St. Trinian’s(聖トリニアンズ女学院)あらすじと感想

「St. Trinian’s(聖トリニアンズ女学院)」は、2007年に公開されたイギリス映画。
原作はロナルド・サールの漫画「St Trinian’s」シリーズで、1954年から1966年にかけて4作、1980年に1作が映画化されています。2009年には続編「聖トリニアンズ女学院2」も公開されています。

聖トリニアンズ女学院は、表向きには伝統ある全寮制の女学院ですが、実際には規律が崩壊しており、生徒たちは無法地帯のようにふるまいます。行動はかなり大胆ですが、私立校らしく裕福な家庭の子が多く、決して下品には見えません。見ていて清々しささえあり、それぞれが個性豊かです。

シリーズを通して、女性校長役を男性俳優が演じており、今回はルパート・エヴェレットがフリットン校長とアナベルの父を兼ねています。

オープニングのタイトルから、聖トリニアンズらしい無秩序さや反骨精神、自由で個性にあふれた雰囲気が伝わってきます。

(画像は引用目的で使用しています)

目次

St trinian’s(聖トリニアンズ女学院)あらすじ

真面目な女子高生アナベル・フリットン(タルーラ・ライリー)は、父に連れられ、名門チェルトナム女子高からセント・トリニアンズに転校させられることに。

車中「転校する必要はないと」主張するものの、父(ルパート・エヴェレット)はすでに決めている様子です。車は森の中を行き、「どこへ連れて行くの?」とでも言いたげな表情のアナベル。やがて「聖トリニアンズ女学院」のサインが見えるも、その隣には骸骨に包丁が刺さったオブジェがあり、建物内に入ろうとすると、上の階から机が落ちてきて中の紙が舞います。

受付にいたベバリー(ジョディ・ウィテカー)はヘッドフォンで音楽を聴いていて、アナベルたちが来たことにしばらく気づきません。嫌な予感しかしないアナベルが上を見上げると、女子生徒たちがずらっとこちらを見下ろしていたように感じますが気のせいだったようです。ただ、その勘は当たっていました。
ジョディ・ウィテカーは、「ドクター・フー」の13代目ドクター役を務め、初の女性ドクターとして歴史を刻みました。ドラマ「クランフォード」の続編ではペギー役で登場します。

アナベルと父は校長室へ向かいます。校長のカミラ(ルパート・エヴェレット)は父の姉であり、彼女の叔母。

外から悲鳴が聞こえたので、アナベルが窓の外を見ると、生徒がトレーラーを運転しもう一人が足をロープでつながれたまま引きずられています。衝撃を受けたアナベルは「ここに置いていかないで。ここは下品な連中向けのホグワーツよ」と訴えますが、父は取り合わず、カミラに学費の家族割引を要求するのでした。

学校内のグループとは

アナベルは、生徒会長のケリー・ジョーンズ(ジェマ・アータートン)に校内を案内されます。
父のことが大好きなアナベルは、「私の父はメイフェアで美術商をやっているの。校長は叔母よ」と自信たっぷりに話しますが、ケリーは特に関心を示しません。この学校では、そうしたことはまったく重要ではないのです。

ケリーは校内のグループについて説明します。「チャブス」「ポッシュ・トッティ」「ギーク」「エモ」、そして「1年生」たちです。

「チャブス」は派手な見た目と強気な態度が特徴、「ポッシュ・トッティ」はグラマラスでセクシーなスタイルのグループ、「ギーク」は理系やITに強い知識派、「エモ」は内向的でアート寄りな雰囲気があり、「ゴス」は黒い服に厚化粧、ダークな世界観を好みます。

1年生たちはまだ幼く、みんなで何かを賭けて盛り上がっています。アナベルが「彼女たちは何を賭けてるの?」と聞くと、「あなたがどれくらい続くかについて」と言われてしまいます。

その後、アナベルはシャワー中にお湯を止められ、タオルや服も隠され、裸で自室に戻る様子はなんとライブ配信されてしまいます。アナベルは、こんな場所にはいられないと荷物をまとめて父に電話します。ところが、「忙しい」と言われ、背後からはパーティのような騒ぎが聞こえます。さらに父は回線が悪いふりをして話をはぐらかします。

怒りに任せてアナベルはホッケーのスティックでスマートフォンを叩き壊し、その勢いで踊り場にある銅像を壊してしまいます。それを見ていた体育教師(フェネラ・ウールガー)から、ホッケーチームに入るよう要請されます。

詐欺師フラッシュ

女子生徒たちは、詐欺師フラッシュ・ハリー(ラッセル・ブランド)と取引をしています。学校の施設を使ってウォッカを作っているものの、品質にはばらつきがあるようです。フラッシュによれば、苦すぎるものもあれば、2杯目で失明したり、亡くなった人もいたとのことです。ブラックユーモアですね・・・笑。

