「Absolutely Fabulous(アブソリュートリー・ファビュラス)」は、1992年から2016年にかけて放送されたイギリスのシットコムです。BBCの「100 Best Sitcoms」で17位に選ばれ、日本では2016年の映画版が「ザッツ・ファビュラス!」としてネット配信されました。
「Absolutely Fabulous」(「Ab Fab」とも呼ばれます)は、自己中心的で奔放な広報会社経営者のエディ・モンスーンと、毒舌な元モデル・女優でファッション誌ディレクターのパッツィ・ストーンの常軌を逸した日常を描いています。
二人は日常的に飲酒し、しばしば泥酔し、喫煙やドラッグにも手を出します。買い物が大好きで、ファッションや最新の流行を追い求める一方、モラルにはやや欠ける面がありますが、そんなライフスタイルを当たり前のように楽しんでいます。エディの真面目な娘サフランは、母親たちの行動にあきれながら叱責することが多く、母娘の立場が逆転した関係も見どころです。
ファッション業界やセレブ文化への鋭い風刺と容赦ないユーモアが特徴で、華やかな世界観の中でファッションブランド、モデル、セレブ、イギリスの有名デパートなどの名前が頻繁に登場します。
「Absolutely Fabulous」のあらすじ
主人公は、キャリア的には申し分のないステータスを持つ2人の女性。PR会社の社長・エディと、ファッション雑誌のディレクター・パッツィ。とにかくこの二人のキャラクターがとても濃く、やることなすことが自由奔放で豪快です。モラルがやや欠けていたり、言葉遣いが乱暴だったりすることも珍しくありません。いつでも彼女たちは、喫煙し、酒を飲み、買い物をし、ファッション業界やセレブのゴシップに花を咲かせています。
第1話は、エディの二日酔いから始まります。この日は彼女の会社が主催する重要なファッションショーの日。朝9時半、目覚ましの大音量でようやく目を覚ましたエディは、すでに遅刻しており、「パニックだわ、パニックだわ」と言いながら、自分を落ち着かせるために、昨晩の飲みかけの酒のボトルに無意識に手を伸ばします。
やっと目覚ましを止めると、娘のサフランから皮肉っぽい「Thank you!」が聞こえます。サフランによると、迎えの車がすでに来ており1時間待っているとのこと。カーテンを開ければ太陽がまぶしく、エディは目まいを起こしてサングラスをかけます笑。
キッチンに降りると、サフランが朝食をとっています。真面目で優秀なサフランとは対照的に、エディは鼻歌を歌って二日酔いを隠そうとしますが、キッチンには昨晩の酒瓶が散乱しています。サフランは、エディがすでに1週間連続で会社に遅れていることを指摘します。
「どうしたら私が二日酔いじゃないことを確信してもらえるのかしら」と言うエディ。どうやら彼女の二日酔いは日常茶飯事の様子。支度をしようにも思うように進まず、何度も汚い言葉を口にしてサフランにたしなめられます。そしてサフランに、「コーヒーを淹れてくれ。インスタントじゃなくて豆から挽いて。やっぱりコーヒーなんていらない」と二転三転し、しまいにはコーヒー豆をぶちまけるという幼稚で不安定な行動を見せます。その様子は、まるで母と娘の立場が逆転しているかのようです。
エディが着替えを済ませると、親友のパッツィがやってきます。パッツィは口うるさいサフランを気に入らない様子。そしてようやく運転手付きの社用車に乗り込んだ二人ですが、エディが遅刻しているにもかかわらず、「ハーヴィ・ニコルズでランチしよう」と提案するパッツィ。ハーヴィ・ニコルズは二人のお気に入りのデパートの1つで、エディはついその誘いに乗ってしまいます。
エディのオフィスに到着すると、アシスタントのバブルが急いで酒のボトルとワイングラスを用意します。オフィスでも日常的に飲んでいるようです。パッツィはエディのオフィスに頻繁に出入りし、エディの社用車もよく利用しています。
