は階上の階級順と同じに。メアリーはジェニングス氏の隣の席を遠慮するものの、時間がないから早く席に着くように促されます。クロフト夫人は別室でメイドたちと食事をとり、ウィルソン夫人と対立関係にあるといいます。デントン氏が「親も同様の職業の人はいるか」と尋ねると数人が手を挙げ、パークス氏は孤児院育ちで両親に会ったことがないと答えます。

すると、ワイズマン氏がベジタリアンだと知り慌てて相談に降りてきたシルヴィア。ウィルソン夫人はデントン氏から既に聞いて対処していると彼女を安心させます。デントン氏に礼を言った瞬間のシルヴィアは、彼に惹かれた様子。

キッチンでの作業終わりに使用人たちはナイフが一本足りないことに不思議がりながらも作業を続けます。クロフト夫人はパークス氏の年齢を他の使用人に尋ねます。

トレンサム夫人からシャツの洗濯を命じられたメアリーが夜遅くアイロン室に降りると、使用人のバーサが現れます。そして洗濯を終えてメアリーが部屋に戻ろうとすると、ウィリアム卿が現れてウィルソン夫人に用事を伝えます。そこからメアリーは何かを察するのでした。

階上(貴族と名士)

アフタヌーン・ティーの席で、俳優のノヴェロ氏と話せて喜ぶメイベルに対し、トレンサム夫人は映画関係者を軽視し、ノヴェロ氏が出演した作品名「The Lodger」を「The Dodger」と間違え、本人の前で酷評します。部屋に戻った夫人は客の雑多さを不平し、特にフレディの身分の低い妻メイベルのせいで女性同士の会話が面倒だと漏らします。夫人がメアリーに使用人側の噂を尋ねると、メアリーは馬鹿正直に「ウィリアム卿の結婚相手はシルヴィアでもルイーザでもよかった」という噂だと話し、夫人は「それはカードで決めたのよ」と笑います。

アイヴァー・ノヴェロは、20世紀前半に活躍したイギリス作曲家・俳優・劇作家。ヒッチコック監督の無声映画「下宿人(The Lodger)」で広く知られました。トレンサム夫人は「The Lodger」を「The dodger(ペテン師)」と間違えたのです笑。

従者のデントン氏はワイズマン氏が必要だろうとアフタヌーン・ティーの部屋に入るも、場違いで追い返されます。貴族出身でないメイベルは侍女がいないことをトレンサム夫人に気軽に話し、フレディに連れ出されて人前で言うなと叱られます。メイベルはフレディとイゾベルの間に何かあると疑っており、フレディは怒鳴って否定します。

ウィリアム卿は手当て増額を求めるトレンサム夫人に苛立ち、支払いを止めてもいいと言い始めます。シルヴィアが生涯支払いの約束だったと指摘すると、彼はまさかと一蹴。さらにアンソニーとの事業からも手を引き、ルイーザの助言に従い彼に話すのは後のことになるし彼が窮地に陥っても構わないと冷淡な態度を見せます。

晩餐が近づくとドローイングルームに客人が集まり、ノヴェロ氏が皆のためにピアノの演奏を始めます。ワイズマン氏が「どうやってこれらの貴族たちに我慢できるのか」と尋ねると、ノヴェロ氏は「彼らの物まねで生計を立てているから」と答えるのです。(上流階級の家では、夕食前にドローイングルームに客人が集まり、会話や飲み物で時間を過ごし、ホストの合図でダイニングルームへ移動)

晩餐の席でトレンサム夫人が夕食後に二人きりで話したいと申し出るも、ウィリアム卿は客を放っておけないとわざと拒みます。シルヴィアはウィリアム卿が戦争で戦わなかったことを指摘し、ストックブリッジ卿の戦功に触れますが、ストックブリッジ卿は謙虚に振る舞います。ルパートとブランド氏の到着を聞き挨拶に行きたいというイゾベルに、シルヴィアはその必要はないと止めます。

プロジェクト中止の件を知ったためか、晩餐後のアンソニーは部屋で荒れ悪態をつきます。使用人たちは彼を良い人だと言っていたはずでしたが・・・。

就寝前のワイズマン氏の部屋を訪れたデントン氏の態度は使用人のそれではなく、映画製作の話ばかりをするワイズマン氏に「また後で会えるか」と尋ねられれば、デントン氏はスコットランド訛りで丁寧に断り部屋を出て行きます。二人の間には何らかの関係がある様子。