今回のバッチについて「大丈夫か?」と聞かれ、ロシアの生徒が呼ばれてショットを飲んで確認します。「これは大丈夫」と言うものの、そのまま倒れてしまいます。彼女のロシア語の「乾杯」がかっこいいです。

フラッシュはケリーのことが気に入っているようですが、ケリーのほうはそうでもないようです。彼はケリーに他のビジネスの相談も持ちかけており、彼女はどの方面からも頼りにされているようです。

車でやってきたフラッシュは「車をシルバーにしておいて」と言って中に入り、帰るときには車がシルバーに変わっています。取引の話をしている間に生徒たちが塗装をしていたようです。
無法地帯だと言われる学校ですが、ウォッカの製造から車の塗装までこなす彼女たちの手際を見ていると、案外優秀な生徒たちなのかもしれないと思えてきます。

教育大臣ジェフリー

教育大臣ジェフリー・スウェイツ(コリン・ファース)は、全国的な教育改革を推進中。

まず最も問題のある学校から取りかかる方針で、対象に選ばれたのが聖トリニアンズ女学院です。この戦略は、かつて彼が刑務所制度の改革で成功したときの手法に基づいているといいます。
会議に出席していた役員の一人は、5年前に聖トリニアンズへ潜入捜査を行った経験があり、それが原因で今も深刻なトラウマを抱えていると語ります。

一方、聖トリニアンズではホッケーの試合が予定されている日。
チェルトナム女子高が聖トリニアンズへバスで向かっています。アナベルが以前在籍していた学校であり、キャプテンのヴァリティ・スウェイツはアナベルをいじめていた一人であり、ジェフリー・スウェイツの娘でもあります。

学校の近くに差しかかると、林の中から顔にペイントをした低学年の聖トリニアンズ生が現れ、バスにカラーボールを投げつけます。チェルトナムの生徒たちはその奇襲に驚きます。バスは塗料まみれになって到着しました。

先に学校に来ていたジェフリーに、娘のヴァリティが怒りをぶつけます。バスから降りてきた教師も「なぜこんな学校をとっくに閉鎖しなかったのか」と訴え、それよりも、校長のほうが生徒より問題だとも語ります。

そこに愛犬を連れて優雅に現れたのがカミラ。
彼女はかつてジェフリーの恋人でした。ジェフリーは「この学校は無秩序で学力も低い。だからこそ立て直す」と宣言します、カミラは「カリキュラムで生徒を縛ることこそ問題」と返します。二人が教育について語るうち、かつての感情が再び動き始めます。

二人の愛がよみがえりそうになると、背景にザ・フォー・エイカーズの「Love Is a Many-Splendored Thing」が流れます。これは続編でも同じです。

ちなみにカミラの犬の名前は「ミスター・ダーシー」。
イギリスでは、コリン・ファースといえば「ミスター・ダーシー」というイメージが強いです。彼はジェーン・オースティンの「高慢と偏見」のドラマでその役を演じ、イギリス国内だけでなく世界中で人気となりました。特に、池に飛び込んで白シャツが濡れたシーンが大人気でした。若いころのコリン・ファースは、ハンサムで魅力的でした。

校庭ではホッケーの試合が始まります。会計係バーサー(トビー・ジョーンズ)が審判を務め、「噛みつき、引っかき、蹴り、体当たり、頭突き、殴打、平手打ち、唾を吐くなどは禁止」と事前に注意します。さらに、聖トリニアンズの生徒がスティックの先を鋭く削っているので、「規定外の用具もダメだ」と念を押します。

バーサーを演じるトビー・ジョーンズは、「ハリー・ポッター」シリーズでドビーの声を担当したことでも知られる俳優です。

チェルトナムの選手たちも、ヴァリティを先頭に激しいプレーを見せます。聖トリニアンズも負けておらず、スティックにくぎを打ち込んだり、伸びるスティックを使ったりと独自の方法で応戦します。

ジェフリーは試合中に校内を視察し、その実態に愕然とします。
宗教の教室では生徒が黒板に貼り付けにされ、美術室には不気味な作品が並び、水槽には生徒が浮かんでいます。理科室ではウォッカの製造が行われており、「ウォッカ100」と書かれたボトルをひとなめしただけでジェフリーはふらついてしまいます。危険なウォッカだ笑。

さらにポッシュ・トッティのグループが違法チャットラインで利益を上げていることも判明します。
ジェフリーは驚くほど手際よく校内の実態を把握していきますね・・・。

しかしジェフリーはトッティたちに見つかり、窓から池へと放り出されてしまいます。
ずぶ濡れになったジェフリーがカミラの方に歩く姿は、まさに「ミスター・ダーシー」そのものでした。

