Whisky Galore!(ウイスキーと2人の花嫁)1949年版オリジナルの方が断然お勧め

「Whisky Galore!(ウイスキーと2人の花嫁)」は、2016年公開のイギリス映画。1949年公開の「Whisky Galore!」のリメイクです。

第二次世界大戦中のスコットランドの離島を舞台に、配給のウイスキーがついに底をつき、島民たちは民兵組織の隊長や税関官の一歩先を行き、座礁した貨物船から大量のウイスキーを密かに回収します。島民たちの機知と共同体精神、そしてウイスキー愛が楽しいコメディです。

原作は、コンプトン・マッケンジー(Compton Mackenzie)による1947年の小説「Whisky Galore」(1941年に発生したSS Politicianの座礁事件に基づく)。マッケンジー氏は脚本も担当し、1949年版ではバンチャ―大尉として出演も。「Monarch of the Glen」の原作者でもあります。

2016年版のストーリーは1949年版を踏襲していますが、個人的には1949年版の方が優れていると感じます。ネット上のレビューでも同様の意見が多く見られます。そのため以下のあらすじは1949年版で、その後で、2016年版との違いにも触れています(指摘が多いです・・・笑)。

オープニングタイトルの背景は、ウイスキーが枯渇した夜の島のパブでのグラス(2016年版)。これ自体は美しいのですが・・・。(画像は引用目的で使用しています)

グレゴール・フィッシャー、エディ・イザード、ショーン・ビガースタッフ、ナオミ・バトリック
目次

「Whisky Galore!」あらすじ

1949年版のオープニングタイトル

舞台は、第二次世界大戦中(1943年)のスコットランド、アウター・ヘブリディーズ諸島にある架空の島「トディ(Todday)」。

冒頭、スコットランド訛りのナレーションがあり、それだけでスコットランドの雰囲気。
戦時配給制により島のウイスキーが完全に枯渇したことが知らされ、島民は大きなショックを受けます(ヒッチコックの恐怖の場面のようなBGMが笑)。真の島民にとってウイスキーがないということは、飢饉や疫病、ヒトラーの爆弾や侵略軍の大群よりも恐ろしいことで、生きるに値しないというのです。島民の中にはショックで亡くなったり、寝込んだりする人も出てしまいます。

「たかがウイスキーで?」と思うかもしれませんが、スコットランドではウイスキーは「Uisge Beatha(ゲール語で生命の水)」と呼ばれ、薬用や日常生活に欠かせない存在であり、文化を超えた意味を持っているのです。貨物船が島に到着すると、埠頭に集まった島民たちは船長が首を振るのを見て落胆します。それは「今日はウイスキーが積まれていない」という合図だから。

小学生は作文の授業で「島にやって来る貨物船はとても美しい。でも今週もウイスキーがなかった。ウイスキーがないとみんなとても悲しくなります」と読み上げます・・・。

郵便局長のマクルーン氏は(郵便局兼自宅)年頃の娘たちにやきもきし、母親の方がきちんとしていたと愚痴をこぼします。カトリーナ(ガブリエル・ブラント)はくわえたばこで郵便業務をこなし、美しいペギー(ジョーン・グリーンウッド)は鏡を見るのに忙しい。

マクルーン氏は、カトリーナが小学校の教師ジョージ(ゴードン・ジャクソン)と婚約したことに少しがっかりしています。信心深く禁欲的なジョージの母は、常に息子を支配しており、ジョージは母に逆らうことができません。そんな母は、息子の婚約を島民から聞かされたことで、怒り心頭です。

17歳のペギーはオッド軍曹(ブルース・セトン)と恋仲で、こちらもプロポーズされます。経験豊富で頭の切れるオッド軍曹は彼女より17歳年上で、年の差なんてといった様子の二人(軍曹はもうちょっと年上に見えるかも笑)。

島に滞在するワゲット大尉(バジル・ラドフォード)は、イギリス民兵組織の隊長で、島民を集めて活動を行います。島には間違った種類の弾薬箱が届いてしまい、真面目で融通の利かない大尉は、それらを送り返す手配をするものの、貨物船の船長は郵便物が積まれている時は弾薬を載せない規則であることと、そもそも弾薬だと知っていたら積んでいなかったと協力を拒みます。