デントン氏が向かったのはシルヴィアの部屋。退屈だというシルヴィアを楽しませると提案し、彼女はそれを受け入れます。

2日目の狩猟会と晩餐

トレンサム夫人はメアリーが洗ったシャツを結局着ないと言い、ゴスフォード・パークの朝食はいつも美味しいと喜びます。夫人はよく「お腹が空いた」と口にします。

デントン氏がワイズマン氏の射撃に同行すると聞き、ジョージは理由を問いただします。プロバート氏はそういうこともあるだろうと、ジョージの振る舞いを詫びます。

イゾベルは、部屋に来たエルシーに、ウィリアム卿にフレディの就職の口利きを頼んだのに明確な返事が得られないと不満を述べ、代わりにエルシーから伝えて欲しいといいます。エルシーは自分に何ができるのかと答えます。

外出の準備をするシルヴィア姉妹とトレンサム夫人。ラヴィニアは自分たちの絶望的な状況に誰も気にしていないと不満を述べ、他の女性たちは仕方がないという態度。トレンサム夫人はまた「お腹が空いた」と言い、今日のメイベルの服装もひどいだろうと馬鹿にします。

狩猟会で男性たちが鳥を撃ち落とす中、狩りをしないワイズマン氏、ノヴェロ氏、デントン氏は端の方で場違いなたたずまい。ピアノの前であれほど輝いているノヴェロ氏も狩りの場ではまったくオーラがありません笑。
すると、ウィリアム卿が散弾を受けて軽傷を負い、誰が撃ったのかと激怒。どれほどひどい体験だったかを熱弁し、周囲は社交辞令的に心配します。そこにプロジェクト中止で焦っているアンソニーが詰め寄ると、ただでさえ機嫌の悪いウィリアム卿は「仕事と慈善事業は違う」と叱責します。

狩猟で主人たちが出払っている間、パークス氏の部屋を訪れるウィルソン夫人。本人が在室していたので、とっさに点検中だと言い繕います。彼女は彼のベッドサイドテーブルに置かれた写真を見て何かに気づきます。

ウィリアム卿について好意的に語るエルシーに、メアリーは昨晩のアイロン室で使用人のバーサーとウィリアム卿が一緒だったはずだと推測します。エルシーはそれを何度か否定します。

晩餐で当たり障りのない会話が進む中、アンソニーが「これから破産するから忙しくなる」と皮肉を言います。シルヴィアから「ウィリアムを刺激するな」とくぎを刺されたトレンサム夫人は空気を察し、晩餐後のカードゲームを提案。カード運がないから嫌だというルイーザに同調するウィリアム卿。結婚相手が逆ならよかったのでは・・・?

ワイズマン氏が、次の映画は田舎の邸宅での射撃パーティー中に起こる殺人事件で、犯人は明かせないと語ると、誰も見ないのだから教えてもいいじゃないというトレンサム夫人笑。映画に興味がないというウィリアム卿に、刺激するなと言った張本人のシルヴィアが、彼の関心は金と銃だけだと批判します。そこへ給仕中のエルシーが、ウィリアム卿を擁護する発言をしてしまい、二人の愛人関係が露呈してしまいます。ジョージは内心「やっちまったな」と思っているはずで笑、客人たちも同様のようです。

ウィリアム卿は図書室にこもってしまい、晩餐後のドローイングルームでは、ノヴェロ氏が場を和ませようとピアノを弾きながら「The Land of Might-Have-Been」を披露(この曲は、実在したアイヴァー・ノヴェロの代表作の一つ)。ノヴェロ氏に扮するジェレミー・ノーサムの歌声が優しくて素敵です。客人たち、特にメイベルを魅了しますが、トレンサム夫人は聞きたくない様子。そして、何人かの客人と使用人が同じタイミングで意味深な動きを見せます。

使用人たちはエルシーは解雇されるだろうと噂しながらも手を休め、隣室や廊下などからノヴェロ氏の演奏を楽しみます。映画は知っているが歌声は初めてだと喜ぶ者や、音楽に合わせて踊る者も(振り付けが1930年代で可愛い笑)。

