Lark Rise to Candleford ビクトリア時代後期のピリオドドラマ 田園地帯

Lark Rise To Candleford」は、2008年公開のイギリスのドラマ。原作はフローラ・トンプソン(Flora Thompson)の自伝的フィクション小説三部作(Lark Rise, Over to Candleford, Candleford Green、1939-1943年出版)。

舞台は1890年代のオックスフォードシャー地方にある貧しい村落ラーク・ライズと、裕福な町キャンドルフォード。村出身の16歳のローラは、キャンドルフォードで郵便局長をするドーカス・レーンのもとで住み込みで働き始めます。郵便局を中心に季節の移ろいとともに農場労働者や職人から上流階級までの人々による共同体の暮らしや社会的な出来事が描かれます。

クランフォードダウントン・アビーに並ぶ心地よい英国ドラマと評され、美しい映像・衣装・セット・風景に加え、温かい人間関係やコミュニティの絆が高く評価されています。自立心の強いドーカスと、仕立て屋のプラット姉妹の素敵なドレス、ラーク・ライズの女村長的なクイニーを観るのが楽しみでした。

キャストはジュリア・サワラ、オリビア・ハリナン、ブレンダン・コイル、クローディ・ブラックリー、リンダ・バセット、カール・ジョンソン、マーク・ヒープ、サンディ・マクデイド、ドーン・フレンチ、ジョン・ダグリッシュ、リズ・スミス、マチルダ・ジーグラー、ビクトリア・ハミルトンと豪華。

オープニングタイトルの背景にはラーク・ライズに広がる麦畑。収穫時期に村人全員が駆り出され、歌を歌いながら作業する姿が興味深いです。(画像は引用目的で使用しています)

ジュリア・サワラ、オリビア・ハリナン、クローディ・ブラックリー 、ブレンダン・コイル
目次

「 Lark Rise To Candleford 」あらすじ

キャンドルフォードの町並み

オックスフォード州の緑豊かな村ラーク・ライズと、隣接する裕福な石造りの市場町キャンドルフォードを舞台に、成長したローラ・ティミンズが語り手として昔を振り返ります。

時代は鉄道が開通する前の19世紀末。農民の貧困や地主の特権、階級社会、収穫祭や教会行事、女性の労働参加、選挙や労働運動の芽生えなど、当時の社会問題と人間関係の複雑さが描かれます。

村出身のローラは、ドーカスの郵便局で住み込みで働きながら仕事を学ぶことに。母のいとこにあたるドーカスは自立した親切な女性で、さまざまな問題に首を突っ込むものの、いつも筋が通っているので観ていて気持ちのいい人物です。郵便局やドーカスが関わるエピソードが多く、彼女が主人公と言っても過言ではないかと思います。

少しずつ近代化が進む町では、ラーク・ライズ出身の実業家ダウラウンド氏がホテルを建設し、ジャーナリストのダニエルが新聞社を立ち上げるなど新しい時代へ向かう空気も感じられます。

一方のラーク・ライズでは伝統的な田舎社会が続き、識字率の差などもある中で、村人たちは、収穫の時期に流行した麻疹に団結したり、DV問題への支援、クイニーの民間療法などを通じて共同体として支え合う姿、キャロラインの債務者監獄入りや、若い恋が隣村との対立を解くエピソードもあります。

町と村は8マイル(約12キロ)離れているものの、双方で深く関わり、ホームレスの一家が村に末娘を置き去りにした件でミッドウィンター卿夫妻まで巻き込む騒動へ発展したり、クリスマスには少女の幽霊が現れて町民や村民たちの良心が試されます。

オックスフォード周辺の設定でバンブリー(Bunbry)やビスタ―(Bicester)などの地名も登場。ポンテフラクト(Pontefract)など個人的に聞いたことのある地名が出てきて親近感が湧きました。撮影はウィルトシャー(Wiltshire)やグロスタシャー(Gloucestershire)とのこと。

主な登場人物

()は役者名

ドーカス・レーン(ジュリア・サワラ)

個人的には、このドラマの主役はドーカスだと思っています。ネット上でも、ドーカスは「シリーズの真の主人公」「干渉好きだが心地よい」「演技が完璧」などと評価が高いです。