座礁船と大量のウイスキー

ある濃霧の夜、島を通過しようとした貨物船が座礁します(船長はバンチャー大尉(コンプトン・マッケンジー))。救助のためにボートを出したビファー(モーランド・グラハム)とサミー(ジョン・グレッグソン)は、座礁船の積荷が5万ケースものウイスキーだと聞いて驚きます(ビファーの仰天でまたヒッチコックのようなBGM笑)。

さっそく二人が知らせて回ると、島民たちは夜陰に乗じてウイスキーの箱を回収しようとボートに乗り込もうとします。ウイスキーのこととなると途端にフットワークが軽くなるようです笑。「命の水」のためですからね。

しかし彼らはまもなく安息日(日曜日)が始まることに気づきます。悔しがりながら引き返す島民たち。安息日は破ることができないという正直さと信心深さ、人の好さがよく分かります。翌日の教会の礼拝では、島民たちは通夜のように沈み、「説教が長かった。しかも内容が大洪水についてだったから座礁船のことしか考えられなかった」と愚痴ります笑。彼らにとってこの安息日ほど長い日はなかったはず。

座礁した船は放棄され、引き揚げ業者も危険を理由に手を出せない状況とこと。ワゲット大尉は、安息日が明ければ島民がウイスキーを盗み出すと予想します。それに対して、「どうせ沈むなら、島民がウイスキーを何本か取ってもいいのでは」と口にする妻。実際、座礁は島の管轄区域のすぐ外で起きたというのに、真面目で融通の利かない大尉は、略奪を止めるのが自分の義務だと考え、地域の民兵を組織して対応しようとします。

作業の依頼でジョージに電話をかけた大尉。ジョージの母は、安息日に民兵の作業などとんでもない、電話のような機器まで使ってけしからんと反対し、聖書を持って部屋から出るなとジョージに言いつけます。業を煮やした大尉が直接ジョージを訪ねると、「息子は一日部屋から出ない」と追い返す母。島民に呆れたワゲット大尉は、オッド軍曹に船の警備を命じます。

オッド軍曹が警備をすることを知ったマクルーン氏は、ペギーと結婚したいオッド軍曹に、ハイランド地方に古くからある婚約の儀式「rèiteach(「レーティャフ」のような発音)」について語ります。その儀式で男性が結婚を申し込み、それには大量のウイスキーが欠かせないというのです。オッド軍曹は、ウイスキーなしに儀式も結婚も成立しないという暗黙の圧力をかけられます。

2016年のマクルーン氏は娘の結婚にいつもやきもきしている優しい父親ですが、1949年のマクルーン氏は、娘たちはどうせ結婚するのだし、ウイスキーを確保することも同じくらい重要だというスタンスです。


島民たちが発揮する共同体精神

安息日終了の鐘がなると、密かに出直して小走りで集まる島民たち。ビファー、サミー、アンガスは、見張り役のオッド軍曹を拘束しようと近づくものの、軍曹は島民側に味方して見逃します。ビファーはボート付近で待機する島民たちに合図を送り、サミーは閉じ込められていたジョージを連れてきます。

島民たちは座礁船から大量のウイスキーの木箱を運び出します。すると、船が傾き、箱の下敷きになったビファーをジョージが救い出します。箱の下から出てきたビファーが可愛い笑。

それぞれのボートいっぱいに積み込んでも、まだ多くの箱が船内に残っていてもったいない笑!沈みゆく船を見つめながら、帽子を胸に当てるビファー。船へのリスペクトが感じられます(それともウイスキーか笑)。島民たちは、回収した箱をシール湾の岩窟の中に隠します。

そしてその晩、密かにウイスキーを夜通し楽しむ島民たち。
映り込んでいるウイスキーの銘柄を探すのも楽しく、日本でもよく知られている銘柄がいくつか見えます。

「翌日の島は様変わりしていて別世界だ」という、スコットランド訛りのナレーションも酔っぱらっています笑!寝込んでいた男性は、往診の医者と一緒にウイスキーを飲んで元気に。

