「September」は、1996年に放送されたイギリスのドラマ。
原作はロザムンド・ピルチャー(Rosamunde Pilcher)による1990年出版の「September」。日本では「九月に」の題で、上巻・下巻に分けて翻訳本が出版されています。「Shell Seekers」のノエル・キーリングがこのドラマで「ニール」として登場。
1990年代のスコットランド・ハイランドを舞台に、貴族家系が9月に誕生日パーティーを開催。20年前にこの地を去ったパンドラが招待されることになり、帰郷した彼女と関わった人々の過去が次第に明らかになっていきます。
キャストは、ジャクリーン・ビセット、エドワード・フォックス、マイケル・ヨーク、ジェニー・アガター、マリエル・ヘミングウェイ、ヴァージニア・マッケンナ、ポール・ギルフォイルなど。
オープニングタイトルの背景には、美しいハイランドのLoch(スコットランドでの湖の呼び方。以後「Loch」で統一)で水死体が発見されます。近くで見つかったパシュミナ・ストール(大きめのスカーフ)が意味深です・・・。(画像は引用目的で使用しています)
September(九月に)あらすじ
1990年代のスコットランド・ハイランドの架空の村「ストラスクロイ(Strathcroy)」。貴族家系が暮らす典型的な田舎のコミュニティで、エアード家(Aird)、バルメリーノ家(Balmerino)、ステイントン家(Steynton)が主な土地所有家系です。
エアード家のヴァイオレットは一族の女家長。息子のエドマンド(マイケル・ヨーク)はエアード・エレクトロニクスの社長で、後妻のヴァージニア(マリエル・ヘミングウェイ)は若いアメリカ人。8歳の息子ヘンリーは頭がよく、両親や祖母をとても慕っています。ヴァイオレットはコテージに、エドマンド一家はエアード家の本邸「バルネアード・ハウス(Balnaird House)」に暮らしています。ヘンリーが可愛いです。
バルメリーノ家には、エドマンドと同世代のアーチー・バルメリーノ卿(エドワード・フォックス)と妻のイゾベル(ジェニー・アガッター)が住んでいます。財政難を抱えるバルメリーノ家は邸宅を観光客向けに開放し、イゾベルが自家用車で地域を案内することで収入を補填しています。所有する土地の多くを貸し出し、エドマンドが統括する狩猟組合に土地を売却した経緯もありますが、伝統を守ろうと努めています。
ステイントン家では、ヴェレナが観光客を地域の貴族邸宅(バルメリーノ家など)へ案内する事業を経営。娘ケイティの21歳の誕生日を祝う盛大な舞踏会を9月に計画しています。舞踏会の前日がヴァイオレットの誕生日だと知ると、「舞踏会で一緒に祝おう」と提案。しかしヴァイオレットは、自分の誕生日にはLochでピクニックをするのが伝統で、この地域のLochは舞踏会と同じぐらい素晴らしいものだと話します。彼女はこの土地を愛し誇りに思っているのです。
ヴェレナがアーチーの妹パンドラも招待するつもりだと話すと、ヴァイオレットの表情が一瞬曇ります。他の地域から来たヴェレナは、パンドラの名前が出ると空気が変わることに気づいており、「海外でパンドラと知り合った貴族夫妻が舞踏会で会いたがっている」と説明。しかしヴァイオレットは長年戻っていない人物だからと反対します。
ヴェレナがアーチーの妻イゾベルにもパンドラ招待について触れると、こちらも同様に表情を曇らせます。実際にどのような人物だったのかと尋ねると、イゾベルは「パンドラはとても魅惑的で美しく生命力に満ちた女性だった」と答えます。ヴェレナは「それなら招待しても問題はないはず」と理解します。
エアード家
社長のエドマンドは分刻みで仕事をこなし、周囲はその手腕に感謝しつつも、エドマンドの独断専行に時おり不満を感じているようです。エドマンドはヘンリーの寄宿学校の入学手続きも進めてしまい、ヴァージニアに反対されます。自分も寄宿学校で学んだ経験があり、ヘンリーの賢さを伸ばしたいと主張するエドマンドに対し、ヘンリーはまだ8歳だと訴えるヴァージニア。ヴァイオレットは、ヘンリーがまだ家を出たくないと思っていること、エドマンドの頑固さ、そしてスコットランドで今でもよそ者だと感じているヴァージニアの気持ちに寄り添います。
