Wicked Little Letter(イギリス映画)リトルハンプトン中傷事件がベースに

「WICKED LITTLE LETTERS」は、1920年代のリトルハンプトン中傷事件「Littlehampton libels」を題材にした2023年公開のイギリス映画。

1920年代のイギリス、敬虔なエディス・スワン宛に匿名の中傷的な手紙が届き始め、家族だけでなく町の住民や警察を巻き込む展開に。隣人ローズ役のジェシー・バックリーが悪態をつきまくりますが、清々しく笑顔も可愛いので憎めません笑。ただ映画全体に対して気になった点がいくつかあって少し複雑な気持ちになりました(後述しています)。

キャストは、オリビア・コールマン、ジェシー・バックリー、アンジャナ・ヴァサン、ティモシー・スポール、アイリーン・アトキンス、ジェマ・ジョーンズ、マラキ・カービーなど。

オープニングタイトルは、黒背景に手書き風の白い文字が浮かぶシンプルなデザイン。オープニングとしてはよくあるデザインですが、タイトルが「Wicked Little Letters」(悪意ある小さな手紙)なので、事件の暗い側面を予感させます。(画像は引用目的で使用しています)

オリヴィア・コールマン、ジェシー・バックリー、アンジャナ・ヴァサン、ジョアンナ・スキャンラン、ジェマ・ジョーンズ、マラカイ・カービー、ロリー・アデフォペ、アイリーン・アトキンス、ティモシー・スポール
目次

「Wicked Little Letter」あらすじ

1920年代のイギリス南部の海辺の町リトルハンプトン。敬虔なキリスト教徒のスワン一家に19通目の手紙が届きます。それは娘のエディス・スワン(オリヴィア・コールマン)に宛てられた罵詈雑言に満ちた匿名の手紙。

エディスと母(ジェマ・ジョーンズ)はこの手紙を受け取ることに意味があるのではないかと宗教的に考えますが、父(ティモシー・スポール)は止まる様子がない手紙に怒りながら警察に乗り込むことに。

訪問した警官は、手紙の内容があまりにも下品なので女性の前で読み上げることをためらうほど。イライラして怒鳴り気味で話す父にびくびくするエディス。父は夜も眠れないほど家族が精神的に追い詰められており、これは単なる悪口ではなく法に触れるだろうと訴えます。

警察内ではスワン家の隣人のアイルランド移民でシングルマザーのローズ・グッディング(ジェシー・バックリー)が送り主ではないかと疑っており、それはスワン家でも推測していました。ローズは粗野で口が悪く、伝統や規範を無視し、飲酒や喧嘩も多く、町の保守的な住民から疎まれるところがある人物。彼女の普段の悪態癖が容疑者としてはぴったりだったということ。

警官は、正式な手続として、被害者のエディスが警察署で事情聴取を受けて届を出す必要があると説明。エディスは信仰上、手紙の主に心当たりがあったとしても人を裁くことへのためらいを口にするものの、正しく振る舞えば模範的な人物として地域で評価されると説得され手続きに応じます。そして隣人のローズが逮捕されます。

ローズの逮捕・収監

警察署でローズについて説明するエディス。ローズは夫を戦争で亡くし、娘のナンシーとパートナーのビル(マラキ・カービー)の三人でこの町に越してきて、エディスと友人関係に。男性関係については奔放のようで、スワン家とローズの家は屋外トイレや風呂桶を共有していることから、ローズの暮らしぶりがあまり丁寧でないと示唆します。エディスの父の誕生日パーティでは、ローズはゲストの一人に頭突きを食らわせ、翌日の謝罪を予期していたところ、謝るどころか反発してきたといいます。

ほどなくして児童保護の担当者がローズの家を訪れ調査することに。ローズはエディスが通報したと考え、二人の友人関係は終了。この頃から問題の手紙が届き始めたといいます。エディスはローズとは違いはあっても良い友情で結ばれていたと強調し、ローズがやり直したいなら神の導きにより正しい道へ導きたいというのです。

女性警察官のグラディス(アンジャナ・ヴァサン)がローズを逮捕するには証拠が弱いと意見を述べますが、上司は組織の上下関係を強調し、判断に異を唱えないよう釘を刺します。ローズには3ポンドの保釈金が設定され、支払うことができないローズはポーツマスの刑務所に収監されることに。

グラディスの独自捜査

グラディスがエディスの家を訪ねると、エディスは一連の出来事で精神的にも良心的にも消耗し、新聞や世間の注目に巻き込まれたと語ります。殉教者のように扱われるのは望んでいないと言いつつも、テーブルには自分の記事が載った新聞が重ねてあります。刑務所に送られたローズを助けられなかったことを悔やみつつ、刑務所内で似たような友達ができるのではと口にします。

刑務所からグラディスに助けを求める手紙を書くローズ。自分が世間からどう見られているか理解しているし、移住したのは子どものためなのになぜ危険を冒してまで中傷の手紙を書くのかと訴えます。しかしグラディスは、容疑者のローズを警察官として個人的に助けることはできないと拒否します。

グラディスは社交場に出かけるエディスに同行し、アン、ケイト、メイベルに話を聞きます。彼女たちは、事件は悲劇だったけどローズが刑務所に送られから安心だ、でもローズの子供が不憫だし、ローズは嫌いではなくむしろ好きだった、ローズは三ポンドの保釈金は払えないだろうなどと語ります。