バブルはスレンダーで可愛らしいものの、あまり頼りになりません。それでもエディはファッションショーの準備をバブルに次々と指示します。今朝サフランに呆れられたので、エディは一滴も飲まないよう努力します。そしてファッションショーは大成功を収め、二人はエディのオフィスに戻って祝います。
夜には、サフランがエディの帰宅を待っていましたが、いつもながらサフランの期待通りにはいかなかったようです。

登場人物
エディ(エディナ)
エディのPR会社のロンドンを拠点としており、ツイッギー、ルル、エマ・バントン、ケイト・モスといった著名人をクライアントに持ちます。シリーズを通して彼女の成功の度合いは変動しますが、強運も手伝い、映画版では成功裏にストーリーが締めくくられます。
最新のファッショントレンドを追い、クリスチャン・ラクロワの熱烈なファンとして、若くおしゃれに見えるよう努めています。家では、ティーンエイジャーのようなエディに代わり、しっかり者の娘サフランが家の中の面倒を見たり、母の後始末をしたりすることが多いです。
彼女は仏教徒であることを公言しており、自室に仏壇のようなものを置いています。ニューエイジのスピリチュアリティ、風水、感覚遮断タンク、前世療法、スピリチュアルサークルなど、流行の代替療法にも夢中です。
キッチンの改装を先延ばしにしてサフランに叱られ、ドアハンドルを見るためだけにニューヨークへ行ったり、パッツィと距離ができたときには、ニューヨークに仕事に行ったパッツィをヘリコプターで迎えに行くなど、彼女の行動のスケールは大きく、観ていて爽快です。
脚本
エディ役扮するジェニファー・サンダースは、シリーズのプロデューサーと脚本も務めました。もともとは、ドーン・フレンチと共同制作した「French and Saunders」のコメディスケッチのひとつが原案になっています。この作品により、ジェニファー・サンダースは国際的に高く評価され、英国アカデミー賞を2度、国際エミー賞を受賞しました。
また、ジェニファー・サンダースは「フレンズ」シーズン4に出演しています。ロスがイギリス人の恋人エミリーと結婚式を挙げるためロンドンを訪れた際、エミリーの継母役として登場します。けだるい態度でロスにねっとりと話しかけ、ロスが困惑した表情を見せるのが印象的です。エミリーの父親役のトム・コンティも個性的なキャラクターで、70年代のコメディミニドラマ「The Norman Conquests」では、若かりし頃の彼を見ることができます。
パッツィ
パッツィはスレンダーな体型にクラシックなスタイルをまとい、ブロンドの髪を美しくアップにしたマダムタイプ(というか紳士かも笑?)の魅力的なキャラクターです。パッツィ扮するジョアンナ・ラムリーは上品な雰囲気を持ちながら、ハチャメチャな体当たり演技を惜しみなく披露しています。
パッツィはアルコール依存症でヘビースモーカー、娯楽目的のドラッグも頻繁に使用します。アップした髪にジョイント(タバコのようなドラッグ)を何本も隠していたこともあります。
常に親友のエディと行動を共にし、エディの家に入り浸っています。家の酒を飲み、エディの運転手付きの社用車もよく使っています。車内ではミニボトルの酒を飲み、シャネルの5番を飲んでいることもあります笑。好んで飲むのは「ボランジェ・シャンパン」や「ストリチナヤ・ウォッカ」で、「ボリー」や「ストリー」と呼んでいます。
フランス旅行のエピソードでは、飛行機の座席テーブルが埋まるほど酒のミニボトルを注文し、コテージ近くのワイナリーではエディと酔いつぶれるまで試飲して箱買いします。(そして帰りの空港の税関でポーチの中の白い粉が見つかる笑)
エディのキッチンでタバコを吸いながら意識を失い、火災を起こしてキッチンを全焼させたのに、タバコを咥えたまま生き延びたことも。また、禁煙タクシーに乗ってしまい、エディのキッチンに駆け込んで悪態をつきながら4本のタバコに同時に火をつけたこともあります。体中にニコチンパッチを貼っていたエピソードでは、サフランに嫌味を言われたので、彼女に気づかれずニコチンパッチを数枚貼って仕返ししたりします。