ドーカスは父から受け継いだ郵便局と隣接の鍛冶屋を経営する、19世紀後半ではは珍しい成功した独身女性実業家。町と村の両方から尊敬され、二つのコミュニティをつなぐ架け橋のような存在でもあります。

電報配達をめぐる町と村の対立の調整や、厳格な新任郵便検査官に対応への対応、問題のある郵便物の処理、郵便配達の自転車の導入など有能な経営者としての手腕を発揮します。

若いころには身分差を理由にミッドウィンター卿からの求婚を断り、その後は実業家のダウランドとの関係が進展しそうに。最終シーズンでは、人生を立て直そうとするガブリエルに仕事と住居を提供し、彼の農業機械の試作品成功を共に喜びます。二人は親しくなりますが、シーズン4は全6話構成で展開がやや駆け足に感じられました。

ドーカスはよく「それは私の “one weakness” です」という表現を口にします。彼女の好物やちょっとした弱みをユーモラスに表す言い回しで、例えば、バターミルク風呂やお茶の時間のケーキといったものに対して、「それには目がないの(それは弱いの)」という意味で使われます。しかし一方で、ドーカスが出来事をうまく収めたときに、「それが私の “one weakness”よす」と、特に深い意味もないのに冗談で言うことも笑。

さらにローラの父ロバートと言い争いになったとき、彼がドーカスの“one weakness”を「弱点」という意味で、皮肉を込めて彼女を批判。するとドーカスは、「今、4つの“weakness” を言いましたよ?そしてそれらはすべてあなた自身のことです」と冷静に言い返して立ち去る笑。このドラマが好きな視聴者なら、ドーカスの「one weakness」も好きだと思います。

ドーカスの衣装も魅力的で、プラット姉妹のドレス同様に素敵なものが多く、夜用ガウンも素敵です。

シリーズ2の終盤では、ダウランド氏の息子シドニーを郵便局で預かることに。もちろんドーカスは温かく迎え入れ、シドニーもドーカスを母親のように慕います。このシドニーが最後まで本当に可愛いです。

ジュリア・サワラは、イギリスのシットコム「アブソリュートリー・ファビュラス」でサフラン役、「クランフォード」ではベッシー役で登場。また、イギリスのアニメ「Kipper」にも出演しており(「マウス」の声)マウスの声がとても可愛いかったのが印象的でした。現在も変わらず魅力的な声の持ち主です。

ローラ・ティミンズ (オリビア・ハリナン)

残念ながら、ローラというキャラクターには感情移入も共感もできませんでした。ローラが毎日日記をつける習慣は、将来のジャーナリズムへの道を感じさせます。聡明なのでしょうが、頭を小刻みに振りながら何でも知っているかのような話し方をするところが鼻につきます。

若さゆえの未熟さがあるのはいいとして、大人の事情を理解できず感情的になったり、意見が合わないと涙ぐむことも多い。ネット上でも「1話で何度も唇を震わせて目に涙ぐむ女優は見たことがない」という意見があり、思わず笑ってしまいました。

郵便局の仕事は無難にこなすものの、善意から郵送物の受け渡しを遅らせたり、配達中に荷物を置き忘れたり。さらに、時計職人の恋人フィッシャーを町に引き止めるため、最終部品が入った荷物を隠すなど、公私混同といえる行動がいくつかあって、見ていてハラハラさせられます。行政長官でもあるミッドウィンター卿の前で誓約書に署名をしたはずなのに・・・。

若く魅力的な男性が登場すると、ローラとの恋愛展開が容易に想像できます。幼なじみのアルフィー、ミッドウィンター卿の猟師フィリップ、時計技師フィッシャー、編集者ダニエルが彼女に好意を寄せ、特にフィリップ、ダニエル、フィッシャーとは短期間で恋愛関係になります。

シリーズ後半ではダニエルとフィッシャーの間で揺れ動き、未熟で優柔不断な行動を取ったり、業務中にそのことで頭がいっぱいになったり・・・。町を離れた二人が戻る度に、「私に会いに来たのか」「私のことを話していたのか」「私の気持ちはどうなるのか」と、自分中心に考える様子には少し閉口しました。

「原作との違い」で触れていますが、当時のイギリスはヴィクトリア朝の道徳観が色濃く残っており、女性の「評判」は非常に重要でした。未婚女性が人前で手をつないだりキスをしたりすることは基本的に好まれず、「不適切」「不道徳」と見なされ、評判を大きく損なう可能性がありました。