そして事件

図書室に引きこもったウィリアム卿を呼びに行ったルイーザは、彼の遺体を発見し悲鳴を上げます。

ワイズマン氏は自身が構想していた映画そのままの殺人事件が発生しているのに、トンプソン警部が到着してもほとんど関心を示さず、国際電話で映画製作の話を続けます。電話の相手にイギリス貴族について説明しますが、向こうは執事と使用人の違いすら理解できず英国の文化や階級、訛りを表面的にしか捉えていない様子。

ストックブリッジ卿は、部屋で泣き続けるルイーザにイライラし、シルヴィアの部屋には再びデントン氏が訪れます。シルヴィアは「人生は続いていくもの」と割り切りの早さを見せ、また彼を受け入れます。

翌朝、使用人たちは事件とエルシー解雇の後処理で忙殺されます。メアリーは手伝いたいとは思うものの、立場の違いから何もできません。

使用人の間では、デントン氏が実は従者ではなくアメリカの俳優で、ワイズマン氏だけでなく、ノヴェロ氏やウィリアム卿も知っていたと噂。ワイズマン氏の映画で執事役を演じるための潜入だったと分かり、使用人たちは好意的に受け取らず、不信感と反発が強まります。その結果、デントン氏は上階にも下階にも居場所を失い、使用人たちから冷やかされます。

それにより、ワイズマン氏とノヴェロ氏にも新しい従者が必要になり調整が進められますが、デントン氏は自分で何とかすればよいだろうという扱いに。ワイズマン氏は翌朝も電話を続けます。

キッチンでは、長年ウィリアム卿に仕えてきたクロフト夫人が、彼は善人ではなく多くの恨みを買っていたと語ります。彼の所有工場のいくつかで性的搾取があり、弱い立場の女性たちは訴えることもできず、子どもは勝手に養子に出されるか、そうでなければ解雇だったと明かします。殺されても不思議ではない人物だったと夫人は断じます。

デクスター警部補は客人や使用人に事情聴取を行うものの誰もが犯人になり得る印象です。アガサ・クリスティーのミステリーのようです。

ウィリアム卿の死でイゾベルへの脅迫は無効になったものの、止まらないフレディの要求。彼はルパート氏に頼んで欲しいとさえ言い出す始末。その甲斐性なさにイゾベルが仕方なく小切手を渡すと、その場面をメイベルに見つかりフレディは厳しく追及されます。

そしてメアリーはあることに気づいてしまいます・・・。

おわりに

階級、文化、性別が異なるキャラクターたちにはそれぞれ表と裏の顔があり、人間関係にも好悪が絡むのが面白い点です。随所に伏線が張られており、表情から細かなニュアンスを読み取るには複数回の鑑賞が必要ですが、その価値は十分にあります。この映画はブラックコメディに分類されますが、ユーモアや優しさも感じられ、最後に愛や希望も垣間見えます。

ラストのウィルソン夫人とクロフト夫人の場面は切なくて胸が熱くなりますが、それでも希望は残っています。

マイケル・ガンボンとヘレン・ミレンは、本作以前に「コックと泥棒、その妻と愛人」で共演。ガンボン演じる粗暴で下品なギャング、アルバート・スピカは、初めて観た際にはかなりの衝撃でした。

トレンサム夫人役のマギー・スミスは「ラヴェンダーの咲く庭で」「キーピング・ママ」「From Time to Time」「ハリー・ポッター」シリーズなど多数に出演。

メアリー役のケリー・マクドナルドは「トレインスポッティング」シリーズで有名で、「ハリー・ポッターと死の秘宝」ではヘレナ・レイブンクロー役。クロフト夫人役のアイリーン・アトキンスと、メイベル役のクローディ・ブラックリーは、いずれも「クランフォード」に出演。トム・ホランダーは「Wives and Daughters」のオズボーン役。

執事ジェニングス氏役のアラン・ベイツと、従者プロバート役のデレク・ジャコビは、長いキャリアを持つベテラン俳優。エルシー役のエミリー・ワトソンは「奇跡の海」「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」「アンジェラの灰」「A Song For Jenny」「オレンジと太陽」「キングスマン」「Dune」など多数の作品で主演を務める実力派。

ドロシー役のソフィー・トンプソンは「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」で魔法省の職員マファルダ・ホプカーク役。イギリス女優エマ・トンプソンの妹であり、フィリダ・ロウの娘です。

トンプソン警部役のスティーブン・フライは「ブラックアダー」シリーズ、「聖トリニアンズ」「ピーターズ・フレンズ」など多数に出演。

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