パッツィはエディとの友情に強く依存しており、エディが他の人に気を向けると割り込むこともあります。1973年からほとんど食事をしていないと言っているのに笑、エディとランチに行きたがり、エディが他に用事があろうものならエディを説き伏せます。また、サフランの恵まれた環境(母娘逆転のような関係なのに)に敵意を抱き、エディに「あの子を追い出しなさいよ」と言うこともあります。
サフランに対しての態度はひどく、妊娠中のサフランが「赤ちゃんがお腹を蹴ってる」と喜ぶと、「蹴るに決まってるでしょう。誰が蹴らないっていうの?私もそんな気になるし。」と辛辣です笑。また、自身の美容のためのパラロックス注射をサフランの腕で試し、朝キッチンに降りてきたサフランが、「どいうわけか今日は腕が動かない」と困惑する場面も。
毒舌ゆえエディに対しても容赦がないこともあり、彼女の体型やファッションを辛辣に皮肉ることもあります。本人はエディを褒めているつもりで、「あなたは体型が崩れるまで頑張ってるわ。お腹は見分けがつかないほど伸びて、胸は膝まで下がってるのに」と辛辣です笑。
パッツィは華がある存在感なのに、いつでもコミカルな仕草と表情を見せてくれるので思わず注目してしまいます。個人的に印象的だったのは、エディナとパッツィがマリリン・マンソンのコンサートに行き、すっかり影響を受けたファッションで帰宅したとき。パッツィのスレンダーな体型にスリムなジーンズ姿がよく似合っていました。彼女はマリリン・マンソンの表情や動きを大胆に真似し、ヘッドフォンで音楽を聴きながら乗りまくります(でも実はプレイボタンを押してなかった笑)。
他にも、サフランの学校のオープンデーで教室を探して急いで走り回る姿や、何回か登場するダンスシーンではもれなく奇妙な動きを見せてくれます。エディとパッツィの老後の描写では、パッツィの背中が曲がっており、仕草や表情が秀逸なのに、そこにまた滑稽なダンスが加わったりします。
パッツィは元ボンドガールだと主張しますが、どうやら007を模したポルノ映画への出演だったようです。なお、ジョアンナ・ラムリーは「007 女王陛下の007(1969)」に出演しています。
セクシュアリティはエディより奔放で、ミック・ジャガー、ブラッド・ピット、ヒュー・グラント、フィリップ王子、エルトン・ジョン等々と関係を持ったと言及しています。
ジョアンナ・ラムリーはパッツィ役で、英国アカデミー賞最優秀コメディ演技賞に4回ノミネートされ、1995年に受賞しました。1993年には英国アカデミー賞最優秀ライトエンターテイメント賞と英国コメディ賞最優秀女優賞も受賞しています。
日本を紹介したDVDもリリースされています。

サフラン
エディの娘のサフラン(ジュリア・サワラ)。エディや祖母からは「サフィー」とよく呼ばれています。
サフランは何事もきちんとこなす優等生タイプ。長年エディだけでなくパッツィにも鍛えられてきたせいか笑、二人に対して毒舌で立派に応じることが多いです。
エディとパッツィがフランスへ発つときには、「パスポート、チケット、それからコンドームは持った?」と声をかけます笑。そして、エディたちをサポートするためにバブルと一緒にフランスに向かい、「することが何もない」と不平を言うエディに対して、「することはたくさんあるでしょ。散歩したり、絵を描いたり、ゲームをしたり。ここは素敵なところよ」と、まるで母親のようです。
別のフランスを舞台にしたエピソードでは、流暢なフランス語を披露します。驚くエディにサフランは「あなたが私の教育費を払ったんだけどね」と皮肉を言います。
一度パッツィに「ヘレナ・ボナム・カーター」と言われたことがあり、確かに似ているなと思いました。
彼女は作家志望であり、自身の不運な人生を題材にした舞台を開催したことがあります。赤裸々に綴った内容にもかかわらず、観客はエディの「毒親ぶり」に大笑い。パッツィ役は男性で、まるでドラッグクイーンのような風貌です。結果としてコメディ劇になってしまいました。なぜかバブルだけが号泣笑。
