2000年初めのことです。
当時は世界的にスピリチュアルブームだったこともあり(多分)、住んでいた市内にスピリチュアリスト・チャーチ(Spiritualist Church)があったので出かけてみたことがあります。
イギリスのスピリチュアリスト・チャーチは、スピリチュアリズム「心霊主義」を基盤とした宗教的・霊的な集まりで、霊とのコミュニケーションや霊的現象を通じて死後の世界や霊魂の存在を信じ、探求する団体です。スピリチュアリスト・チャーチは多くの地域にあり、現在私が住んでいる地域にも3つほどあるようです。
スピリチュアリスト・チャーチに出かけてみる
私は何かが見えるわけではなく、占いのようなものに依存するタイプでもありません(「へぇ、ふーん」といった感じです)。日本にいたときに「見える」知り合いがいて、その子に会ったとき「おばあちゃんって言葉が浮かんだんだけど」と言われたことがありました。数週間前に老人ホームに入っていた祖母を親戚一同で見舞ったのですが、どうしても外せない用事で私だけ行けなかったことを思い出し、そのことを指しているのではないかと考えました。
祖母には霊能力があった時期があり、それによって近所の人たちを助けていたと父から聞きました。それを知ったのは祖母が亡くなってからのことで、もっと早く教えてくれていれば色々と話を聞けたのにと思いました。そのことが何となく頭にあったのと、当時ブームになっていたスピリチュアルに少し興味があったこともあり、スピリチュアリスト・チャーチに足を運んでみることにしたのです。
イギリスのスピリチュアリズム
イギリスのスピリチュアリズムは、1848年にアメリカで始まったフォックス姉妹の心霊現象をきっかけに1850年代に伝わったそうです。
1853年にヨークシャーのキースリーで初期のスピリチュアリストの集まりが組織され、スピリチュアリズム専門の新聞「Yorkshire Spiritual Telegraph」も発行されたそう。19世紀後半には、心霊現象を科学的視点から研究する心霊現象研究学会(Society for Psychical Research、SPR)が設立、信仰と科学の両面から関心を集めました。20世紀初頭には全国組織であるスピリチュアリスト国立連合(Spiritualists’ National Union、SNU)が結成されました。最盛期は1920〜30年代とのことです。現在は小規模ながらSNUや独立系の教会や団体が活動を続けているそうです。
スピリチュアリスト・チャーチの活動?
スピリチュアリスト・チャーチでは、一般的なキリスト教会と似た形式で日曜礼拝が行われたり、霊媒師(以下、ミディアム)によるスピリチュアル哲学の講話や霊との交信「リーディング」が行われたりします。ミディアムは中心的な役割を担い、参加者に対して守護霊や亡魂からのメッセージを伝える「デモンストレーション」を行います。これには特定の個人への霊的メッセージの伝達やヒーリングセッションが含まれる場合もあります。また、霊媒能力の開発を目的とした練習会やワークショップでは、参加者が瞑想や霊視の技術を学びます。
スピリチュアリスト・チャーチは興味本位での参加を歓迎しているようです。多くのチャーチは、スピリチュアリズムに初めて触れる人や好奇心を持つ人々に門戸を開いており、特定の信仰や強いコミットメントを求めることはありません。例えば、日曜礼拝や公開の霊媒デモンストレーションには気軽に参加でき、事前登録が不要な場合も多いです。礼拝やワークショップは単発での参加もOKなことが多く、定期的な出席や会員登録の義務も、強制的な勧誘や継続参加の圧力も通常はありません。
チャーチに入ってみる
始まりは夕方7時ごろだったと思います。受付には数人の人がいて、入り口に立った私に「あなたは何かが見える人ですか」と声をかけてきました。私が「そういうわけではないのですが、参加だけしてもいいですか」と答えると、「それでしたら好きなところに座ってください」と中に通してもらいました。そのとき寄付金として2〜3ポンド払った気がします。
会場は中央に通路があり、その両側に椅子が通路に向かって簡易的に並べられていました(イギリスの国会のような配置)。見学者は合計で40人ほどでした。1人ずつ個別の部屋に入るわけでも、カーテンで仕切られたスペースがあるわけでもなく、デモンストレーションは公開で行われました。
何人かのミディアムは前方の席に座っており、メッセージを伝えるときには中央の通路を歩いて該当の人の前に立ちます。来ていた人すべてがメッセージを受け取るわけでも、希望していたわけでもなく、私のようにただ見学に来ている人も多かったと思います。しかし、中には最近家族を亡くし、その家族からのメッセージを求めている人や、何年も前に亡くなった家族について質問したい人もいました。特に最近家族を亡くした人は、泣きながら話を聞いていました。
その後もミディアムたちは交代で話をしました。その中の若い女性は、最近能力が開花し練習のために来ていたようでした。彼女は対象者に向かって、集中して考えながら浮かんできた情報をたどたどしく口にしていました。何度も「Please bear with me…(すみません、少しお待ちください)」と言っていたのが印象的でした。しばらく練習したあと、入り口で私に話しかけた女性がそのリーディングを引き継ぎ、「このような霊がやってきていて、このようなメッセージを伝えたいのだと私には見えます」と補いました。その他もデモンストレーションは行われました。
私へのメッセージが・・・
すると、年配のミディアムの女性が「メッセージが1つあります」と立ち上がりました。そして、私の座っていた辺りにゆっくりと歩いてきました。「私へのメッセージだったりして」とカジュアルに考えていたら、なんと、私の方を見て「あなたにメッセージがあります」と話しかけてきたのです。
メッセージは一度きりでしょうから、ここで頭を真っ白にしている場合ではないと全集中して聞きました。彼女は「女性が一人、あなたのそばにいます。あなたの祖母のようなイメージです。何か気がつくことがありますか。それから彼女の足元には犬がいますね・・・」とのこと。そして、その他の点についていくつか触れた後、「この女性が伝えたいことは、あなたが心配事や抱えていることがあったとしても、それらは霧のように晴れるので心配しないこと。あなたは何でも好きなことをしていいし、それらは成功するので自分の心に従いなさい、ということです」というのです。
一瞬の出来事のようで、私は「ありがとうございます」と答えるのがやっとでした。周りに座っていた人たちも「あら、よかったわねー」という意味で「Ohhhh」と声をもらしていました。こういう感じのメッセージはあまりないのかもしれません。
それから帰途につくまで、そして家に帰ってからもずっとそのことを考えて、満たされた気分を感じていました。私としてはそのメッセージだけで十分であり、それ以上尋ねたいこともありません。スピリチュアリスト・チャーチに行ったのはそれが最初で最後でした。「またメッセージをもらいたい」と期待して行くのは依存になるだろうし、他にもメッセージを受け取りたい人がいるでしょうから。
「よくある一般的なメッセージでしょ」という人もいるかもしれません。他に色々とメッセージをもらいたい人はもらえばいいし、「これで十分だ」と自分の人生を信じて、心を自立させることを選ぶのもありだと思います。
おわりに
スピリチュアルなことには今も興味があり、ゆるいペースで独自にリサーチを続けています(引き寄せの法則やエンジェルナンバーのようなものではありません)。これについては、さまざまな人と出会って楽しい経験をしています。縁があって入手した書籍が気に入り、その著者の予約を取ってZOOMで直接話をしたこともあります。