消えてしまうかもしれない学校

試合に勝った聖トリニアンズでは、その夜、盛大などんちゃん騒ぎのパーティーが開かれました。

ところが翌朝、銀行員が学校に現れてカミラに差し押さえ通知を手渡します。校内はパーティーの名残で荒れた状態となっており、印象は最悪。
学校は銀行からの最終通告を何度も無視してきたようで、負債は50万ポンド以上に膨らんでいました。4週間以内に返済できなければ、正式に破産手続きに入ると通告されます。

その様子をモニター越しに見ていたケリーとオタクのポリー。
「トリニアンズが閉鎖するらしい」と聞いて最初は喜ぶ生徒たちでしたが、ケリーが「つまり、普通の学校に通うことになるってこと」と伝えると全員が一気に我に返ります。これをきっかけに、生徒たちは学校の動きを監視するようになります。

カミラは机の上から銃を取り、銃口を自分に向けます。まさか自殺・・・?と思いきや、それはライターでした。
たばこに火をつける横顔が男前で美しいです笑。

そしてアナベルの父がやってきて、学校をブティックホテルに改装すべきだと提案します。早く売却すれば借金も返せるし、利益も分け合えるというのです。
カミラが「学校がなくなれば、アナベルの居場所もなくなる」と指摘すると、父は「アナベルについては正直どうしたらいいのか分からない。本当に自分の子どもなのかと思うことすらある」と口にします。

このやり取りは生徒たちだけなく、アナベルも見ていました。
父と一緒に帰れると信じていたアナベルはショックを受けます。パパっ子だっただけに放心状態に・・・。

犯罪についての授業

ショックを受けたアナベルは、カミラの部屋に行きます。カミラは絵を描いており、その腕前はなかなかです。アナベルの父に対してかばって発言をしていたカミラは、なぜ部屋を訪ねてきたのかも察していたようです。落ち込んでいるアナベルにパンチの練習をさせ、つき合ってくれます。本当の教育者というのは、こういう姿かもしれません。

一方、学校を救う作戦会議として、フラッシュの授業が始まります。「犯罪とは?」という問いに、「恐喝」「信用詐欺」「誘拐」など、生徒たちは次々に答えていきます。普通の授業よりもずっと活気にあふれています。フラッシュが「もっと大きいのは?」と問いかけると、双子のタラとタニアが「窃盗」と答えます。続けて「バンク・オブ・イングランド」と言うと「それは大きすぎる」、「ウールワース?」と言うと「小さすぎる」となかなかぴったりの回答が出ません。「ウールワース」という名前が出るところが可愛らしく、懐かしく感じました。

(ウールワース(Woolworths)は、イギリス国内に点在していた雑貨店で、2008年、この映画の1年後に経営破綻し、全807店舗が閉鎖されました。)

ケリーが壁に貼られたフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のポスターを指差すと、ポッシュ・トッティのチェルシーが「スカーレット・ヨハンソンを盗むの?」と反応します。スカーレット・ヨハンソンは、2003年の映画「真珠の耳飾りの少女」でこの絵のモデルの少女役を演じており、フェルメール役はコリン・ファースでした。

フラッシュは戸惑いますが、ケリーはすでに考えがある様子。
生徒たちは課外活動というかたちでロンドンの「ナショナル・ギャラリー」へ向かいます。バスを降りた瞬間、勢いよく飛び出した生徒たちは、トラファルガー広場を一気に駆け抜け、観光客のあいだをすり抜けながら、叫び声をあげてギャラリーへ突入していきます。
遠くにはビッグベンが見え、館内は実に美しく、観ているだけで元気になるシーンです。

生徒たちは、展示室のレイアウトや監視の様子などを観察していきます。ケリーたちはフェルメールの展示室にたどり着きます。ポッシュ・トッティのクロエは絵を見て「コリン・ファースが彼女と寝たがった理由が分かる」とつぶやきます笑。

生徒たちは、ナショナル・ギャラリーで行われるクイズ番組「スクール・チャレンジ」の決勝にあわせて作戦を実行することにします。出演するのはポッシュ・トッティ組で、OGのJJ(ミーシャ・バートン)から助言をもらいます。

盗んだ絵はどうするのかというと、有名絵画の盗難はすぐ全国ニュースになります。これを美術商であるアナベルの父に知らしめ、カミラが描いたフェルメールの贋作を彼に売りつけるのです。本物はナショナル・ギャラリー返却し、謝礼金を得るという寸法です。