20周年記念のエピソードでの冒頭、エディが刑務所へ誰かを迎えに行きます。多くの視聴者は「出所するのはパッツィなのでは」と想像していたのではと思われるところ、出てきたのはなんとサフランでした。
サフランロンを演じるジュリア・サワラは、「Press Gang」、「Second Thoughts」、「Faith in the Future」、「Time Gentlemen Please」、「Jonathan Creek」、「Comedy Connections」、「Cranford」、「Lark Rise to Candleford」など多くの作品に出演しています。また、その魅力的な声を活かし、「Sheeep」や「Kipper」などで声優としても活躍しています。
サフランロンの友人のサラ
サフロンの友人のサラは初期のエピソードから登場します。サラに扮するナオコ・モリは、日本人役者だそうです。
彼女は三つ編みをしていることが多く、エディからは「チチカカ」と呼ばれています。
成長するにつれて、酒や男性の話題になると異様に興奮するようになり、その度に行き過ぎた反応を見せる度に、サフロンに平手打ちされてしまいます。
エディのクライアントであり、サフランの同級生でもあるエマ・バントン(元スパイスガール)とともにサフランのベビーシャワーに招かれたときには、エマ本人からも平手打ちをくらってしまいます。その後、エマに夢中になりすぎたあまり、ストーカーまがいの行為に及んで連行されてしまうという、少し残念なキャラクターになってしまいます。
それでも、サフロンの結婚式ではブライズメイドに選ばれています(ただし、式場に入る直前に、エディが連れてきたグッチのモデルと入れ替えられてしまいます)。
バブル
エディのアシスタントのバブル(ジェーン・ホロックス)は、スレンダーで愛らしい外見を持ちながら、極めて天然で、仕事面ではほとんど役に立たないキャラクターです。話す内容や話し方がどこかズレており、そのたびに、エディは「この子に任せて大丈夫?」というような困惑した表情を見せています。それでも、エディとパッツィを追ってフランスへ向かうエピソードでは、ちょっとした通訳を務めるなど、意外な一面をのぞかせます。
また、エディがバブルを職業催眠プログラムに参加させたところ、突然テキパキと仕事をこなす有能な秘書へと変貌します。エディを脇に押しのけて指示を出す姿は印象的ですが、これはエディの夢の中での出来事でした。
バブルのファッションは独特で、愛らしいものから奇抜なものまで幅広いです。フランス旅行時のパイレーツ風衣装は可愛かったものの、テレタビーズやオリンピックを模した衣装はただのギャグとしか思えませんでした。シリーズが進むにつれ、彼女のおバカな振る舞いはやや痛々しく感じられることも。ただ、映画版「Absolutely Fabulous: The Movie」では、これまでの彼女の無能さは演技だったのでは?と匂わせる台詞がちらっと登場します。
バブル(というより、ジェーン・ホロックス)は芸達者な一面も持ちます。フランス人歌手のコンサートでは、口パクする歌手のためにフランス語の歌を歌ったり、ミュージカル「シカゴ」の一節を披露したり、「ライオン・キング」の冒頭部分を歌ったりします。映画版では、シャーリー・バッシー(007シリーズの主題歌で知られる歌手)の「Big Spender」を披露する場面も。
ジェーン・ホロックスは、「The Witches」「Little Voice」「Chicken Run」「Corpse Bride」「Sunshine on Leith」などに出演しており、声の出演も多数あります。
エディの母
エディの母(ジューン・ウィットフィールド)」は、可愛らしいおばあちゃんですが、非常に天然で、無自覚に毒舌な発言をよく口にします。それがエディに鋭い一撃を与えることもしばしば。
