The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society(ガーンジー島の読書会の秘密)

ガーンジー島の読書会の秘密」(原題:The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society)は、2018年公開のイギリス映画です。メアリー・アン・シェイファーとアニー・バローズの2008年同名小説が原作です。

舞台は第二次世界大戦後の1946年。ロンドンに住む若い作家ジュリエット・アシュトンが、ナチス・ドイツ占領下の英領ガーンジー島の住民と手紙を交わしたことをきっかけに、彼らの隠された過去や人生の断片、「読書会」の秘密に迫っていきます。

オープニングタイトルは、タイプライターがタイトルを1文字つづ打ち出しています。まさにジュリエットのタイプライターであり、それにより出会う人々が繋がっていきます。(画像は引用目的で使用しています)

リリー・ジェームズ、ミヒール・ユイスマン、グレン・パウエル、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、キャサリン・パーキンソン、マシュー・グード、トム・コートネイ、ペネロピ・ウィルトン
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目次

あらすじ

第二次世界大戦中のドイツ占領下にあったガーンジー島で、4人の島民が夜間外出禁止令に違反しているとして兵士に止められます。緊張が走る中、集まりの目的を説明するために「ガーンジー島の読書とポテトピールパイの会」という読書会だと名乗ります。

それから5年後、戦争が終わり復興が進むロンドンでは、若い作家ジュリエット(リリー・ジェームズ)は、最新書籍のプロモーションのために書店「Foyles」を訪れます。同行するのは出版社のシドニー(マシュー・グード)で、彼女の古くからの友人。「Foyles」はロンドンにある老舗の書店です。「昔はこんな感じだったんだ」というのを見ることができるのはいいですね。

ジュリエットは戦争で両親を失い、自宅も爆撃で半壊するという衝撃的な体験の持ち主。今でもその記憶が彼女を苦しめています。彼女の裕福なアメリカ人恋人マーク(グレン・パウエル)は、ニューヨークで一緒に暮らすことを希望しています。二人が社交ダンスホールで待ち合わせし、フォーマルな服装で踊る姿が素敵です。

帰宅すると、家主のバーンズ夫人が出てきます。ジュリエットは届いた花を夫人に譲り郵便物だけを受け取って部屋に上がります。夫人は「10時を過ぎのタイプライターはやめてほしい。銃声よりひどい音だ」と苦情を述べます。ジュリエットの仕事は順調なようで、彼女の小さな部屋には贈られた花が所狭しと飾られておりすでに花瓶も足りない様子。花を夫人に譲りたくなるのも理解できます。

その日の郵便物には、ガーンジー島からの手紙がありました。貼られた切手が特徴的です。ガーンジー島はイギリス領でありながら唯一ドイツ占領下になった地域。占領中はイギリスからの補給が途絶え、日用品だけでなく郵便用の切手も不足することに。そのため当時はガーンジー島独自の切手が発行されるようになりました。

ガーンジー島からの手紙

差出人はガーンジー島で農場を経営するドーシー(ミシェル・ユイスマン)という男性。彼の手元にある「チャールズ・ラム」の書籍は、かつてジュリエットが所有していたもの。本の中に書かれた彼女の名前と住所あてに手紙を書いているといいます。

彼は「ガーンジー島の読書とポテトピールパイの会」という夜の読書グループのメンバーで、この会はロースト・ピッグ(子豚の丸焼き)をドイツ軍に秘密にするために結成されたといいます。そして、チャールズ・ラムの別の本を購入したいけど島には書店がないので、ロンドンのどの書店で入手できるか教えてほしいというのです。

彼らの読書会とその成り立ちに非常に興味をそそられたジュリエットは、その本を購入し、読書会について質問した手紙とともにドーシーに返送しました。

ドーシーからも返信が届きます。

ドイツ軍は島民からあらゆるものを没収したため、島民はじゃがいもを食べて生活していたこと、手紙も制限され孤立した環境だったと説明します。毛布にくるまってじゃがいもを食べているドーシーの姿に胸が痛みます。

ある日、ドーシーのもとに「Aの家に肉切り包丁を持ってきて。Eより」というメモが届きます。意味もわかないまま包丁を持ってアメリア(ペネロピ・ウィルトン)の家に行くと、アメリアとエリザベス(ジェシカ・ブラウン・フィンドレー)が彼を迎えます。こんな素敵なファーマー(農夫)が肉切り包丁を持ってやってきたらドキドキしますが・・・笑。

なんとアメリアは自宅の隅に一頭の豚を隠しており、エリザベスが近所の住民を呼んで一緒に食べようと提案したのです。近所のイソラ(キャサリン・パーキンソン)とエベン(トム・コートネイ)もやってきました。ハーバリストのイソラは自家製ジンを持参。彼女のジンは強いらしく、みんなむせたり驚いたりしています笑。