ワゲット大尉が拘束されていたオッド軍曹を見つけると、軍曹は「後ろから襲われたので犯人は分からない」とシラを切ります。

ジョージは酔った勢いで帰宅し、母に結婚への強い意志を伝えます。しかし、部屋を抜け出したどころか酔っていたので、やはり叱責されます。結婚するならグラスゴーへ引っ越すと啖呵を切った母に対し、ジョージは「じゃあもうそうしてくれ」と告げ、一心不乱にバグパイプを吹き始めます。酔った力任せのキーキー音で、母だけでなく、外で待機していた医者やカトリーナも驚きます。

共同体精神ふたたび

ウイスキー捜索中のワゲット大尉は、パブのカウンターに並ぶウイスキーを見つけて指摘します。店主は、それらは配給のたった4本のウイスキーで、島には200ケースのウイスキーがあるじゃないかと反論。そして、シール湾を探してみたのかと口走ってしまいます。シール湾で大量のウイスキーの箱を発見した大尉は、本土の税関に連絡します。

カトリーナとペギーの「rèiteach」は無事に開催され、ウイスキーが振る舞われる中、スコットランド伝統の踊りで祝宴が進みます。端の方で出席していたジョージの母は、目の前に出されたウイスキーに一瞥。しかし式が進んで、ジョージとカトリーナは「ほら、ウイスキーを飲みそうだよ」と、母の様子を見守ります。結局、母はウイスキーを口にして笑顔になっているのです。

しかし、島民の一人が家の窓から島に近づいてくる船に気づき、慌てて郵便局へ知らせます。マクルーン氏が連絡を回すと、島民たちはウイスキーを手当たり次第に隠します。食器棚、湯たんぽの中、雨どい(すっぽり入る)、レジの中、フィドル(バイオリン)ケースの中、下水道、海辺、ベビーベッドの赤ちゃんの下など。税関職員が郵便局内を調べて立ち去ったあと、ひねった蛇口からウイスキーを注いで飲んでいるマクルーン氏を見て、娘たちは目を丸くします笑。

島民はこれで切り抜けたと思いきや、「自分のビジネスを守るために、ワゲット大尉にシール湾へ行くよう言った」というパブの主人。島民たちは秒でトラックに乗り込み、運転手のサミーを急かします。ウイスキーを守るためにぎっしり乗り込んでいる島民たちが車に揺られる姿が可愛いです笑。
サミー役のジョン・グレッグソンは、映画「Genevieve」のアラン役でも、同じように車のエンジンを必死に始動させようとしています。

ネタバレしないようにここまでで・・・。
でも、最後は皮肉な感じの結末を迎えてしまいます。

Whisky Galore!ウイスキーと二人の花嫁
2016年版(左)と1949年版(右)

2016年版の感想

2016年版はもちろんカラーで、風景やセットも美しいですが、個人的な評価はいま一つです。1949年版には原作・脚本のマッケンジー氏も登場しており、島民にとってのウイスキーの重要性や、そこに込められた皮肉とユーモアが際立っていました。2016年版は邦題に「花嫁」が入っており、結婚する娘たちの恋愛や、嫁いでゆく娘たちにしんみりする父親の「愛」がもう一つのテーマ。そこに王室の恋愛事情まで加わり、プロットが散漫になってしまった気がします。

ストーリーの冒頭から「この島は、身を投げた恋に悩む王女にちなんで名付けられた」と語られ、甘ったるい雰囲気が漂います。登場人物も全体的にこぎれいで、何人かはふくよか。戦時中だけど栄養は足りていそうな印象です。清潔感のあるパブで店主が「ウイスキーがなくなった」と告げますが、1949年版の島民の衝撃や、ヒッチコック風のショッキングなBGMはそこにはありません。

台詞はオリジナル版と同じところがいくつかありますが、使われているニュアンスが変わっていたりします。

船の座礁を知った島民たちは、回収するのが当然だという勢いで、マクルーン氏の娘たちも加わりぞろぞろと海に向かいます。が、その光景はちょっと不気味に感じました。オリジナル版では、秘密裏に急いで盗みに行こうとする島民たちの良心がありました。差別の意味はありませんが、伝統的にスコッチウイスキーは「男の酒」と見なされてきたはずで、女性も一緒に行動する点には違和感があるし、船の上でも足手まといに見えました。そこまで現代的なアレンジを加えなくてもよかったのでは、と思います。