ローラが田舎出身だからという問題ではありません。郵便局職員のマーシー夫人は、夫の脱獄後、子供や自身の評判を守るために町を離れる決断をしています。その一方で、恋愛に関しての扱いは例外のようです。「クランフォード」や「妻たちと娘たち」を楽しんだ私としては、当時の価値観や歴史的背景を重視した描写を期待していたため、その点は残念に感じました。また最終話では、アルフィーとミニーの婚約祝いにドーカスやトーマス夫妻、プラット姉妹まで集まっているのに、ローラだけが不在で不自然に感じました。

ロバート・ティミンズ (ブレンダン・コイル)

ローラの父であり、妻エマと共にラーク・ライズ側の中心人物。

腕の良い石工ですが、安定した仕事を得るのに苦労することが多く、それが家計の負担にもなっています。一方で正義感が非常に強く、密猟問題や村の権利、貧しい人々を守るための争いなど、さまざまな問題に関わっていきます。プライドの高さから家族に心配をかけたり、政治的な考え方で村人と衝突したりすることもありますが、普段は献身的な夫であり、良き父親でもあります。

シーズン4では、オックスフォードへ出稼ぎに行ったという設定で不在に。演じるブレンダン・コイルは「ダウントン・アビー」(ジョン・ベイツ役)の撮影中だったそうです(脚本のジュリアン・フェローズは彼のためにこの役を書いたらしい)。また「北と南」ではヒギンス氏役で登場、こちらも正義感のあるキャラクターです。

エマ・ティミンズ (クローディー・ブレイクリー)

ローラの母。優しく勤勉な女性で、ローラの資質を早くから見抜き、娘の将来のためにキャンドルフォードへ送り出しました。夫ロバートとはたびたび口論になりますが、互いを深く愛し合っています。夫同様に、正義感が強く、肝っ玉母さんのような一面もある一方で、早合点して発言や行動してしまい、あとで後悔することも少なくありません。

地域の学校で代理教師が必要になったとき、臨時教師をしたエマは意外な才能を見せます。それにより自分も教師になれるのではないかと意欲を持つように。同じく教師職を望んでいたマーガレットに対抗心を燃やすものの、空回りしたり、幼いアニーを学校へ連れて来てしまったりとうまくいきませんでした。

クローディー・ブレイクリーは「ゴスフォード・パーク」のメイベル役、「クランフォード」のジェンキンス姉妹のメイドのマーサ役で登場しています。

クイニーとツイスター

クイニー(リンダ・バセット)とツイスター(カール・ジョンソン)は、特に愛されている脇役の二人。ラーク・ライズに暮らす高齢の夫婦で、親切でちょっと風変わりで、村の子供たちにも祖父母のように慕われています。

クイニーは女村長のような存在で、古い民間信仰や伝統療法に詳しく、押し付けがましさのない優しさで人々に知恵を授け、村人たちから頼りにされています。

ラーク・ライズの木が「血を流す」ように見える騒ぎで、村に魔女や迷信の噂が広がったときには、クイニーが古い民間信仰に基づく儀式(ペイガン・セレモニー)を行います。また、煙を吐く機械が村に来ると予言したり(ガブリエルが試作する農業機械)、クリスマスに現れた少女の幽霊に父親のもとへ戻るよう促したりと、彼女が登場する場面はどれも温かくて魅力的です。

一方のツイスターは、いたずら好きで怠け者。大げさな作り話や酒が大好きで、面倒事を避けようとしてはしょっちゅう小さな騒動や悪だくみに巻き込まれます。そのたびにクイニーに助けられたり叱られたりする二人のやり取りも面白いです。彼が少しでも小銭を手に入ると酒代に消えてしまうため、クリスマスにアルフィーとキャロルを歌って稼いだときも嫌な予感がしましたが、案の定、飲み代になってしまいました。

リンダ・バセットは「カレンダーガールズ」では集会でのピアノ担当のコーラ役、「コール・ザ・ミッドワイフ」や「dinnerladies」にも出演しています。

トーマスとマーガレット

トーマス(マーク・ヒープ)とマーガレット(サンディ・マクデイド)は、どちらも敬虔なキリスト教徒で、不器用ながら愛すべきキャラクター。

郵便配達員のトーマスは真面目で規則や礼儀作法に厳格しく、聖書の言葉をよく引用します。その堅苦しさが滑稽に描かれることも多く、労働条件改善を求めてドーカスと対立したり、自由奔放な副牧師マーリーを危険視したり。また、郵便局でマーガレットを抱きしめてしまったことをドーカスに懺悔し、「そんなに罪悪感があるなら次は制服を脱いでからにしたら」と返されてしまいます笑。