アナベルはフラッシュに、ドイツ人のアートディーラーになりすまし父に接触するよう頼みます。父へのリベンジもあるのかもしれません。フラッシュはアナベル相手ではまったくやる気を見せませんが、ケリーが現れた途端、張り切り始めます。

そしてついに、「スクール・チャレンジ」決勝当日。司会はスティーブン・フライです。実際にクイズ番組で長年司会を務めていたこともあり、その存在に説得力があります。

ポッシュ・トッティたちはカンニングができる特殊な眼鏡を使って出場します。そのせいか、彼女たちの回答は異様に早く、「誰が書いた…」と問題文が読まれただけで「チャールズ・ディケンズ!」と正解してしまうほど。

アナベルのメイクオーバー

教育大臣のジェフリーが、ふたたび聖トリニアンズに現れます。今回は数人の記者を連れてきており、学校の問題を暴こうとしているようです。

見張りの生徒がすぐに警告を出し、それを聞いた生徒たちは急いで校内の片づけを始めます。ジェフリーたちが美術室に入ると、そこでは生徒たちが落ち着いてデッサンに取り組んでおり、まるで模範的な授業のようです。水槽の中にももちろん誰も浮いていません。外国語の授業では、ふだんはセクシーな服装で教えるモーパッサン教師(カテリーナ・ムリーノ)が、修道女の姿で授業を淡々と進めています。

しかし、ジェフリーはケリーたちが強盗計画を進めている部屋へと近づいていきます。慌てたケリーたちが対応を考えていると、アナベルがとっさに部屋から出てジェフリーを引き止めます
「あなたの娘を知っています。以前、私はチェルトナム女子高にいて、彼女にいじめられていました」と話します。

この発言に、記者たちは一斉に教育大臣に質問を浴びせ始めます。
そこへカミラが現れ、彼女の愛犬ミスター・ダーシーが、ジェフリーの足でまたハンピングを始めてしまいます。うんざりしたジェフリーに遠くへ蹴り飛ばされ、犬はそのまま命を落としてしまいました。

翌日の新聞の見出しは、聖トリニアンズの問題ではなく、「教育大臣、犬を蹴って殺す」でした笑。
後日、ジェフリーはまたしても聖トリニアンズでスクープされてしまいます。なんと全裸で。

一方、アナベルはその日の機転と行動を認められ、生徒たちからメイクオーバーを受けることになります。チャブ、ポッシュ・トッティ、オタク、ゴス、それぞれのスタイルを試されますが、どれも似合っていて可愛いです。
就寝前にフルメイクをされると落とすのが面倒くさそうですが、メイクオーバーをされるということは、もう完全に仲間と認められたということですね。

「聖トリニアンズ女学院」の主題歌(曲)は?

「Theme to St. Trinian’s(聖トリニアンズのテーマ)」はガールズ・アラウド(Girls Aloud)が歌っています。
ラストシーンでは彼女たちがスクールバンドとして登場します。メンバーのサラ・ハーディング(Sarah Harding)は続編の「St Trinian’s 2: The Legend of Fritton’s Gold」(2009年)でロキシー役を演じています。

登場人物のモデル?!

「St Trinian’s」のキャラクターは、イギリスのファッションアドバイザー「トリニー・ウッドール」がモデルとの説があります。原作者ロナルド・サールがウッドール家と親しく、トリニーのいたずら好きな性格が根拠とされています。

彼女はテレビで一般人にファッションアドバイスをする際、合わない洋服を容赦なく切り捨て、「胸をアップさせた方がいい」と言いながら、その人の胸をわしづかみにするような豪快なタイプです。一方で、ダメ出しした洋服を自分で着て、ふざけたファッションショーを披露するお茶目さも。

彼女のアドバイスで女性たちは美しく変身します。出版した本はベストセラーで、センスも抜群。モデル並みにスレンダーで美しい彼女には多くのファンがいます。

おわりに

聖トリニアンズの生徒たちは、個性的でとても可愛いです。
年下の生徒は制服と麦わら帽をきちんと着用しますが、年上の生徒は服装や振る舞いに個性が現れます。 バラバラに見える彼女たちも、必要なときには一致団結します。

ルパート・エヴェレット演じるカミラは、男性にしか見えない瞬間も多いのですが、彼女がスカーフを頭に巻きているスタイルは可愛く見えることも。スカーフと髪が風に揺れたりします笑。

エンドロールでは、カミラとジェフリーがジョン・ポール・ヤングの「Love is in the air」を歌います。キャラクターらしく、途中でしゃべったり、掛け声を入れたり、ミュージカル調になったりと、だんだん乗ってきたりとコミカルです。コリン・ファースの歌声はなかなか良いです。

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