ただし、深夜に動き出すボートが幻想的で美しいです。

座礁船の中にはウイスキーの箱だけでなくピアノや秘密文書などもあり、要素が多くて気が散ります。今回登場するウイスキーの銘柄は数種類程度。その半分以上が創作銘柄のようで、観ていても面白味に欠けました。マクルーン氏が箱を眺めながら「これも、あれも、いいウイスキーだ」と銘柄を並べますが、台詞で説明されるよりも、ラベルを見せてもらった方が・・・。

ビファーは箱の下敷きにもならず、ウイスキーの回収はスムーズに進みます。残念ながら、今回のビファーとサミーには魅力を感じませんでした。1949年版の二人は親切で生き生きしており、愛嬌もありました。

ウイスキーを略奪した後はどんちゃん騒ぎ。マクルーン氏の娘たちもぐいぐい飲み、カトリーナがジョージのグラスを取って飲み干すなど、品のなさが目立ちます。1949年の娘たちは、ウイスキーをぐいぐいやらなくても十分に魅力的でした。

その後、酔ったジョージが母を説得するために帰宅するときにも、カトリーナは彼の後ろ姿ににやりと笑い、ここでもぐいっとやります(外なのに)。もういいよーと思ってしまいました笑。

さらにジョージは、結婚に反対するならグラスゴーに行けと母に言い、その後に吹くバグパイプには、オリジナル版のような必死さはなく、弱い母に力技を見せつけているような印象を受けました。カトリーナはカトリーナで、ジョージの母に「結婚したらジョージはシェアしない」と言ったりしているし。

そして、ジョージの母は息子の「rèiteach」に出席しなかったばかりか、結婚式の日に遅れてやって来ます。「ほらお母さん来てるわよ」と冷ややかなカトリーナに閉口してしまいました・・・。現代風にアレンジすると、母に対する愛情やリスペクトは薄れてしまうのでしょうか。オリジナル版では「rèiteach」の段階で、若いカップルは母を気にかけ、母も笑顔になっていたのに本当に残念。

また、島民たちが税関職員からウイスキーを隠すくだりでは、階上の水タンクにウイスキーを流し込むマクルーン氏の娘たち。オリジナル版で、マクルーン氏が蛇口をひねってウイスキーを飲んで娘を驚かせたのが視聴者目線でも面白かったし、父のウイスキー愛がよく伝わっていました。ここも惜しい点。

また、道を封鎖したアンガスがパスワードを求める場面では、2016年版ではパスワードを設定するところが抜けていて意味不明です。(アンガス役のブライアン・ペティファーは、90年代のスコットランド・ハイランドを舞台にしたドラマ「Hamish MacBeth」で、地元の食料品店主キャンベル役でした)。

税関職員は、ワゲット大尉とともに島民を追い、ウイスキーの箱を目の当たりにしたのに、最後の辛らつな物言いも怖く感じました。

全体としてカジュアルなリメイクで冗長に感じる部分も多く、原作の面白さが半減したと思います。

ただし、スコットランドのフィドラー(バイオリン奏者)として知られるポール・アンダーソン氏が結婚式に登場した点は評価できます(ファンなので笑)。ブライダル・ワルツやダンス曲を演奏しており、それらはもちろん素晴らしいです。

「The Bonnie Banks o’ Loch Lomond」:BBCのビリオド・ドラマ「クランフォード」でジェシーとゴードン少尉と一緒に歌う美しい曲です。

ポール・アンダーソン
私のCDもついでに掲載しておきます笑

おわりに

あることが理由で最後は小さなどんでん返しがありますが、1949年版では最後の最後で「え、そうなの?」という結末が・・・。白黒映画のオリジナル版は古めかしい印象ですが、観始めると引き込まれるし、当時の生き生きとした空気や品の良さを味わえるのが魅力です。役者たちは実際に島の住人の家に住み込み、島の生活や島民たちの話し方を学びながら撮影したそうです。

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