一方のマーガレットは温かく思慮深い女性。父エリソン牧師の死後、後任牧師の子供たちの家庭教師を務めます。教師としての資質も高く、エマと教師職を争ったときも、個人的にはマーガレットのほうが適任だと感じました。

また、実は優れたクリケット選手でもあり、男性限定の試合に助っ人として参加するため「紳士」の振る舞いを練習するエピソードも。トーマスが彼女の体を冷やさないよう贈った全身ウールの下着で、暑さとチクチクに苦しむ場面もお勧めです。

子供に恵まれない二人が貯金をはたいて犬を保護するエピソードは心温まります。その後、二人のもとにはコウノトリが・・・。

サンディ・マクデイドは、スコットランド・ハイランドが舞台のドラマ「マクベス巡査」で、グラスゴーから甥と逃げてきたジーン役で登場。美容師でスタイリッシュなベリーショートのキャラクターです。

キャロライン、アルフ、ミニー

キャロライン(ドーン・フレンチ)は、ラーク・ライズに住む奔放で賑やかな母親。不在がちな船乗りの夫に代わり、貧困の中でアルフィーを含む子供たちをワンオペで育てています。

明るく大らかな性格で笑いをもたらす一方、酒好きで金銭問題やトラブルも絶えません。アルフィーの稼ぎを頼りにしてすぐ使ってしまったりという無責任さに加え、借金が膨らみ債務者牢へ送られます。釈放後もあまり反省の色が見えず、シーズン4で戻ってきたときには、クイニーからアーチーの最期に立ち会えなかった責任を指摘されます。

それでも林で拾った金を無計画に使い、わざわざ郵便局に出向いてミニーに嫌味を言ったことで、家族や村人、ミニーから向き合われ、ようやく心を入れ替えます。ドーン・フレンチは「The Vicar of Dibley」のジェラルディン役をしています。

アルフィー(ジョン・ダグリッシュ)はキャロラインの長男で、優しく勤勉な青年。ローラの幼なじみで、当初は彼女に片思いをしています。日雇い労働者で家族を支え、キャロラインが収監されたときには幼い弟妹の面倒を一人で見ることに。

初期は読み書きができなかったものの、その後学び、手紙や書類が読めるように。また、アコーディオンと歌が得意で、曲を披露したら人々の心に強く響き、町や村に影響を与えてしまうエピソードも。

隣村のナンと交際するものの自然消滅し、その後は郵便局のメイドのミニーと親しくなります。しかしアルフィーは、キャロラインの問題や妹たちの世話を理由に結婚はできないと考えます。家族のために働き続け、赤ん坊の世話まで引き受ける彼は本当に誠実な青年だと感じます。

一方のミニー(ルビー・ベンタル)は、天真爛漫で不器用ながら口だけは達者な郵便局のメイド。ジラの亡きあとに雇用されました。善意や正義感はあるものの、深く考えずに突っ走る性格で、ドーカスやローラも当初はかなり振り回されていました。最初の頃の彼女の行動がアホすぎて苦笑いしました・・・。

パールとルビー(プラット姉妹)

裕福な客向けの仕立て屋を営むプラット姉妹は、ゴシップ好きで、当初はラーク・ライズの人々を田舎者として見下す傾向がありました。しかしシリーズが進むにつれて分け隔てなく接するようになり、麻疹流行の際には協力的な姿も見せます。

二人は幼いころに父親に捨てられた過去を持り、姉のパール(マチルダ・ジーグラー)は店と妹を支えてきたため少し厳しい性格で、一方のルビー(ヴィクトリア・ハミルトン)は優しく情に厚いところがあります。詐欺まがいの生活をしていた父が現れたとき、辛らつに対応するパールに対し、ルビーは温かく受け入れます。また、クリスマスに森で見かけたみすぼらしい少女にも、先を急ぎたいパールの横で、ルビーは自分のガウンを与えてしまいます。

