「Rosemary & Thyme(ローズマリー&タイム)」は、イギリスで放送されたミステリードラマシリーズ(2003年~2006年)。日本でもCSなどで放送されたようです。
元大学講師の植物病理学者のローズマリー・ボクサーと、元警察官で園芸愛好家のローラ・タイムが、イギリス国内外の美しい庭園を舞台にプロのガーデナーとして、植物の専門知識や観察力を活かして殺人事件や謎解きを展開します。
「ガーデニングするたびに事件に巻き込まれているよね?」
などという野暮な質問はしてはいけません笑。
確かに、庭仕事をしているだけなのに殺人事件の発生率は高いですが・・・笑。
ガーデニングが趣味の方や英国の伝統的なガーデニング、歴史的庭園、邸宅の風景、英国らしい田園美がが好きな方、コージーミステリー好きの方、英語のリスニングをしたい方におすすめです。
オープニングタイトルの映像は、花瓶に生けられた美しい花々が開いていく様子が映し出されます。花々はやがてローズマリーとタイムへと変わり、それらを束ねるロープが「&」の形になるという洒落た演出。オープニングの音楽には、イングリッシュ・フォークの伝統的な旋律「Scarborough Fair(スカボローフェア)」の要素が取り入れられています。クラシカルで優雅なギターの音色に、ほんのりとミステリーの緊張感があって美しいです。
演奏はイギリスのクラシックギタリスト、ジョン・ウィリアムス。彼は映画「ディア・ハンター(The Deer Hunter)」のテーマ曲「カヴァティーナ」で世界的に知られ、20世紀を代表する名手の一人とされています。アンドレス・セゴビアに師事し、英国のクラシックギタリストジュリアン・ブリームとは親しい友人関係とのこと。(画像は引用目的で使用しています)
ドラマ「ローズマリー&タイム」 あらすじ

元婦人警官のローラ・タイム(パム・フェリス)は、夫が若い女性と浮気をしたため、家を出ることに。長年連れ添った夫に未練もあったようですが、彼女が心残りだったのは愛情を注いで手入れしてきた美しい庭でした。悔しさのあまり庭の石を拾って家の窓に投げつけるローラ。彼女を迎えに来ていたイライラ気味のタクシードライバーはその姿に驚き、慌ててローラのために車のドアを開けます笑。
しばらくの間、ローラは旧友のサムの手助けで、B&B(ベッド&ブレックファースト)に滞在することに。そこに同宿していたのが、ローズマリー・ボクサー(フェリシティ・ケンダル)でした。ローズマリーは大学時代の友人からの依頼で、彼の豪邸にある樹木の病気を調査していました。彼女はマルムズベリー大学で応用園芸学の講師を18年間務めていたものの、不当に解任されてしまいます。
サムがローラを迎えに来るはずの朝、彼は現れない。そこでローズマリーが「その辺りなら通り道だから」と、ローラを車に乗せて移動しているとサムの事故現場に遭遇。ローズマリーは、ローラがB&Bに戻っても元夫のことばかり考えるだろうと、ローラを連れて屋敷へ向かいます。
元警察官のローラは、サムの不審な死だけでなく、屋敷で起きている出来事に違和感を覚えます。依頼人の妻や家政婦の不自然な行動、庭の植物の異様な痕跡が次々に見つかり、ローズマリーの植物病理学の専門知識と、ローラの元警察官としての直感を合わせることで二人は独自に調査を進めていきます。
ローラの離婚とローズマリーの解雇という、それぞれの人生を変える出来事が起こり、「エピソード2」からは二人はガーデナーとしてビジネスを始めます。そしてそれらの仕事先で事件に巻き込まれていくのです・・・。
移動にはローズマリー所有の1980年製のやや古いランドローバー・シリーズIIIが登場。この車は時折故障し、エンジンがかからないとローズマリーがレンチを取り出してボンネットを開け、修理・・・と思いきや、エンジンを叩く。そしてなぜか始動します笑。ローラは当初、ギアが入らないことに不満を漏らしていましたが、「エピソード2」からは(特に事件で急いでいるときには)スムーズに運転します。
ローラの息子マシューも警察官で、ローラが屋敷の家政婦の犯罪歴を調べるよう彼に依頼。マシューは「忙しいから無理だ」と言いながらも、結局母のために調査を行います。
二人は、依頼先の大きな邸宅で部屋を提供されることもあれば、近くのB&Bやコテージに滞在することもあります。二人がパブで食事をしたり、ビールを飲んだり、セルフケータリングで自分たちで朝食を作ったり、部屋でワインを飲みながら事件の真相について語ったりと、個人的には親近感が湧くシーンばかりで観ていて楽しいです。
舞台が美しい・・・!
