「レッド・ドワーフ」は、イギリスのSFシットコム(シチュエーション・コメディ)で、現在でも根強いファンを持っています。
1988年2月15日から1999年4月5日までBBC Twoで放送され、全8シリーズが制作され、その後、2009年から2020年にかけてDaveチャンネルで復活、さらに4シリーズとスペシャル版「The Promised Land」が追加されました。このシットコムは、1983年のラジオ・スケッチをもとに制作され、当初はBBCに却下されたものの、次第にカルト的な人気を獲得していったといういきさつがあります。途中に長期の休止期間を挟みながらも、現在に至るまで高い人気を誇っています。
2004年には、BBCの「英国のベスト・シットコム」視聴者投票において第17位にランクインしました。
SFと英国的ユーモアの独特な融合が本作の最大の魅力です。シャープな会話と個性豊かな登場人物たちが作品に彩りを加えています。放棄された宇宙船で繰り広げられる、不条理ながらも共感できる人間模様と、ユニークで創造的なストーリー展開が楽しませてくれます。
Red Dwarf(宇宙船レッド・ドワーフ号)あらすじ
21世紀の後半、宇宙空間を航行していた宇宙採掘船「レッド・ドワーフ号」。最下層の乗組員であるリスター(クレイグ・チャールズ)が、猫を密かに船に持ち込んだことで、罰として18か月のスタシス(時間停止状態)に入れられてしまいます。
その間、船内では放射性物質カドミニウムの漏れが発生し、放射能汚染によって乗組員全員が死亡してしまいました。仮死状態にあったリスターだけが難を逃れることができたのです。リスターが戸棚に隠していた愛猫・フランケンシュタインも生き延びており、そのとき妊娠していたことが後に重要な意味を持ちます。
リスターが目を覚ましたのは、地球人類がとうに滅びてしまった300万年後の未来。宇宙船に搭載されていたAIホリー(ノーマン・ラヴェット/ハッティ・ヘイリッジ)は、放射能が安全レベルになるまでリスターをスタシス状態のまま保っていたのです。
300万年もの歳月が経過していたことに、リスターは当然ながら大きな衝撃を受けます。彼は、人類最後の生き残りであり、そんなリスターの孤独を和らげるため、AIホリーはかつての乗組員の中から1人を選び、ホログラムとして復活させます。ところが選ばれたのは、なぜか自己中心的で魅力ゼロの同僚・アーノルド・リマー(クリス・バリー)でした。
「爆発前にリスターが一番多く会話を交わした相手がリマーだった」という、ただそれだけの理由から彼が選ばれたのです。
そして、長い年月の間に、愛猫フランケンシュタインの子孫は進化を遂げ、猫型生命体・キャット(ダニー・ジョン=ジュールズ)が登場します。
リスターは「レッド・ドワーフ号」で地球への帰還を目指します。彼はインド料理、中でも特に「チキン・ヴィンダルー」が大のお気に入りで、しばしばその名を口にし、カレーやビールといった懐かしい日常を取り戻すために船に残された仲間たちと共に、地球を目指して宇宙を旅します。
船員たちは個性的で愛すべきキャラクターばかりです。のんびり屋で愛嬌たっぷりなリヴァプール訛りのリスターをはじめ、自己中心的で派手な外見を持つナルシストなキャット、皮肉屋ながらどこかのんきなAIホリー、そして個人的に気になるのは神経質で皮肉屋なホログラムのリマーです。
リマーは生前、階級では下から2番目(最下位はリスター)という低い地位にいました。彼は自分勝手で、他人を蹴落として昇進しようとする小物感あふれる人物。ホログラムになってもその性格はそのままで、人間時代の劣等感や執着が色濃く残っています。「レッド・ドワーフ号」での放射能漏れの原因も、実は彼にあるのではないかと本人も気にしているようです。そんな彼の“ダメっぷり”が突き抜けているからこそ、「今度は何をやらかすんだろう?」と、目が離せなくなってしまいます。ホログラムになっても人間臭い彼ですが、自分の小ささを気にしているところもあり憎めません。
主要なキャスト
デイヴ・リスター
だらしないが愛嬌ある最後の人間、リヴァプール訛りが特徴。シリーズ1第1話から登場。
デイヴ・リスター役のクレイグ・チャールズ (Craig Charles) は、『Coronation Street』や『The Governor』に出演。
アーノルド・リマー
神経質で権威主義的なホログラム、皮肉屋。シリーズ1第1話から登場。
アーノルド・リマー役のクリス・バリー (Chris Barrie) は、『The Brittas Empire』や『Spitting Image』に出演。
キャット
猫から進化したナルシスト、派手で自己中心的。シリーズ1第1話から登場。
キャット役のダニー・ジョン=ジュールズ (Danny John-Jules) は、『Death in Paradise』や『Maid Marian and Her Merry Men』に出演。
クライテン
