「Coming Home」は1998年に放送されたイギリスのドラマ。
ロザムンド・ピルチャーの「The Shell Seekers(シェルシーカーズ)」「September(九月に)」のドラマが良かったので、レビュー評価の高いこのドラマも観ることに。原作は1995年の同名小説(私は原作は読んでいません)。
第二次世界大戦当時のイギリスで、主人公ジュディスの14歳からの約13年間を通して、彼女の成長と家族や周囲の人々が戦争によって受けた影響、そしてそれぞれが最終的に「故郷」へ帰り着くまでの過程が描かれます。家族と離れ寄宿学校に残されたジュディスは、同級生ラヴデイの裕福な家族が暮らすコーンウォールの大邸宅ナンチェロウに迎え入れられて家族の一員のように過ごします。
キャストは、キーラ・ナイトレイ(若年期)、エミリー・モーティマー、ピーター・オトゥール、ジョアンナ・ラムリー、ポール・ベタニー、ペネロピ・キース、デイビッド・マッカラム、ジョージ・アスプレイ、スーザン・ハンプシャーと豪華。
オープニングタイトルの背景は、ジュディスが自分の家のように過ごしたナンチェロウの田舎屋敷。撮影に使われた建物はハートフォードシャー(Hertfordshire)の「ローザム・パーク(Wrotham Park)」。
「 Coming Home 」あらすじ
第二次世界大戦前の1930年代。両親は幼い妹ジェスを連れて植民地のシンガポールへ移り、14歳のジュディス(キーラ・ナイトレイ)はコーンウォールの寄宿学校に入学します。
家族が海外にいる間、ジュディスは休暇になると叔母ルイーズ(ペネロピ・キース)の家で過ごすことになっています。叔母は自立したさばさばした女性。叔母がジュディスを寄宿学校へ送ると、ダイアナ(ジョアンナ・ラムリー)とラヴデイも到着。先日、ジュディスが母と制服を購入していたとき、すでにこの二人と出会っていました。明らかに上流階級な親子でしたが、ダイアナは気さくに話しかけてきました。
寄宿学校時代のジュディスは若いキーラ・ナイトレイで、この頃から輝きと魅力があります。叔母のルイーズ役は「To The Manor Born」「The Good Life」のペネロピ・キース、ダイアナ役は「アブソリュートリー・ファビュラス」のジョアンナ・ラムリー、そして、生徒たちを温かく迎えているキャトー校長は「Monarch of the Glen」のスーザン・ハンプシャー。彼女たちが同じスクリーンにいるのが華やかです。
ナンチェロウの一員に
ジュディスは、気まぐれで活発なラブデイと親友になります。彼女と友達になったことはジュディスのその後の人生を大きく変えていきます。
ラブデイは、両親が住むコーンウォールの海辺の邸宅ナンチェロウで週末を一緒に過ごそうとジュディスを招待します。田舎屋敷のナンチェロウは、門から家までかなり距離があり広大な敷地であることがよく分かります(撮影地はコーンウォールではないのですが笑)。
ラブデイの母ダイアナは魅力的で、優雅、理想的な友人であり、母親であり妻。とても気さくで、ジュディスに「ダイアナと呼んで」というのです。ジョアンナ・ラムリーはポッシュな役がぴったりですが「アブソリュートリー・ファビュラス」のポッシュだけどアウトローなパッツィ役も良いです。
ラブデイの父エドガー(ピーター・オトゥール)は、まさに古き良き時代のイギリス紳士。エドガー役のピーター・オトゥールは年齢を重ねてもとても素敵で、青い瞳の美しさも相変わらず。「アラビアのロレンス」のロレンス氏や、「おしゃれ泥棒(How to Steal a Million)」のデルモット氏も素敵でした。
ジュディスは、ラヴデイの兄エドワード(ポール・ベタニー)や、医師志望のジェレミー(ジョージ・アスプリー)とも知り合います。ケアリー=ルイス一家はいつもリラックスしていて温かく、スノッブなところがまったくありません。エドワードと乗馬へ行こうとするラブデイに「ジュディスを招待しているのに自分勝手はしてはいけない」と注意までします。敷地内に住む叔母ラヴィニアも含めて全員が気さくで、彼らはジュディスを娘のように扱い、ジュディスもナンチェロウを自分の家のように感じ、戦前の貴族的な生活を満喫します。
