「こんな給食の献立じゃ午後の授業に集中できない…」
イギリス(正確にはスコットランドですが)に住む9歳の女の子が、学校給食の献立を写真に撮って自身のブログ「NeverSeconds」に掲載しました。この投稿は世界中で大きな反響を呼びました。
反響の背景とは

何がそこまで注目を集めたのかというと、その給食の「献立」の内容が原因でした。なぜなら、この写真の献立というのが、パン、フィッシュフィンガー(魚のフライ)2本、きゅうりの薄切り3枚、アイスキャンディーが1本という簡素な内容だったからです。
パンは味気なさそうで、フィッシュフィンガーは冷凍食品を温めたような印象。その日は、パンにフィッシュフィンガーときゅうりをはさんで「フィッシュバーガーとして食べる」というメニューだったようです。日本ではちょっと考えにくい献立かもしれません。
日本の学校給食は栄養バランスが厳しく管理され、品数も豊富ですよね。日本に帰省したとき、親戚の子の給食の献立を見せてもらいましたが、モロヘイヤのスープやオーガニック野菜など、健康的なものが多い印象を受けました。私が子どもの頃は、モロヘイヤのメニューこそありませんでしたが、やはり全体的に健康的なメニューだった記憶があります。
地方自治体の対応
あまりに大きな反響だったため、少女の住むアーガイル・アンド・ビュート地方自治体(以下「カウンシル」)は、少女に対して給食の写真撮影を禁止する指示を出しました。カウンシルは「給食スタッフの誤解を防ぎ、職場環境を守るため」と説明しましたが、具体的な理由ははっきりしていないそうです。
少女はブログで「今日、算数の時間に校長先生に呼ばれて『もう給食の献立の写真を撮らないように』と言われたので、さようなら」と更新しました。この出来事は世界中のメディアで取り上げられ、カウンシルと学校は批判に直面しました。
一部の報道では、給食スタッフが批判を恐れてストレスを感じているとされましたが、カウンシルの苦しい言い訳ではないかという声もありました。世論の反発を受けてカウンシルは写真撮影の禁止を撤回しました。その後、少女は数回ブログを更新し現在も多くのアクセスを集めています。
少女はブログの注目度を活かしマラウイの子どもたちに食事を届けるための募金活動を始めました。
この募金活動は、慈善団体「Mary’s Meals」を支援するもので大きな成果を上げました。なんと2012年までに約£123,000(約2,000万円相当)も集めたそうです。集まった資金により、マラウイのブランタイアにあるリランウェ小学校にキッチンが建設されて1年間の給食提供が可能となりました。少女ははマラウイを訪問してキッチンの完成式に参加。マラウイの子どもたちから感謝の歌で迎えられ、メディアでも広く報じられました。
イギリス国内の反応
BBCに寄せられたコメントには、次のようなものがありました。
「このニュースのおかげで、我が子の学校の給食が改善されたようです。」
「この写真の給食の献立では栄養不足になるかもしれません。家庭での夕食で栄養バランスを補う必要があるのでは?」
「カウンシルは、給食改善をアピールする機会を逃しました。『これだけじゃなくて他にもメニューがあったんだよ』と主張するなら、なぜそれを少女に撮影させなかったのでしょうか?」
「他の地域で給食スタッフとして働いていますが、私たちの学校では野菜や果物を多く取り入れた献立を提供しています。」
イギリスの学校給食は地域差が大きく予算や運営体制によって品質が異なるそうですが、少女の行動は学校給食の質についての議論を国内に広げました。
並ぶのが面倒で
私の子どもたちは毎日弁当を持って登校しています。以前住んでいた地域の学校では、ほとんどの生徒が給食だったので、私の子どもたちもそのようにしていました。イギリスの食事なので笑、どんな内容か気になり「今日の給食の献立は何だった?」とよく確認したものでした。
その学校の給食では、パスタ、ピザ、コテージパイ、フィッシュアンドチップスがよく登場しました。でも、上記の少女のように午後にお腹がすくことはなかったと思いますし、野菜やフルーツも提供されていました。
デザートには、ケーキ、アイスクリーム、ゼリー、フラップジャックのようなものが多かったと思います。フラップジャックはイギリスでは子どもにとって「ヘルシーおやつ」という位置づけのようです。学校の授業でも作りますし、子ども向け番組ではフラップジャックについてのよく言及されます。「フラップジャック大好き!」とかいう歌も聞いたような記憶が笑。ただし、レシピを見るとバターやゴールデンシロップ(砂糖)がたっぷり。「オーツ」と「ドライフルーツ」が入っているから「ヘルシー」らしいです・・・。
今の学校に転校してからしばらく給食を取らせていましたが、子どもたちが「弁当の方がいい」というので変更しました。弁当はサンドイッチが中心でワンパターンな気もしますが、給食をもらうために並ぶのが面倒とのこと。
おわりに
地域によって学校給食は異なるものの、「イギリスだから」といってすべての食事が美味しくないわけではありません。美味しいものも多く料理上手な人もたくさんいます。スーパーに行くと健康食品やオーガニック食品が増えており、日本のスーパーよりも世界の食材を扱っている印象です。
余談ですが、イギリス在住の知り合いの日本人で、「食べに行くより自分で作った方が美味しい」という人もいれば、お子さんのサンドイッチ弁当をまとめて作って冷凍しておき、朝に冷凍庫から出して持たせる人笑、自身は料理ができないのですべてイギリス人のご主人に任せている人もいます笑。