エピソードの舞台となる豪邸やその内装、広い庭、並木道、カントリーサイドの家々、教会、公園なども美しく、眺めているだけでも楽しめます。二人が訪れる邸宅、ホテル、B&B、パブ、カフェ、ショップなど、あらゆる場所に花が美しく飾られており、細部までこだわりを感じます。
二人はイギリス国内だけでなく、フランス、ポルトガル、スペインなど旅行や依頼で出かけます。その先々の風景も見どころです!
ローズマリーとローラの優しくて正義感のあるキャラクターや各エピソードも魅力ですが、毎回美しい植物を眺められるので、観終わった後、元気をもらった気分になります。植物に触れると良いエネルギーを受け取れると聞きますが、映像を見てそのような気分になるのが不思議です。DVDを揃えて持っておいても損はないと思います。
印象的なエピソード
全てのエピソードが良かったと思いますが、以下は特に印象的だったものです。
エピソード3 「The Language of Flowers」
コールデコット家所有の邸宅で運営されている健康スパで、ローズマリーとローラは敷地内の滝の修復を依頼されます。オーナーのフランシス・コールデコットが絞殺された状態で発見され、事件の手がかりは11年前に亡くなった夫が執筆し、昨年出版された「The Language of Flowers」に隠されていました。エピソード内に登場する2つの滝が非常に美しく、水の音も心地よいです。
ケイト役のアンナ・ウィルソン=ジョーンズは「Monarch of the Glen」のジャスティン役、ピーター役のクリス・ラーキンは、マギー・スミスの息子です。
エピソード8 「Orpheus in the Undergrowth」
仕事の依頼は、ローラの旧友ジュリアから。ジュリアが住むノッティング・ヒルのフラット(アパートメント)の共有プライベートガーデンのガーデニングです。こんな美しいプライベートガーデンがあるフラットなら住んでみたいものです。そのフラットには、ローラの娘ヘレナも暮らしており、久しぶりに会ったローラを無視しています。なぜなら、両親の別居はローラの浮気が原因だと父から聞かされていたから。もちろんその誤解は後に解けますが。
メイ・ボーシャン役のフィリダ・ロウは、イギリスの名女優エマ・トンプソンの母で、顔立ちや話し方が似ています。
エピソード10 「The Invisible Worm」
依頼は、スタッグフォード・ロッジ校の枯れ始めたバラの調査。
二人が学校に到着すると、ちょうど学期末の恒例行事が行われていました。それには教職員の一人が鹿の格好でふざける儀式が含まれているとこのこと、しかしその翌日、地理教師サイモンの遺体が発見されます。教育を愛する古典教師のオークリー氏は、エピソードの最後で新ヘッドマスター(校長)に就任。オークリー氏はローラに好意を抱いており、ローズマリーたちの学校の去り際、ローラに「ヘッドマスターの妻なるのはどうだろう」と声をかけて、二人を驚かせます笑。
オークリー氏のアンソニー・アンドリューズは「ブライズヘッド再訪」で、セバスチャン・フライト卿を演じています。
エピソード11 「The Gongoozlers」
世界一周ヨットセーラーとして有名なクイニー・ドレル(ベリンダ・ラング)が司会を務める番組で、ローズマリーは高所恐怖症のクイニーの代役として出演することに。しかし、不運にも足場から落ちて入院してしまい入院してしまいます。ローズマリーに代わってクイニーがローラの相棒として活躍するエピソードです。
エピソード12 「The Italian Rapscallion」
ローズマリーの旧友エマが、イタリアのリグリア海岸でレストランをオープンすることになり、ローズマリーとローラは準備を手伝いに行きます。もちろんここでも殺人事件が起こり笑、二人は謎解きをすることに。美しいイタリアの風景も見どころのひとつで、映像を見ているだけでも楽しめます。
事件は無事に解決し、レストランはグランドオープンの日を迎えます。なぜかオーナーのエマは刑事と事件の顛末について語り合いながらテーブルで食事をしています。なぜかローラが給仕をしており、なぜかローズマリーがキッチンで料理をしているという不思議な状況が笑。ローラは、「料理が冷たい」と苦情を受けて料理を下げてきます。てんてこまいで働いていたローズマリーは「エマはどこへ行ったんだ!」と怒鳴りますが、料理を戻してきたのはエマでした笑。
エピソード13 「Swords into Ploughshares」
ホテルに滞在していたローラは、「ローズマリー・ボクサー博士がエングルトン・パークで殺害された」というニュースを見て衝撃を受けます。そしてエングルトン・パークを所有するエングルトン卿(ジュリアン・ワダム)を訪ね、ローズマリーが何をしていたのか、単独で仕事をするはずがないと刑事に話し、訃報を伝えにローズマリーの母宅へ向かいます。