叔母のルイーズ宅でクリスマス休暇を過ごすジュディス。ジュディスは少し早いクリスマスプレゼントとして叔母から自転車を叔母から贈られ、海岸沿いを自転車で走り回ります。
叔母と家政婦のヒルダだけならジュディスも何の問題もなく幸せでした。叔母にはビリー(デヴィッド・マッカラム)という友人がいて、叔母にとってはただの友人という位置づけなのに、彼は理解ある友人のように振る舞いながらも結婚できることを期待しているようです(そして叔母の家を手に入れたい)。
しかも彼はジュディスも狙うという気もち悪さ・・・。3人で映画へ行けば、暗闇の中でジュディスに触れてきたり、ジュディスが一人で留守番しているところを(しかも風呂に入っていた)訪ねてきたり・・・。ジュディスは頑として跳ね返し、ビリーは「友達になりたいだけ」と説明するものの、こういうのは絶対嘘に決まってる。
ビリー役のデヴィッド・マッカラムは、イギリスのSFドラマ「サファイア&スティール(1979–82)」でジョアンナ・ラムリーとW主演していました。超常現象を扱った内容で、当時の「Xファイル」のような人気ドラマ。そんな主役を演じていた彼がここでは変態おやじ役というのがなんとも悲しい・・・。
寄宿学校を卒業
2年後、ジュディスとラブデイ(ケイティ・ライダー・リチャードソン)は寄宿学校を卒業する年齢に。
驚いたのが、ジュディス役の役者がキーラ・ナイトレイからエミリー・モーティマーに変わっていたこと。キーラのシャープな顔立ちから、エミリーのおっとりした雰囲気になります。当時のキーラは無名で若く、長期間の演技に向いていなかったことが理由らしいですが、2年で人はここまで変わらない!


そして悲しいことに叔母ルイーズが急逝。運転中にたばこに火をつけようと前方不注意の事故を起こしてしまったのです。なんとも彼女らしい最期です。叔母はジュディスに大きな遺産を残していました。ジュディスは「元本部分は指定年齢まで手をつけられないけど、利息は自由に使える」とキャトー校長から説明されます。叔母は自分のように、ジュディスにも経済的に自立してほしいと考えていたのです。なんと素敵な伯母なのでしょう。
ジュディスの家族から白黒の無声映像のフィルムが届き、ジュディスはナンチェロウの家族と共に視聴し、自分たちもガーデンパーティーの様子の映像を送ります。当時の映写機はかなり大きいですが、ジュディスの家族も携帯して移動していたのでしょうか・・・。それにしても、この時代のファションは仕立ての良いデザインが多く目の保養になります。
ジュディスがエドワードとパブへ行くと、そこには叔母と結婚できなかったビリーが。「結婚したかったのに」とジュディスに近づくビリー。エドワードがビリーを追い払いますが、デヴィッド・マッカラムがこんな役で少し残念・・・。
ジュディスとエドワードが体の関係になると、結婚まで考えるジュディスに対し、エドワードは少し面倒くさそう。人生を楽しみたいという彼にジュディスは憤慨します。
第二次世界大戦の勃発
第二次世界大戦が勃発し平和な日常は終わります。ナンチェロウは子供たちの疎開先になっていました。
ジュディスは王立女子海軍部隊(Wrens)に志願しタイピングの仕事をします。作者のロザムンド・ピルチャー自身もWrenに所属していたため、原作での戦時描写はかなり細かいとのこと。「シェルシーカーズ」でも戦時中を回顧する切ない描写がありました。
ラヴデイの叔母ラヴィニアが亡くなり、ジュディスはエドガーの提案でナンチェロウの敷地内にあるラヴィニアの家を購入することに決めます。ただしその家はすぐに徴用されます。エドワードは出兵前、ジュディスへ紳士的にプロポーズするものの、ジュディスは彼を愛していないことを理由に断ります。
ほどなくしてエドワードは負傷したため、戦地から戻ります。彼がナンチェロウに到着したときには、ほとんど視力を失っていました。彼は家族の負担にしかならないことに心を病み、自ら命を絶ってしまいます。
ダイアナのロンドンのミューズに滞在したジュディスは、そこでジェレミーと再会し、二人は恋に落ちます。
ミューズ「muse」はもともと馬小屋だった建物で、テラスドハウスのように並んでいることが多く、ロンドンにも数多く存在。現在ではおしゃれに改装され、高額な住宅になっています。ドラマや映画を観ていると、貴族はロンドンにも宿泊用に便利な家を持っていることが多いです。