アン(ジョアンナ・スキャンラン)とメイベル(アイリーン・アトキンス)はローズのために保釈金を工面し、ローズは保釈されます。ローズは自分の素行が悪かったことは認めるものの、それだけで有罪になるはずはないし、なぜ別の人物に疑いが向けられないのかと疑問を口にします。

手紙を改めて精査したグラディスは、誤認逮捕の可能性について報告。しかし上司の態度は変わらず、筆跡鑑定は裁判で重視されないとして聞き入れません(現代の感覚からすると信じられない!)。しかもグラディスは停職処分を受けてしまいます。

ローズが町に戻ると再び届き始める手紙・・・。事件は全国的な話題となり、被害者であるエディスは敬虔で模範的な女性として描写されます。しかし、エディスの父は女性にきわめて抑圧的で伝統的な家父長的考え方を持つ人物で、女性参政権運動を軽蔑し女性が公の場で目立つことや独立することを好まない様子。新聞で娘が称賛されてもそれを男たちが下品に利用すると決めつけ、エディスが意見を述べようものなら、聖書の教訓を部屋で200回書いて来いと罰を与えるのです。

新たに届いた中傷の手紙を開封したエディスの母は卒倒しそのまま亡くなります。グラディスが死体確認のために家を訪れ、エディスが書類に署名する様子を見て、グラディスはふと何かを思います。

ふたたび助けを求めにローズがグラディスを訪ねると、グラディスは問題の手紙は文体や書き方が正式な教育を受けた特徴を持っていると指摘。ローズの手紙と比べると筆跡も一致しないため、誤認逮捕の可能性があると推測します。その後、外出していたローズも、ふと見かけた店の看板に何かを思います。

ローズの裁判が始まり、証人として呼ばれたエディスは中傷の手紙を読み上げるよう求められるものの、書かれている下品な言葉に動揺して読むことができません。弁護人が代わりに読み上げると、呆れや不快感の声を上げる法廷の人々。その内容を聞いて笑っているローズ。そんな手紙を書かないで本人に直接言ったらいいじゃないかと述べるのです。

ネタバレせずにここまでで・・・。

キャストと史実

2023年の映画なので、現代風の要素がいくつもあるのは自然なことかと思います。多様性そのものが悪いとは決して言いませんが、それを考慮したがゆえに史実と異なる点が多かったことが残念でした。

例えば、リトルハンプトン中傷事件に関わった実在人物のグラディス・モスはイギリス人女性でした(西サセックス警察全体で最初の女性警察官とのこと)。映画のようにアジア人女性ではなく、署内で差別を受けていたわけでもありませんでした。また、1920年代のイギリスは、警察官や裁判官、そしてリトルハンプトンの住民の大半は白人だったはず。裁判長も、郵便局職員もそうだったはず。

当時は女性参政権が段階的に導入されていた時期で、女性が軽視されていた傾向があったかもしれません。そうだとしても、グラディスの上司二人が無能なイギリス人男性として描かれている点は史実をリスペクトしていないのではないかと感じます。実際は、そのイギリス人男性警官たちが事件を解決したからです。

このような描写は映画の信憑性や時代背景を損なっているし、イギリスの歴史を書き換えようとしているのではないかとさえ思ってしまいます。この映画のプロットを実話だと鵜呑みにする視聴者が出る可能性もあるでしょう。

また、エディス役のオリヴィア・コールマンは50歳、父役のティモシー・スポールは60代、母役のジェマ・ジョーンズは80歳で、スワン家の年齢設定も少し不自然に感じました。

実在したローズは一般的なイギリス人で、彼女のパートナーはイギリス人で結婚していました。

映画の冒頭で「これはあなたが思うよりも真実だ」と示されますが、そうとは言えないと思います。実際の事件は映画よりも複雑で、完全な被害者だったローズはトラウマにより余生での人格が変わってしまったそうです。

DVDとカバー

おわりに

史実を考慮せずに、あるいは盛り込まれた多様性にも着目するのであれば(嫌味な言い方ですが笑)、楽しめる映画だと思います。そうは言っても、作中に出てくる筆記体のフォントや手書きの文字を見るのは楽しかったです。

すっかり痩せたティモシー・スポールは、厳格で支配的な父の役柄に合っていたと思います。彼は「ハリー・ポッター」シリーズのピーター・ペティグリュー役、「From Time to Time」の庭師ボギス氏、「輝ける人生」のチャーリー役など、多数に出演。エディスの母役を演じたジェマ・ジョーンズは、「ハリー・ポッター」シリーズのポピー・ポンフリー役。

メイベル役のアイリーン・アトキンスは、「クランフォード」シリーズのデボラ役、「Cold Comfort Farm」の農場に縛られたジュディス役、「ゴスフォード・パーク」では悲しい過去を背負った料理長クロフト夫人役などで出演。すでに述べていますが、ローズ役のジェシー・バックリーは悪態をついたり粗野な振る舞いを演じているものの、本人がきれいで笑顔も爽やかなため、清潔感が拭いきれていなかったと感じました(が、それが魅力笑)。

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