エディの家に立ち寄ったパッツィにも、「いつも男の子と一緒だったパッツィよね?まだブロンドで髪をアップにしてるの?」「サフィー、パッツィおばさんが来たわよ」などと皮肉を浴びせたりします。彼女はエディたちの若いころの自由奔放なライフスタイルを暗黙的に知っていたようで、また無関心で皮肉的でもあるようです。育児放棄されてきたパッツィーの面倒も見てきたという一面もあります。
エディとパッツィーにぞんざいに扱われるサフランロンをかばうことが多く、チャリティショップへの寄付が趣味です。エディのキッチンで作ったものや、エディの家からいろいろな物を勝手に持ち出して寄付してしまいます。
印象的なシーン・エピソード
パッツィのパスポート
パッツィがモデルに起用され、みんなでフランスへ向かいます。ユーロスターの車内で、サフランロンとファッションモデルのエリン・オコナーがパスポートの写真を見せ合っていると、パッツィも「私のも見て」と自分のパスポートを出します。
ところが、なぜかパッツィのパスポートは緑色。それはイギリスの古いバージョンのパスポートなのです笑。開いたページには、ウン十年前の若かりし頃の麗しいパッツィの写真が。記載情報は手書きの頃のもので、生年月日の西暦は「19**」とペンで消されています。
「いい写真でしょう?」と得意げなパッツィに対し、「梅毒」とつぶやくサフラン笑。でも確かに麗しいパッツィの写真です。映画版でもパッツィはこのパスポートを提示します。
パッツィの職場
パッツィーはファッション雑誌のディレクターとはいうものの、いつもエディの家やオフィスで飲酒したり喫煙したりで、実際に働いている様子が出てきません。
しかし、シーズン1の最終エピソードで「私、オフィスに行くわ」と言うのです。
「はぁ?!」という表情をするサフランロン。そして、なぜかうろたえるエディが「あなたの・・・オフ、オフ、オフィス・・・よね。まだあるのかしら?」と尋ねます。
パッツィーが「会議があるから」と言うと、サフランは「あなたは何の仕事をしているの?」と疑問を投げかけます。今さら何を言っているのかと反応するエディとパッツィーですが、パッツィーは「トップの雑誌でトップの編集をしているのよ」と主張します。サフランは「いつも仕事に行っている様子もないし、いったい何に有能なの?」と指摘。
エディは「彼女は編集部の誰かと寝たのよ」とフォローし、パッツィーは「私はクソ有能だから」と返します。その「有能」がどちらの意味なのかは疑問が残るところ笑。サフランはさらに「具体的に何をするの?」と質問すると、エディが「ハーヴィ・ニコルズで50%割引を使えるのよ」と得意げに補足します。
「スキルが必要な仕事だし、ファッションをけん引しているのよ」と続けるパッツィ。
「無料のシャンパンや小さい試供品もたくさんもらえるのよ」とさらに補足するエディ。
サフランは「二人はいつも無料で何かをもらってるわよね。今まで何かにお金を払ったことあるの?」と鋭い質問をします。するとエディは、「あなたのために(教育に)たくさんお金を使ってるじゃない」と返してサフランを黙らせます。
その後、エディとパッツィーはパッツィーの職場に到着するものの、パッツィーは自分のオフィスの場所を思い出せず、受付で尋ねたり地図を見たりして右往左往します。
法廷に呼ばれる二人
エディは、前夫ジャスティンからの扶養手当が打ち切られると会計士から知らされ、経費を削減し、浪費癖を改めざるを得なくなります。(もう一人の元夫マーシャルからも手当てをもらっていた様子)
生活の見直しとして、サフランロンから買い物してこいとショッピングリストを手渡されますが、どこで買い物をするのかも分からない。いつものようにパッツィも同行するようで笑、「食料品なら簡単よ。ハロッズのフードコートに行けばいい」と高級デパートへ行こうとする二人に、サフランから「スーパーに行って!」と言われます。
運転手付きの車も削減したので自分たちで運転するものの、運転マナーがひどく、他の車とトラブルになった挙句、店の入り口前に堂々と駐車します。スーパーに入っても勝手が分からず、入り口で「Hello?」と店員を呼ぼうとしたり、何台か連なっているカートを押そうとしたり笑。