ローズマリーの母は「まさか」と笑いながら「ローズマリー!」と呼び、「彼女はここにいる」と答えます。「分かります。私もそれは感じます。彼女が隣にいるかのようです」としみじみするローラ。そこへローズマリーが2階から降りてきて、ローラを驚かせます。
二人はエングルトン卿の屋敷で何度か食事をするものの、なぜか家政婦のウェブ夫人がローラに対抗心を燃やしており、ローラの料理だけひどい味付けに笑。事件の真相が明らかになると、ローズマリーとローラ、エングルトン卿は犯人に命を狙われてしまい、ウェブ夫人がフライパンで窮地を救います。「彼女が今週フライパンを使った中で、一番できが良かったわ」と皮肉を言うローラ笑。
エピソード15 「The Cup of Silence」
依頼は、ウッドリー・コート・ホテルのブドウ園の雑草駆除。ブドウ園を所有するベンの祖父(ロビン・パーキンソン)は、ワイナリーのメンテナンスを担当しており、とてもチャーミングな人物。ブドウ園を訪れた二人が試飲のワインを飲んでいると、「売る分は取っておいてね」と声をかけたり、彼がガス漏れで倒れたところを救出されたときには、二人に「人工呼吸する?二人のどっちでもいいんだけど」と冗談をいう素敵なおじいちゃんです。
雑草対策のためにローズマリーは地元の図書館で山のような本を借りて、専用の雑草対策マシンを設計します。祖父はその設計通りに制作し、さらに故障したローズマリーのランドローバーまで修理します。美しいブドウ園の中を、祖父がランドローバーを運転してきてサプライズするシーンが感動的です。
エピソード16 「In a Monastery Garden」
依頼は、ウェルミンスター大聖堂への王室訪問に間に合うよう、古い修道院庭園の修復をすること。王室訪問と聞いて「次はバッキンガム宮殿のガーデニングか?」と喜ぶ二人。しかし作業中、大聖堂の管理責任者の娘の遺体が見つかり、さらに庭園の古井戸からは骸骨が発見されます。
「当日は正装するかしないか」で意見が分かれた二人でしたが、お互いがお互いの意見を取り入れて逆の服装をしてしまいます。さらにローラは王室に植物の名前を教えたつもりが、失礼にも聞こえることを言ってしまい自己嫌悪に陥ります笑。
エピソード17 「Seeds of Time」
依頼は、著名な植物学者エドウィン・パージェターの種子コレクションの再整理と、温室の植物のリスト化。この家は、以前ローラが住んでいた家の近所にありました。
ところがパージェター家の裏庭で、謎のチリ人男性の遺体が発見。そしてパージェター家に、家をそのままの状態で高値で購入したいという熱心なカップルと不動産業者も訪れてます。ローズマリーが化学メーカーの植物研究部門長を訪ねると、パージェター家に来ていたカップルの姿を見かけます。その後、その女性がパージェター家で遺体となって発見されるのです。
二人は、エドウィン・パージェターの種子コレクションの中に非常に価値のあるものが含まれていたことを突き止めます。そしてその種子は、何十年も前にある方法でローラの家に渡っていました・・・。
エピソード22 「Enter Two Gardeners」
依頼は野外劇場のガーデニング。そこではアマチュア劇団が練習をしており、劇団の中にはローズマリーの若い従弟チャールズもいました。
リハーサル中、小道具の銃に実弾が装てんされており、俳優の一人が命を落とします。ローラは、ジェニーのアイルランドのメイド役の演技がひどいと感じており、事件のショックで寝込んでしまったジェニーの代わりに舞台に立つことに。本番ではアイルランド訛りを交えて熱演し、ローラがあまりに役に入りすぎて客席から笑いが漏れます。その姿に目を見張るローズマリー笑。これが最終回なのが残念です。
おわりに
70年代のイギリスのシットコム「The Good Life」に出演していたフェリシティ・ケンダルは、とてもチャーミングな女優で、現在でも多くのファンに支持されています。
「Matilda」ではがらっと雰囲気が変わり暴力的な校長役(最初、どれがパムなのか分かりませんでした笑)のパム・フェリス。「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」では、風船のように飛んでいってしまうマージ・ダーズリー役など多彩な演技を見せています。
個人的には「To the Manor Born」の脚本を手掛けたピーター・スペンスが「ローズマリー&タイム」のいくつかの脚本も担当していた点に注目しました。彼は他にも「ノット・ザ・ナイン・オクロック・ニュース」などを手掛けています。