しかし戦時中の郵便の混乱により、ジェレミーからの婚約を申し込む手紙はジュディスに届かず、そのまま時間だけが過ぎてしまいます。
ラブデイは、数年前にナンチェロウに立ち寄った芸術家志望のガスという恋人がいました。ガスは出兵したまま消息がすっかり分からなくなってしまい、ラブデイは地元の農夫ウォルターと結婚することに。ラブデイの結婚パーティーへ到着したジュディス、せっかくそこにジェレミーも来ていたのに二人はすれ違ってしまいます。
戦争の悲劇はジュディスの家族にも襲いかかります。シンガポールが陥落し父は捕虜収容所で亡くなり、母と妹ジェスは脱出したものの、生き延びたのはジェスだけ。彼女はオーストラリアへ渡っていました。帰国したジェスは心的外傷による失語症を患い、ジュディスとも会話ができません。そして、寝言で「歩け、急げ、行くんだ」と日本語でうなされるのです。悲しいことです・・・。
ジェスが持っていたわずかな荷物の中には、ジュディスが送った戦前の美しいナンチェロウでの暮らし、エドワードが生きていた頃のガーデンパーティーのフィルムが入っていました。
そんな中、ダイアナはロンドンで行方不明になっていたガスと出くわします。ガスも心身ともに衰弱しきっていたため、ダイアナは彼をミューズに滞在させます。ガスも重いトラウマを抱え、ジェスのように日本語を繰り返しながらうなされ、イギリス兵たちの悲惨な状況を大量のスケッチに描いていました。
ジュディスの家族やガスの悲劇は日本軍の行動に起因しているため観ていて少しつらくなります。「悪者」というよりも、戦争という非人間的な状況の中で起こってしまった悲劇ですよね・・・。
ネタバレせずにここまでで・・・。
3人のジュディス
キーラ・ナイトレイからエミリー・モーティマーへの役者変更については、若年期と成人期で役者が変わることはよくあることだし、役者のスケジュール事情などもあるので理解できます。ただ、外見の連続性が損なわれているし、エミリー・モーティマーのジュディスは振る舞いも違うので慣れるまで少し時間がかかりました。
一部では「数年でこんなに変わらないだろう」「カリスマ性のある若いジュディスから、画面を同じように支配できない役者に変わった」という意見もあったようです。とはいえ、多くの人は「キーラの若々しさ」「エミリーの落ち着いた雰囲気」と好意的に受け止めていたようです。
しかし、続編ドラマ「ナンチェロウ(Nancherrow)」では、さらにジュディス役がララ・ジョイ・ケルナーへ変わります。こちらはさすがに「また役者が変わった」「連続性がまったくない」という声が多かったようです。「ナンチェロウ」はラヴデイが中心なので、ジュディスの出番はそれほど多くはありません。ドラマ序盤で、ジェレミーと一緒にいることで「ああ、ジュディスか」と認識するまで数秒要しました。
むしろ、ララ・ジョイ・ケルナーの方がキーラ・ナイトレイの雰囲気に近い気もするので、最初から彼女でも良かったのではと思ってしまいました。

おわりに
すべての人に壊滅的な喪失や悲しみ、困難をもたらした戦争の時代を経て、ジュディスはナンチェロウという「帰る家」を得たことで、孤独だった少女から家族と愛に恵まれた女性へと成長していきます。タイトルの「Coming Home(帰郷)」は、そんな彼女が、自分の居場所や帰る家、そして再会を願う大切な人を持つ意味を知っていく過程そのものなのだと思います。
作者のロザムンド・ピルチャー自身もコーンウォール出身。結婚後はスコットランドへ移り住んだため、彼女の小説にはコーンウォールやスコットランドがよく登場します。
ドラマ内には、ラブデイとエドワードの姉アシーナも登場。彼女の恋人ルパートを演じるチャールズ・エドワーズは「シェルシーカーズ」でノエル役でした。
ペネロピ・キースは「ノルマン・コンクエスト」にサラ役で登場(とても若いです)、ジョアンナ・ラムリーは「Absolutely Fabulous」の他に「輝ける人生」「Cold Comfort Farm」にも登場しています。
帰国したジェス役のブルック・キンセラは、イギリスのソープオペラ「EastEnders」で、2003年頃にケリー・テイラー役として出演していました。