ルビーは定期購読する雑誌の連載小説を楽しみにしていて、郵便局に届いていないか確かめに来ます。内容の一部を聞いたミニーが続きを知りたがり、ルビーを訪れて物語の続きをせがみます。ルビーが感情たっぷりでミニーに読んで聞かせるシーンが好きです。ヴィクトリア・ハミルトンに読んでもらえるなんて、なんと羨ましいこと笑。ルビーの演技が上手で、コミカルで可愛いです。声も可愛い。

パールが町の巡査と不倫関係になりかけたり、ルビーは文通相手の男性に会いにポンテフラクトへ向かったりと、それぞれの恋愛事情も描かれます。ルビーが町を離れたことで店が回らなくなったパールは有能な臨時スタッフを雇うものの、ドラマなのでやはり問題が起こります・・・。

姉妹はいつもおそろいの美しいドレスを着ており、それを見るのも楽しみの一つでした。仕立て屋なのでドレスも紳士服も作っているという設定ですが、ミシンがなかった当時の人々は針だけで服を作っていたのかと思うと感心します。

パール役のマチルダ・ジーグラーは、初期の頃の「ミスター・ビーン」で、彼女役のイルマで登場しています。コミカルだけど少し気の毒な役まわりでした。ルビー役のヴィクトリア・ハミルトンは、「Victoria & Albert」や「ザ・クラウン」、ジェーン・オースティン作品など多くのコスチュームドラマに出演しており、「シェルシーカーズ」では打算的なナンシー役でしたが彼女の上品さは隠せませんでした笑。

その他の登場人物

レディ・ミッドウィンター(オリヴィア・グラント)は、美しく色白、細身ではかなげな雰囲気を持ち、貴族役にぴったりだったと思います。屋敷はそのままに夫婦でロンドンへ移住したため、彼女の退場に惜しむ声が多かったとのこと。

ミッドウィンター卿は屋敷の新しい門の製作をドーカスの鍛冶屋に依頼します。しかしレディは夫が郵便局やドーカスと過ごす時間の多さに不満を抱き、その依頼を取り消してしまいます。領地を管理するミッドウィンター卿は、レディにも地域への関心を持ってほしいと考えています。しかしそもそもロンドンに戻りたい彼女にとって、夫が過去に求婚した女性のもとで多くの時間を過ごしている状況であれば、不満を抱くのも無理はありません。

シーズン1で亡くなるジラ(リズ・スミス)は、郵便局で長年働いてきた家政婦。飾り気がなく辛口で文句も多い人物でしたが、ドーカスやミッドウィンター卿をよく知る存在でした。リズ・スミスは名脇役の女優で「The Vicar of Dibley」「キーピング・ママ」「アガサ愛の失踪事件」など多数に出演しています。

ノルマン・コンクエスト」のノルマン役のトム・コンティが、キャンドルフォードのホテルに滞在する謎のレッピングトン氏として登場しています。また、パターソン巡査の寝たきりの妻役のミシェル・フェアリーは「ハリー・ポッターと死の秘宝」のハーマイオニーの母役。

ブラビー家のDV夫サム役のナイジェル・ハーマンは、2003年ごろにイギリスのソープ・オペラ「EastEnders」でデニス役で登場していました。久しぶりに見た人物だったので感動しました笑。彼はほかにも「ダウントン・アビー」や「Mount Pleasant」にも出演。

印象に残ったエピソード

良いエピソードはたくさんありますが、その中でも印象に残ったものをいくつか挙げてみます。

シリーズ1、エピソード1

キャンドルフォードとラーク・ライズの違いや対立、そしてドーカスの寛容さと機転の良さがよく分かるエピソード。しぶしぶ家を出たローラは、町で田舎者扱いされ、プラット姉妹とレディ・ミッドウィンターの前でとった生意気な態度をメイドのジラにたしなめられます。でも、本が多く自分専用の部屋まである便利な生活にすぐになじんでいきます。

ラーク・ライズの住民たちは、村がキャンドルフォードから8マイル(約12キロ)の配達圏外にあるという理由で、電報の受け取りに配達追加料金を払わなければならないことに意義を唱えます。配達料は村人たちには大きな負担で、クイニーは兄弟の死の知らせを受け取れませんでした。そこでミッドウィンター卿の提案により実際の距離を測定することに。大勢の町民と村民が見守る中、最後はドーカスの機転によって問題が解決します。