ヴァージニアは航空券を手配し、ロンドンへ出かけてしまいます。90年代なので電話予約の時代でしたね・・・。向かった先はエドマンドと前妻の娘アレクサが住むフラット(アパートメントのこと)。ハロッズを含む多くの買い物袋を下げて「気晴らしにエドマンドのクレジットカードを使ってやったわ」というヴァージニアに、アレクサは「ハロッズの半分がここにあるわね」と笑います。買ってきたものの中に美しいパシュミナのショール。「あのパシュミナは冒頭シーンの・・・」と思い出してしまいました。
アレクサは恋人のニールをヴァージニアに紹介します。このニールは「シェルシーカーズ」のノエル・キーリングで、彼の母が亡くなってから4年が経っている設定のようです。前作と同様、彼の職業はベンチャーキャピタリスト。あまり良いキャラクターではなかったので少し心配です・・・笑。アレクサも舞踏会の招待状を受け取っており、スコットランドの土地柄や慣習を敬遠するニールは同行をためらいますが、ヴァージニアは一緒に来るよう促します。
ロンドンから戻るヴァージニアを、花やジュエリーを用意して待ちわびていたエドマンド。ヴァージニアはアレクサの近況と恋人のニールについて話し、エドマンドは独断でヘンリーの寄宿学校行きを進めてしまったことを認めます。ヴァージニアは寄宿学校に反対のままだけど、和解案として、エドマンドがヘンリーを寄宿学校まで送り届けることを約束させます。ヘンリー自身が行きたくないと言っているのに結局行くことに。かわいそうなことです。
ヴァイオレットのコテージで長年働くハウスキーパーのエディには、精神的に不安定な従姉妹ロッティがいます。ロッティは過去にバルメリーノ家でハウスキーパーをしていた経験があり、現在は繰り返す奇行のため病院暮らし。そのロッティが一時退院してエディの家に滞在することを知ったヘンリーは、エディとも仲がいいので不安に。そして退院したロッティは、エドマンドやパンドラについて意味深な中傷を口にするのです・・・。
エドマンドは村でロッティと遭遇し、過去の出来事を蒸し返すような不穏な言葉を投げかけられます。パンドラの名前が出ると、動揺した様子のエドマンド。過去に何かがあったようです・・・。
バルメリーノ家
ヴァイオレットからパンドラの招待について知らされたアーチーは「決して来ないだろう」と断言。ヴァイオレットは「もし彼女が来るとしたら、誰がエドマンドに知らせるのか」と心配します(母親なのに・・・)。
アーチーは村の教会での説教を定期的に担当しています。教会はアーチーの父が建てたもので、老朽化が進んでいます。エドマンドは狩猟組合による教会の修繕計画や、外部資本による農業投資の話を持ち込み、地域の発展に努めるものの、アーチーがいつも賛同しないため二人はしばしば言い争いに。バルメリーノ家は財政難にありながらも、スコットランド貴族としての誇りや伝統、独立心を守ろうとしているようです。
アーチーはフォークランド紛争で片足を失い、部下が戦死したことへの後悔から、深いトラウマを抱え悪夢にうなされ続けます。彼の趣味の彫刻制作を行う作業場で一人で過ごすとき、パンドラとのやり取りがよくよみがえります。「エドマンドはパンドラを愛してはいないし、子どもも欲しくないだろう」というアーチーの声と、「アーチーが嫌いだ」「どうして助けてくれないのか」「もう問題はなくなったから家名が汚されることはない」というパンドラの声・・・。
ほどなくして、放浪生活を送っている娘のルシラから連絡があります。ルシラは一緒に旅をしている恋人だけでなく、最近連絡が取れたパンドラも連れて舞踏会に参加するといいます。
20年ぶりに戻ったパンドラ
ヴァイオレットは、パンドラが帰ってくるという知らせを聞いて驚きます。
エドマンドへはアーチーから伝えられました。バルメリーノ家での昼食会にエアード家全員が招待されます。最近の地域開発についての二人の口論を話題にするのかと皮肉るエドマンドに、「パンドラが帰ってくる。いつかは会わないと」と答えるアーチー。エドマンドの顔色が変わります。何も知らないヴァージニアはパンドラに会うことが楽しみだといい、エドマンドは、彼女はあまりフレンドリーではないかもしれないと前置きを入れます。
パンドラ(ジャクリーン・ビセット)が帰宅すると大喜びのアーチー。そんな素振りを周囲に見せなかったのに、大好きな妹が戻ってきて嬉しい様子です。
