イギリスで銀行口座を開設すると、「小切手帳(Cheque Book)」が送られてきます。
この小切手に必要事項を記入して支払先に渡すと、相手は記載された金額を受け取ることができます。
ただし、小切手を渡しても口座に十分な残高がない場合、「不渡り」となってしまいます。
これは私の小切手が不渡りになったときの話です。
小切手が不渡りになってしまう意味は?
日本では、個人が小切手を使う機会はほとんどなく、大金を扱う裕福な層か、企業が支払いや資金移動の手段として使う程度で、一般家庭には浸透していません。
日本で一般人が小切手を使わない理由の一つとして、銀行の送金や引き落としが非常に正確で信頼できるという点が挙げられます。
日本人にとって「銀行がきちんとしている」のは当たり前のことかもしれませんが、海外では必ずしもそうとは限らないようです。
イギリスでも現在は「ダイレクトデビット(Direct Debit)」が主流になっていますが、現在もこれに対して懐疑的な人は一定数存在します(特に高齢者層)。また、小切手文化が根強く残っている背景には、個人間や小規模事業者の間で「紙での支払い」に安心感を抱く傾向が今なおあることも一因だそうです。
かつては自動引き落としにミスが多く、小切手を使わざるを得なかった時代があったとも聞きます。
銀行口座に残高がないと?
小切手を振り出すからには、その金額分の残高が銀行口座に入っていなければなりません。振出日当日に十分な資金があることが前提です。これは当然のことですよね。
しかし、手違いや残高の見落としなどによって資金が不足していた場合、不渡りになってしまいます。
企業が不渡りを出すと、信用問題に発展し、最悪の場合は倒産につながることもあります。
それだけに、小切手による支払いは非常に重要なのです。
ただ、イギリスでは個人の小切手については、一度だけ多めに見てもらえた経験があります。
証券会社の口座にまとまった金額を送金しようとして小切手を送った際、金額を誤って記入してしまい不渡りになってしまいました。そのとき、「残高不足のため受け付けられませんでした」と書かれた手紙とともに、該当の小切手が銀行から返送されてきたのです。
私は以前、金融機関で送金や小切手発行業務に携わっていたことがあり、「これはマズい!」と内心かなり焦りました。すぐに支払先に連絡を入れ、平謝りで事情を説明しました。
「今度は間違いありませんので、もう一度だけ受け付けていただけないでしょうか。お願いします!」
そうして送り直した小切手は何事もなく処理され、送金も無事に完了しました。あまりにあっけなく処理されたことに正直驚きました。
とはいえ、不渡り小切手は「支払い義務違反」に該当しうるため、あくまで個別の対応次第だと思います。特に、複数回不渡りを出した場合には、銀行から警告を受けたり、口座が凍結されるリスクもゼロではありません。
残高をきちんと管理することは、社会人として基本中の基本です。不渡りになると、受け取った相手は換金できず迷惑を被りますし、銀行側にも余計な手間が発生します。最近では、不渡りの処理に手数料が発生することもあるようです。
受け取った小切手が不渡りだった場合
逆に、自分が受け取った小切手が不渡りになるケースもあります。例えば、イギリスのeBayで商品を販売した際、代金の支払い手段として小切手を受け取ることがよくあります。その中の1枚が不渡りになったことがありました。
イギリスのeBayでは「Paypal(ペイパル)」の利用が推奨されていますが、いまだに「小切手の方が安心」と考えるイギリス人も少なくありません。(追記:現在でもPaypalは使えますが、推奨はされていません。2025年現在)
小切手が不渡りになった場合は、相手に連絡して対処してもらいます。当然ですが、入金が確認できるまでは商品を発送しません。
通常、小切手を受け取ると、自分の銀行に持参または郵送して換金手続きをします。銀行はその小切手を発行した銀行(=振出人の銀行)に請求をかけるため、換金には通常3〜5日ほどかかります。
そのため、小切手を受け取ったらできるだけ早く銀行に提出する必要があります。1日でも早く提出すれば、それだけ早く入金が確実になるし、支払う側も「支払いが完了した」と安心できるわけです。

おわりに
「あなたの小切手が不渡りになりました」という表現には、
・Your cheque has bounced.
・Your cheque was returned due to insufficient funds.
・Your cheque could not be processed because of a lack of funds.
・The cheque you issued has been dishonoured by the bank.
・Your cheque was declined by our bank.
などがあります。こんなメッセージもらわないよう気をつけないと笑。