そして、二人がそれぞれ押していたカートは商品でいっぱいに。陳列されていた酒のミニボトルをその場で飲んで棚に戻したり、シャンパンの箱をレジを通さなかったり・・・。その後、二人はハーヴィ・ニコルズにも立ち寄り、大量に買い物をして店を出てくると、案の定、車にはタイヤロックがかけられていました。
最後はエディ(とパッツィ)が法廷に呼び出されます。免許不携帯、スピード違反、酒気帯び運転、駐車違反、器物破損、万引き、無免許・無保険運転、シートベルト非着用、税金未納、駐車料金未払い等々、容疑のオンパレード。
万引きを指摘されたエディは、「今、シャンパンがいくらすると思ってるんですか? 私の娘はシャンパンを買わせてくれないんですよ!?」と訴えます。
家から投げ飛ばされるパッツィ
サフランロンはジョンとの結婚式のためケニアに滞在します。その間、家の模様替え、特にキッチンの改装は絶対にしないようにと念を押されていましたが、エディはあっさり改装を始めてしまいます。
改装に呼ばれたのは、以前にも何度か登場した極端なミニマリストのベティーナとマックス。かつては子どもを持つ夫婦でしたが、現在は離婚しており、子どもは遠くで暮らしているとのこと。また、マックスがゲイであることも語られます。ベティーナは、ミニマリズムの空間にマックスの彼氏が持ち込まれたことで精神が不安定になってしまったようです。
ベティーナ扮するミランダ・リチャードソンは「ブラックアダー(Black Adder)」に出演、マックス役のパトリック・バーロウは「Is It Legal?」のボブ役の俳優です。神経質すぎるベティーナとおどおどしたマックスがいい味を出しています。
完成した新しいキッチンは真っ白で家具はなく、暖炉だけが設置されています。階段すら取り払われてしまったため、エディは転げ落ちてしまいます。
エディは次のアイデアを求めてスピリチュアルなアドバイスを受けるため、過去生退行のセッションを受けます。セッションにまったく集中できないエディとは対照的に、パッツィはすぐに催眠にかかり、17世紀、15世紀、新石器時代、ついにはビッグバンまで退行してしまいます。当時のスピリチュアルブームがちょっと懐かしいですね・・・。
セッションの途中、帰宅したサフランロンが割り込んできます。いつまでも元に戻らないキッチンに業を煮やし、「今日は何をしているの?いつも中途半端で物事を放り出すパターンじゃないか」と怒りをあらわにします。激しい口論の末、サフランは「私の家から出ていけ」と言い放ちます。父のジャスティンが、離婚手続きの際に家の名義をサフランに変更していたのです。
エディは「出て行ってやるわ」と強がりますが、パッツィはビングルームのドアにしがみつきます。エディは「家っていうのは場所ではない。人なのよ。私たちが家なのよ」といい感じのことを語りますが、パッツィはなおも嫌がり、サフランロンは完全に無視します。
サフランが「私がやるわ」とパッツィの足をつかんで無理やり引きはがします。パッツィが人形だったのは明らかで笑、サフランロンは荒々しくパッツィをドアの外に放り出します。それを目の当たりにし、うろたえながらも「出て行ってやるわ」という様子で後に続くエディ。何かを言いかけたその瞬間、サフランロンはドアをバタンと閉めてしまいます。
女優だったパッツィ
エディのキッチンにビデオテープを数本持ってきたパッツィ。日本の会社がパッツィが過去に出演した映画の再リリースに関心を持っているというのです。
一方、エディの部屋には昨晩、新しい彼氏のピートが泊まっていました。彼はエディの昔の同級生で、パッツィや母親もよく知る人物です。ピートはアビーロードスタジオのエンジニアで、ビートルズの未発表テープを発見し、そのデジタル化作業を進めているところだと話します。エディはその未発表音源の披露パーティーを企画します。オノ・ヨーコとも電話でやり取りし、「さよなら、こんにちは、ヨーコさん」と言う場面も笑。