パンドラは、改装されていなくても構わないから昔の自分の部屋と、昔のように皆でキッチンで食事をしたいと希望します。しかし食事中、パンドラは一瞬、意識が遠のくような感覚に襲われます。
彼女はまだ9月だというのに外では毛皮を着てサングラスを着用。痩せているので、家族は、まさかドラッグなどしてないだろうかと密かに心配します。ルシラは、パンドラにはカルロという親密な友人がいて、二人はかなり裕福に暮らしていると話します。
パンドラは、バルメリーノ家の屋敷や暮らしが大きく変わり、馬は売られ、土地は農地として貸し出され、経済的に追い詰められていることを知ります。イゾベルは、家計の苦しさや、アーチーが戦争で脚を失って以来生きる意欲を失い、夜も悪夢に苦しんでいる現状を打ち明けます。
一方、人目を避けて電話をかけるパンドラ。通話相手は納得していない様子で、彼女に戻ってくるよう説得しています。彼女はここで片付ける用事があるから、もう連絡してくるなと話を終わらせます。
昼食会で
昼食会の日。鏡の前のパンドラはずっと考えにふけります。鏡の前の90年代のニナ・リッチの「ニーナ」という香水が懐かししい笑。
昼食会は穏やかに進み、パンドラはエアード家のメンバーと積極的に接します。食後、一同は庭に出てクロケットで遊び始めます。毛皮にくるまり、離れて座るパンドラに近づくエドマンド。過去の話を始めるパンドラに、エドマンドはどうして戻ってきたのかと尋ねます。舞踏会の参加と、村の皆がどうしているかを見てみたかっただけだと答えるパンドラ。エドマンドは前妻を亡くしてずっと忙しく働き、幸いにもヴァージニアが現れて今は幸せだと強調します。
エドマンドと入れ替わりでやってきたヴァイオレットは、パンドラがいなくなってからアーチーが必死で探し、パンドラがアメリカにいたことを知ったと話します。「若さと退屈から起こした行動だった」と振り返るパンドラ。ヴァイオレットが「あなたの滞在は舞踏会までかしら」と確認すると、パンドラは聖書の放蕩息子のたとえ話を出し「表向きは温かく迎えられるけど、歓迎は一時的なものね」と皮肉ります。
エドマンドはパンドラを避け、家族で早めに引き上げます。
紐解かれていく過去・・・
ロッティがヴァージニアに声をかけます・・・。
ロッティはパンドラとエドマンドの過去や、パンドラの妊娠、周囲の隠匿や黙認、エドマンドは残酷な人物で皆が何が起こっていたか知っていたとほのめかします。
揺さぶられたヴァージニアは、パンドラにどうして戻ってきたのかと尋ねてしまいます。エアード家のメンバーから歓されないパンドラ・・・。
一方でパンドラはバルメリーノ家や村ののどかな日常を楽しみます。
パンドラはイゾベルと一緒に外出し、イゾベルの舞踏会用のドレスを購入。カフェで勝手に予約席に座り、注意をしに来た店員に「レディ・バルメリーノが最高級シャンパンを1本注文するから」と納得させます。「スノッブの力を侮ってはいけないわよ」と、貴族らしいウィットを恐縮していたイゾベルに示すのです。
パンドラはアーチーと改めて昔について語り合います。アーチーはパンドラの味方をしてあげられなかったと言い、パンドラは自分はわがままだったし、一族に私生児の男爵はありえなかったと話します。そして、実際には中絶ではなく、車の事故で流産したと打ち明けます。誤解したまま20年も経ってしまったことに呆然とするアーチーに、パンドラは、過去を思い出すのに心をすり減らすのではなく、今あるものに感謝すべきだと伝えます。そしてアーチーは改めてイゾベルと向き合うことに。
エアード家では、エドマンドの急な仕事の都合で、彼がヘンリーを寄宿学校に送れなくなります。それがたった1つの条件だったのにどういうことかとヴァージニアは強く反発。ヘンリーも動揺します。
泣く泣くヘンリーを送り届けたヴァージニアは帰り道、昔の知人であるアメリカ人のコンラッド・タッカー氏と出会い、再会に驚き喜びます。コンラッドは舞踏会の晩にバルメリーノ家に宿泊するゲストでした。息子を置いてきたヴァージニアは今日が人生で一番つらい日だと打ち明け、最近妻を亡くしたコンラッドはアメリカにいた頃、ヴァージニアを好意的に思っていたと話します。その晩、コンラッドはエアード家に宿泊し、お互いにもう違う人間で違う人生を歩んでいることを確認しつつも、夜を共にしてしまいます・・・。