几帳面で忠実、ユーモラスなメカノイド。シリーズ2第1話「Kryten」から登場(当初はゲスト、シリーズ3からレギュラー)。
クライテン役のロバート・ルウェリン (Robert Llewellyn) は、『Scrapheap Challenge』や『How 2』に出演。
ホリー(男性AI)
皮肉っぽくのん気な男性AI、船のコンピュータ。シリーズ1第1話「The End」から登場(ノーマン版)。
ホリー役のノーマン・ラヴェット (Norman Lovett) は、『I, Lovett』や『Asylum』に出演。
ホリー(女性AI)
冷静で少し抜けた女性AI、船のコンピュータ。シリーズ3第1話「Backwards」から登場(ハッティ版)。
ホリー役のハッティ・ヘイリッジ (Hattie Hayridge) は、スタンドアップコメディや『Jonathan Creek』に出演。
クリスティン・コチャンスキー
知的で現実的なリスターの元恋人。シリーズ7第1話「Tikka to Ride」からレギュラー登場(以前はゲスト)。
クリスティン・コチャンスキー役のクロエ・アネット (Chloë Annett) は、『Byker Grove』や『Crime Traveller』に出演。
脚本
ロブ・グラント、ダグ・ネイラーの共作であり、シリーズ1〜6は共同、7以降はネイラー単独によるもの。
「レッド・ドワーフ号」以降は、どちらもBBCやITV向けに脚本を書いています。
気に入っているエピソード
気に言っているエピソードはいくつもありますが、シリーズ7の「なぜかリマーが恋しくて(Blue)」のあらすじを記してみます。
ストーリーは、リマーがふとしたきっかけで宇宙船から去ってしまうところから始まります。普段から「リマーは嫌な奴だ」と感じていたリスターでしたが、なぜか彼のことを恋しく思い始めます。
リマーへの想いは夢にまで現れます。夢の中でのリマーは、どこかヒーローのようなたたずまいです。話し方もとてもりりしく、そんなリマーに対してリスターも打ち解けて素直な気持ちを見せます。
二人は「I miss you(会いたかったよ)」と互いに想いを伝え合い、ついにはキスを交わしたところで・・・目が覚めます笑。
目覚めたリスターは、「どうしてこんなにもリマーが恋しいんだろう」と悩み始めます。そこへクライテンが現れ、「リマーの日記をもとに作成した『リマーの脳内』というアトラクションを即席でこしらえた」と告げます。
リスターたちはさっそくそのアトラクションに乗り込み、「リマーの脳内」を体験することに。
そのアトラクションは、まるでテーマパーク「○○ランド」にあるような椅子型ライドで、乗り込むと発進や停止に合わせて上半身もガクンと動くのがなんともリアルです。
そこでリスターたちが目にしたものは・・・。
そこに広がっていたのは、レッド・ドワーフ号の操縦室。
りりしい顔立ちにメイクまで施されたリマーが、堂々とした態度でテキパキと指示を出しています。眉毛も太く、キリッとしています。
なぜかエプロン姿のクライテンは、そんなリマーに従いながら「いつもあなたは正しいですね」と称賛を惜しみません。一方、リスターとキャットは、まるで子供のように操縦席ではしゃぎながら、無造作に操縦ハンドルを動かしています。
さらに、なぜかリスターとキャットもメイクをしており、目がクリクリと大きく描かれたその姿は、マヌケな様相です。そして彼らはにっこりと笑いながら、「僕が生きているのはリマーのおかげ」と口にするのです・・・。
ネタバレしない方が良いかと思いますのでここまでで。
視聴方法など
「レッド・ドワーフ号」は、YouTubeにいくつかのエピソードがアップロードされているようですが、Youtube内で有料での視聴できるようです。
DVDでは日本語版も存在しますが、英語のリスニングとして活用したい場合は、DVDでの視聴がおすすめです。その際、イギリスのアマゾンから直接購入してしまうのもお勧めです。イギリスで発売されているDVDセットは、時間が経過すると価格が大きく下がることも多いため、定期的にチェックしてみてください。
おわりに
人気のエピソードとしてよく挙げられるのは、以下の3本です。
「The End」(シリーズ1):リスターが仮死状態から目覚める第1話。作品の世界観を鮮烈に提示し、多くの視聴者の心をつかみました。
「Backwards」(シリーズ3):時間が逆に流れる地球に着陸するという、奇抜な設定とユニークな視覚効果でファンを魅了した回です。
「Gunmen of the Apocalypse」(シリーズ6):ウイルスに侵されたクライテンを救うため、乗組員たちが西部劇風のVRゲームに入り込むという内容で、ジャンルの融合が秀逸です。エミー賞を受賞したことでも話題となりました。
また、シリーズ7〜8では映像が映画的な演出に変更されたことで、従来のライブ観客による笑い声がなくなり、番組の雰囲気が変わってしまったと感じるファンもいます。さらに、長らく噂されていた映画版が結局実現しなかったことを惜しむ声も多くあります。