このエピソードで町と村の距離が強調されていたわりに、エピソード以降には双方の行き来がかなり気軽になっています。ドラマの性質上仕方ないのでしょうけど、キャンドルフォードにはいつも村人がいます笑。町人は馬を使えるので理解できるけど、夜に村人が町にいたりすると昼間の労働の後に歩いてきたのだろうかと不思議になります笑。12キロを頻繁に歩くのはかなり大変だったはず。

シリーズ2、エピソード6

病気で寝込んだドーカスの代わりに、ローラと配達員のトーマスが郵便局を切り盛りします。それを知った村人はローラを誇りに思い、彼女を励ますために郵便局にやって来て切手を一枚ずつ購入します。しかし、そんな時に限って電信機が故障し、正しく電報を受け取れなくなってしまいます。さらに「郵便局の少女」宛てに脅迫状が届き始め、ローラは一人で悩みを抱えることに。

それなのに時計職人のフィッシャーは時計の完成が近づき、ドーカスやローラの父から諭されたこともあり、ローラから距離を置き始め、さらにはトーマスが夢遊病で夜中に町を歩き回るように・・・。

ドーカスを気に入る実業家のダウランド氏は、メイドのミニーへ賃金を払いドーカスの世話を頼みます。しかしドーカスの容態は悪化し、少年時代をラーク・ライズで過ごしたダウランド氏は、母親のように慕っていたクイニーへ助けを求めて馬を走らせます。

ドーカスの症状を聞いただけで素早く薬草を用意するクイニーが頼もしい。クイニーはドーカスを助けたい理由をダウランド氏に確かめます。それはまるで彼の魂に問いかけているようでした。クイニーは、他のエピソードでも医者のように頼られています。

シリーズ2:エピソード12

郵便局にダウランド氏の息子のシドニーが住み始める回。このシドニーが本当にかわいい。ずっと寄宿舎にいたシドニーは愛に飢えているところがあり、会ったことのなかった父よりもドーカスを母のように慕い、何よりも郵便局に強い興味を示します。トーマスから聖書を授けられたシドニーは「ずっと郵便局にいられるように」と祈り始めます。

トマスとの結婚を目前に控えたマーガレット。保守的な父エリソン牧師から厳しい宗教的・道徳的規範を教えられて育ちました。父の死後もその教えが彼女の心に深く刻まれており、結婚に対して強い罪の意識や不安、恐怖を抱いてしまいます。

エスコート役を依頼したローラの父に「愛とは何でしょうか」と問いかけるうち、結婚への心理的プレッシャーが「エリソン痘」となり、彼女の顔がひどく荒れてしまいます。これではトーマスに会えないと彼女はローラの実家に身を寄せ、トーマスは行方不明のマーガレットを心配します。

トマスも同時に、エリソン牧師の厳格で抑圧的な信仰がマーガレットを苦しめていることに気づき、自分たちはその教えを盲目的に受け入れすぎたと反省。告解が必要であり、エリソン牧師の教えを批判すべきだと主張します。このエピソードは、厳格なヴィクトリア朝的宗教観がもたらす心理的影響を描いた回の一つといわれています。

アルフィーの恋人ナンは、彼が優しすぎて息が詰まりそうで、ちょい悪ぐらいの方が面白いと発言し、ローラの母からたしなめられます。アルフィーは「自分だってちょっとしたいたずらができる」と、夜中に町にやって来てある場所に忍び込みます・・・。

シリーズ3:エピソード3

地道に働いて村のコテージを借りたアルフィーは、お祝いのお返しに歌を披露。その上手な歌は村人の心に響き過ぎて、翌朝、郵便局でも村でも皆が口ずさむことに。

そんな中、郵便局にアルフィー宛の赤ちゃんが届けられます。ローラがアルフィー宛の郵送物の受け渡しを遅らせたことから、ミニーも赤ちゃんをしばらく隠してしまいます。赤ちゃんは泣きもせず、誰も気づかないのが不思議です。シドニーが赤ちゃんにアルフィーの歌を歌って聞かせるのが可愛いです(「メリー・アン」じゃないですよ笑)。

少し成長したローラの弟エドマンドがハンサムに笑。エドマンドは村の男性と一緒にビールを飲みたがったり、学校には戻らないと言って両親を困惑させたり、学校に行かずアルフィーについていって日雇いの仕事を始めたりします。エマとロバートは、エドマンドが学校の試験にパスしなかったからだと推測。