しかし翌日、ヴァージニアは勝手にキッチンに入り込んでいたロッティを見つけて震え上がります。出ていけと言われても応じないロッティは、昨晩、屋敷のゲストルームの窓からヴァージニアとコンラッドが見えたと主張。警察を呼ぶと警告されても、それなら昨日見たことエドマンドや地方紙に話すというのです。
ヴァージニアは、ヴァイオレットに過去に何があったのか問い詰めます。エドマンドさえ何も話していなかったことに驚きですが・・・。
ヴァイオレットは問題を公にせず内密に扱ったと説明しますが、黙っていたのはヴァージニアを傷つけたくない配慮と、おそらく家の体面を守るためだったのかと・・・。詳しくは知らないとしつつ、アーチーの結婚式のとき、既婚のエドマンドとパンドラの関係が始まり、周囲は関係が自然に終わることを期待したものの、そうはならず、パンドラが妊娠してしまったと語ります。パンドラとアーチーの間に激しい口論があり、彼女は中絶手術を受けるためにロンドンへ向かったまま帰ってこなかったのです。
それを聞いたヴァージニアは、パンドラはいまだにエドマンドを思っているのではと推測。そしてロッティがキッチンでわめき散らしたことにも触れると、エドマンドは嘘だと分かっているから心配いらないと応えるヴァイオレット。しかしヴァージニアはそれは本当の話だと告白します。
ロッティは村で問題を起こし再び病院送りに。最初に退院した時点でも、そんなに安定していたようには見えませんでしたが・・・。
祖母からの手紙を何度も読み返すヘンリーは、ロッティが病院に戻ったことを知り安心します。悲しいことにヘンリーは学校でいじめに遭っており、ある日寄宿学校から脱走しバスに乗って村に向かいます。
Lochでのピクニック
毎年恒例の、ヴァイオレットのバースデー・ピクニックがLochのほとりで行われます。バルメリーノ家も招待され、ロンドンからはアレクサとニックも到着します。
ヴァイオレットは、ニールの本質をすぐに見抜いた様子(「シェルシーカーズ」の彼は、自己中心的で物質主義的な性格でした)。自身の祖父や父を例えに、孫のアレクサを傷つけることになるなら手遅れになる前にさっさとやってほしいとニックに頼みます。
バルメリーノ家と一緒にやってきたコンラッドは、翌週にはアメリカに戻るので、一緒に来て欲しいとヴァージニアに告げます。
出張から戻ったエドマンドに、ロッティがまた入院したことや、彼女から昔話を聞かされたことを伝えるヴァージニア。ヘンリーは寄宿学校で、ここにいる理由もないからとアメリカへしばらく行くつもりだと告げ、同時にコンラッドの存在についてもほのめかします。
舞踏会の日の午後(舞踏会は夜から)、バルメリーノ家での食事に到着するエアード家。皆が舞踏会のために着飾る中、ヴァイオレットはエアード家のメンバーのそれぞれを案じます。ヴァージニアとコンラッドを気にするエドマンド、パンドラとコンラッドを気にするヴァージニア、無邪気に親しげにルシラと話すニールを気にするアレクサ、そしてヴァージニアを気にかけているコンラッド・・・。ヴァージニアは、ロンドンで買ったパシュミナのストールを羽織っています。
ヴァイオレットのもとには、ロッティが行方不明になったという連絡が入ります。8歳のヘンリーは、バスで村に向かっている途中だし、冒頭の水死現場のシーンもあり、ちょっとしたサスペンス要素が登場します。
ネタバレせずにここまでで・・・・。
おわりに
パンドラの帰還を聞いて顔を曇らせる人が何人かいて、「誰がエドマンドにそれを伝えるのか」といった言葉まで出てくると、パンドラはどれほど要注意人物なのかと思ってしまいました。パンドラ役が70年代の映画「The Deep」で魅力にあふれていたジャクリン・ビセットなら納得です。
彼女は実家や美しい村を楽しみ、過去を整理するために帰ってきただけなのに、エアード家から「どうして帰ってきたの」と問われてしまったのが切ないです。バルメリーノ家にはポジティブな影響を与えているのに、過去のことがなければ、魅力的でウィットに富み、誰からも愛されるような人物なのに・・・。
ジャクリーン・ビセットはアンジェリーナ・ジョリーの名付け親(ゴッドマザー)とのこと。女優のエミリア・フォックスは、アーチー役のエドワード・フォックスの娘、ヴァージニア役のマリエル・ヘミングウェイはアーネスト・ヘミングウェイの孫です。



