「French Kiss(フレンチ・キス)」は、1995年公開のアメリカのラブ・コメディ映画。
出演はメグ・ライアン、ケビン・クライン、ジャン・レノ、ティモシー・ハットンと豪華な顔ぶれがそろっています。それだけでなく魅力的なパリの風景や、牧歌的な南フランスの情景、そして洒落たストーリーによって、観たあとにはすがすがしい充実感が残ります。
当時のメグ・ライアンは、ただそこにいてくれるだけで満たされるような存在です。可憐で華奢(というか顔が小さい!)で魅力的です。ショートカットのヘアスタイルもとても素敵です。
「French Kiss(フレンチ・キス)」のあらすじ
アメリカ史の教師ケイト(メグ・ライアン)は、医師の婚約者チャーリー(ティモシー・ハットン)との結婚を控えており、ケイトの夢は結婚して幸せに暮らすこと。子どものころからいつか素敵な家を持ちたいと願いコツコツ貯金を続けてきました。
極度の飛行機恐怖症のケイトは、会議でフランスに行くことになったチャーリーに同行するために恐怖克服セラピーに挑戦するも、失敗。しかもチーズアレルギーがあり、フランス語も苦手なため、フランス行きを諦めることに。
チャーリーはフランスから毎日ラブコールをかけてきたものの、次第に通話時間が短くなり、ある日「好きな人ができてしまった。だから結婚はできない」と告げてきます。ケイトはフライト恐怖症などと言っている場合ではなく、フランスへ向かう決心をして飛行機に乗り込みます。
離陸前に不安で震えていたケイトの隣に座ったのが、リュック(ケヴィン・クライン)でした。彼は見るからに怪しげな風貌のフランス人で、ケイトとは明らかに気が合わなそうなタイプです。
震えているケイトを落ち着かせようとしたのか、リュックはあえて反論を引き出すような話題をふっかけてきます。機内アナウンスが流れて、ケイトはプチパニックになり「なんて言ったの?ねえ、なんて言ったの?」とリュックに尋ねます。リュックは「パイロットがエンジンに亀裂が入ったけど、とにかく離陸するって」と驚かし、その直後に英語のアナウンスが流れ、ケイトはそれがただの注意事項だったとわかります。
そしてリュックは、ケイトは何にでも怯えるタイプの人だと突っかかり、ケイトは「そんなことない」と反論します。気がついたときには飛行機は雲の上でした。
化粧室に入ったリュックは、懐から何やら怪しげな包みを取り出し大事そうに見つめます。それを、こっそりケイトのバッグに忍ばせ、何事もなかったかのように税関を通過します。
フランスに到着
空港で偶然出くわしたのが、ジャン=ポール・カードン警部(ジャン・レノ)。
リュックに以前から目をつけていた彼は家族旅行の帰りで、ケイトと一緒にタクシーに乗ろうとしていたリュックを自分のタクシーに乗せます。警部はリュックに対してちょっとした恩義があるらしく、できればリュックにまっとうに生きてほしいと感じているようです。
自分のバッグに見知らぬものが入っているとは知らないままのケイトは、チャーリーが泊まっているホテルに向かいます。ロビーでチャーリーに会うつもりで待っていると話しかけてくる紳士風の男。警戒していたケイトは、そこでチャーリーとセクシーなフランス人の恋人ジュリエットとの熱烈にキスしているところを目の当たりにしてしまい、ショックのあまり気を失ってしまいます。
紳士風の男は詐欺師で、ケイトが意識を失っている間に、彼はパスポートや財布の入ったバッグを盗み去ります。リュックが到着して、ケイトが意識を取り戻すと、二人は荷物を取り返しに行きます。その男はリュックの昔の仲間だったというのです。
リュックは、自分が取り戻したかった小さな木(ブドウの木)はすでに見つけたものの、一緒に包んでいたネックレスがありません。おそらくケイトのバッグの中だろうと、ケイトを助けるふりをして同行することに。ケイトは、チャーリーがジュリエットの両親に会うためカンヌへ向かったことを聞き、南フランス行きの列車に乗り込みます。
途中、リュックの故郷であるポール=アゲットのラ・ラヴェル駅で列車を降りた二人は、リュックの実家とブドウ園に滞在することになります。彼女はリュックの過去や、彼がポーカーでブドウ園の生得権を兄に賭けてしまった経緯を知ります。彼がワインについて豊富な知識を持ち、自分のワイナリーを持つために土地を購入したいことも夢を持っていることも。
南フランスの美しい自然、懐かしさを感じる街並み、そして居心地のよさそうなリュックの部屋(埃はかぶっていますが)等々・・・ここは私が好きなシーンです。
リュックが探していたネックレスは盗品で、彼はそれをカルティエで売るつもりでいました。リュックは、その売却資金でワイナリーの土地を購入するつもりなのです。ケイトがそれをカルティエに持ち込む役を引き受けます。
ケイトがカルティエに入り、そこから予想外の展開が始まります。ラストでは、ケイト、リュック、ジャン=ポール警部のそれぞれが粋な心意気を見せてくれます。
登場するアイコン的な景色や建物
パリから南フランスへと移動する中で、多くのアイコン的な建物や場所が登場します。
パリでは、エッフェル塔、ホテル・ジョルジュ・サンク、ルーブル美術館のピラミッド、シャンゼリゼ通り、凱旋門、アメリカ大使館、カナダ大使館、サン・ラザール駅などが映し出されます。
プロヴァンスでは、リュックの故郷である村としてヴァルボンヌが使われており、そこには17世紀の古い建物であるホテル・レ・アルモイリー前の広場も登場します。建物がとても美しいです。そのほか、ラ・ラヴェル駅、カンヌにあるカールトンホテル、そのビーチフロント、ロビーのブラッスリー、そして近くのカルティエ・ブティックなどが舞台になります。
おわりに
ケヴィン・クラインの出演作は非常に多く、作品ごとにキャラクターががらりと変わるところが魅力です。
「フレンチ・キス(French Kiss)」では、小悪党ながら誠実で情に厚く、ぶっきらぼうなフランス人を、「ワンダとダイヤと優しい奴ら(A Fish Called Wanda)」では、自称知的だが実際は短絡的で暴力的なアメリカ人ギャングを、「危険な動物たち(Fierce Creatures)」では、冷徹で利益優先のアメリカ人ビジネスマンを(2役)、「海辺の家(Life as a House)」では、控えめで内省的な余命わずかな建築家を、「イン&アウト(In & Out)」では、保守的な田舎町の高校教師を、「シルバラード(Silverado)」では、友情に厚く義を重んじる元ガンマンの流れ者を演じており(他にも多数)、観るたびにまったく違う顔を見せてくれるのが面白いです。