しかしエマは、実はエドマンドが州でトップの成績で試験をパスしていたことを知り、パブに乗り込みエドマンドを叱責。村人の前で「あんたは他の人とは違って才能があるんだから将来を大事にしろ」と感情的に。それが村人だけでなくアルフィーからも反感を買い、子供たちまで争う事態に。エマはしばしば勢いで思ったことを言ってしまうところがあるんですよね・・・。

ツイスターがこれはあの歌のせいだと指摘。アルフィーはどうして歌が原因なのかと反論するものの、その歌詞は悲しい物語だったのです。二人は一緒に作詞をし直すことに。

赤ちゃんはアルフィーの妹で、彼はその世話まで見ることに。キャロラインは夫ウォルターと家族の住まいを探しに出ていくとき「子供たちはクイニーの所にいたらいいわ」とひらめいていました。すでに幼い兄弟の面倒を見ていたアルフィーに赤ん坊まで送りつけるなど、彼女のこれまでの無責任さを考えてみてもいつものことかと思いました・・・。

シリーズ3、エピソード4

深い悲しみに暮れるアルフィーの代わりに、ツイスターが「歌い手」の役割を務めます

ラーク・ライズにとって一年で最も重要な収穫の時期。冬の食料に備えるため、皆で協力して収穫し、手伝わないと分け前がありません。今年はドーカスとシドニーも収穫に参加することに。

今年はアルフィーが「Harvest King(ハーベスト・キング)」を担当。彼が労働歌「The Keeper」を歌い、皆が応える形で作業のリズムを取りながら収穫をしていきます。ツイスターも一緒に刈り取り、女性たちが後ろから小麦を拾います。手伝っているシドニーが可愛い笑。

しかしオックスフォードで流行していた麻疹がラーク・ライズにも到達してしまいます。子供の看病で収穫に参加できない家が出てきてしまい、村人にとっては死活問題に。薬草があるクイニー宅が緊急の診療所として機能し、収穫は村で均等に分けることになりました。クイニーのもとには大勢の子供が送られてきます。

帰宅したシドニーも麻疹を患い、ドーカスが寝ずの看病を続けます。ローラと別れたジャーナリストのダニエルはケンブリッジへ向かう途中で村の深刻な状況を目にし、キャンドルフォードに引き返し支援を呼びかけます。

大家族で育ったトマスは、かつて兄弟を何人も失ったつらい経験から悩んだ末、村へ向かいます。喪服の注文で忙しくなり始めたプラット姉妹もダニエルの訴えに応じ、町からも支援の人々が集まります。

悲しみで崩れ落ちそうなアルフィーを支えるクイニーや、亡くなった子供のために号泣するトマス。涙なしには観ることができない回です。

原作との違い

ドラマ版と原作には違いがあり(私は原作未読)、原作はよりノスタルジックな雰囲気で、村の日常や季節の移り変わり、風俗や習慣が丁寧に描かれているとのこと。貧困や将来への不安、村の衰退といった現実的でやや暗い側面も含まれ、ローラは本好きで内省的。ドラマ版のように複数の男性との恋愛や三角関係などはなく、フィリップが軽く登場、アルフィーも幼なじみ程度にとどまります。原作のローラは郵便局の同僚と結婚します(作者自身と同様に)。

ドーカスは実在の人物、ドラマでは愛嬌のあるツイスターは原作では暗い側面を持つ人物。キャロラインも大きく脚色されてドーン・フレンチのコメディ要素が強調されています。

ネット上でも「ローラの恋愛要素が中心になってしまって残念」「時代劇としてのリアリティが損なわれている」といった意見が見られます。

おわりに

シリーズ4のエピソードは6つしかなく、やや急ぎ足な展開だと思いました。ドーカスのパートナーを解決することに焦点を置いた構成のように見えます。原作は恋愛模様が中心ではないため、無理にパートナーを作らなくてもよかったのではないかと思いました。

ドラマ終了に伴い、ファンから再開を願うキャンペーンが行われましたが叶いませんでした。最後のラーク・ライズでのシーンにローラは登場せず、ロバート役のブレンダン・コイルも「ダウントン・アビー」へ移り、主要スタッフも去っていたそうなので仕方ないですね・・・。

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