エディとパッツィはアビーロード・スタジオを訪れて、ピートの仕事に感動します。ピートを待つ間、エディは雰囲気に浸りながら空いていたマイクの前で適当に歌ってみます。一方、パッツィはスタジオ内を歩き回ってシャンパンを探します。そしてコントロールルームで誤って録音ボタンを押してしまいます。
披露パーティの当日、なんとエルトン・ジョン本人も招かれたものの、ピアノ要員として呼ばれたことを知って激怒して帰ってしまいます。
パッツィは自分の過去のビデオを上映しますが反応はイマイチだったようです(でも必見です笑)。披露する前に、ピートはエディにプロポーズし、リモートでオノ・ヨーコ(笑?)も登場します。そしてついに未発表のビートルズ・テープのプレイボタンが押されます。
固形物を食べるパッツィ
育児放棄されて育ったパッツィはクリスマスを嫌っており、この時期にはエディと旅行に出かけていました。しかし今年、エディは孫と一緒に自宅で過ごすことに決めていました。サフランは、家族が集まるクリスマスランチにパッツィを招待したくないようです。
今年はどこに行くのかと楽しみにしていたパッツィは、エディが何のチケットも用意していないことにショックを受けます。そしてエディに激しい頭突きをして部屋を出ていきます笑。その後、別の部屋でシャンパンをラッパ飲みしているイラついたパッツィの姿が・・・笑。
しかし、誰かがパッツィを呪っていたようで、彼女の呪いの人形に何本も針が刺されます。パッツィは入院することになり、症状が芳しくなかったため、エディは近親者を呼ぶように言われます。
その夜、病室に現れたのはパッツィの姉ジャッキー。遺書にサインするようパッツィに迫ります。
翌日のクリスマスの朝。
エディとサフランロンが病院を訪れるとパッツィが亡くなったことを知らされます。呆然とする二人の前に、トイレから出てきたパッツィ。昨晩亡くなったのはジャッキーだといいます。
今回、パッツィはクリスマスを少し好きになったかもしれません。エディにはもちろんのこと、サフランにも「メリークリスマス」とスマートに言葉をかけます(ちょっとかっこいい笑)。そしてエディの家でも「メリークリスマス」が止まらなくなります。
パッツィを交えた家族でクリスマスランチを囲みます。
何十年も固形物を口にしてこなかったパッツィが「ターキーを少し食べるから取り分けて」と言うと、全員が驚きと心配の入り混じった表情を見せます。パッツィの食べる様子は必見です。
視聴方法など
「Absolutely Fabulous」は、日本やイギリスのアマゾンで購入することができます。私が持っているDVDはイギリスのアマゾンでバラバラに購入したもので、英語の字幕が収録されています。
日本で購入すると値段が高かったり在庫がなかったりすることが多いので、イギリスのアマゾンから直接取り寄せたほうがお得になることが多いです。
ファッション業界の用語、慣用表現、スラング、文化的言及が数多く登場します。
イギリスの高級デパート、イギリスやその他海外のセレブリティ、ファッションモデル、ファッションブランド、イギリスの音楽プロデューサー、歌手、俳優、酒やたばこのブランド、イギリスのファッション雑誌などの名前だけでなく、著名人本人もたくさん登場します。
おわりに
エディの広々とした家のインテリアを楽しむのも、この作品の魅力のひとつです。彼女がたびたび改装するキッチンには、シャンパン専用の大型冷蔵庫が備わっていたこともあります。シャンパンがなくなると、まるでボウリング場のような仕組みで上から自動的に補充されていました。リビングルームやエントランスホールも美しく整えられており、エディのベッドルームも見逃せないポイントです。
20年以上前のシットコムということもあり、飲酒や喫煙の描写、さらには悪態をつくセリフも多く含まれています。そのような点で最近の視聴者には「合わない」と感じられることもあるかもしれません。下ネタも多く登場しますが、それを臆することなく言い切る彼女たちの爽快さもまたこの作品の魅力のひとつだと思います。男性に媚びることなく、本能のまま自由に生きる姿は、人生をもっと楽にするヒントになるかもしれません。