郵便局勤務のエベンが持ってきたのが「ポテトピールパイ」。材料はじゃがいもだけ。パイの上の伝統的な模様もじゃがいもの皮(ポテトピール)だったのです。

全員が嫌なことを忘れて楽しい時間を過ごしたのに、その帰り道にドイツ軍に遭遇してしまい読書会だと慌てて言い訳をすることに。実際に読書会を運営することになったものの、そのおかげで彼らにとって安らぎの時間ができることになり、また、読書のおかげで新たな世界が広がったというのです。

不在の発起人

心動かされたジュリエットは、この読書会について執筆するためにガーンジー島へ向かいます。船が出る前に、ジュリエットはマークからのプロポーズを受け入れます。汽笛も祝福していました笑。

しかし島に着くとホテルが閉まっており、郵便局へ行くよう案内されます。ジュリエットとドーシーの出会いです。

郵便局にいたエベンに会うと「あのエベン・ラムジー?ポテトピールパイの発明者?」とジュリエットは声を上げます。店番をしていた孫のイーライ(キット・コナー)は「祖父のパイを食べに来たの?」と驚きます笑。イーライの郵便配達の馬車に便乗してホテルに向かうジュリエット。ガーンジー島に広がるの景色が美しいです。

念願の読書会に参加したジュリエット。アメリアはなぜかよそよそしく歓迎していない様子。しかし議論の時間になると、ジュリエットは文筆業らしく意見を述べ、メンバーと打ち解けます。そしてエベンが「オリジナルレシピ」といってポテトピールパイを振る舞います。ジュリエットがパイの感想を「ひどい!」と述べると全員が笑います。美味しくないのはわかりますが、メンバーたちの苦しい時期を笑顔にしてくれたパイなのだから、もう少し敬意を払ってもよかったのでは・・・と思ってしまいました。

この集まりのきっかけとなったエリザベスは不在でした。ジュリエットがこの読書会についての記事執筆の許可を求めると、アメリアは拒否します。後日、ジュリエットは、エリザベスは強制収容所に入れられたままであることを知ります。エリザベスの娘キットはドーシーが面倒を見ており、メンバーはエリザベスの話を避けている様子。ジュリエットは滞在を延長して調査を続けることに。メンバーたちにはドイツ占領について調べていると伝え、軍隊所属のマークにエリザベスの居場所調査を依頼したのです。

彼女に何が起こったのか

ジュリエットの調査や、メンバーたちとの会話から、何が起こったのかが徐々に明らかになっていきます。

エリザベスはドイツ兵のクリスチャンと密かに交際しており、彼がキットの父親でした。しかし、クリスチャンは送還され、エリザベスの妊娠を知らないまま亡くなってしまいました。一方、アメリアはドイツ軍が上陸する数日前の爆撃で、出産を控えていた娘を失っていました。夫もドイツ軍のせいで亡くしたことからドイツ兵との交際をどうしても受け入れられなかったのです。

娘の親友だったエリザベスがそばにいてくれたにもかかわらず、アメリアはエリザベスを助けることができなかったことをずっと後悔していました。エリザベスは負傷したドイツ軍の強制労働者の少年を病院へ連れて行こうとしていたところ、その途中で見つかり、強制収容所へ送られてしまったのです。

ある日、ジュリエットはキットの世話を1日任され、帰宅したドーシーとの間に、ちょっとしたスパークが起こります(お約束ですね・・・笑)二人がいい雰囲気になりそうなとき、マークが調査結果を持って現れます。エリザベスがすでに亡くなっていることがメンバーたちに伝えられ、キットにも知らせることに。メンバーたちは「私が伝える」「いや私が」と言い合いながら、まるで家族のようにキットを思いやっていました。

ジュリエットとマークの結婚は予定どおり進められることになり、二人は飛行機でロンドンへ戻ることに。離陸のために飛行機が一度回ってから離陸するシーンがカッコいいです。

再びタイプライターに向かう

ロンドンに戻ったジュリエットの心はまだガーンジー島に残っており、以前の生活には戻れない様子。島のことを考え続け、食事も喉を通らない日々が続きます。心配したシドニーが訪ねてくると、バーンズ夫人は「あのタイプの音がなくて、静まりかえっている方が心配だ」と話します。

読書会について書かないと約束していたものの、シドニーは「エリザベスだって自分の心の声に従わずにはいられなかった」と指摘します。
ジュリエットは婚約解消したいとマークに伝えます。マークは指輪をポケットにしまい、あっさりと受け入れて席を立ってしまいます。そして戻ってきたかと思えば「さよなら」と言いながらテーブルの上の冷えたシャンパンを持ってまた去っていきます笑。

ネタバレしない方が良いかと思いますのでここまでで・・・。

おわりに

ジュリエットは、手紙を書いているときや、タイプライターに向かっているときの顔が一番素敵だと思います。原稿の献辞(dedication)に「for Kit(キットへ)」と記されていたのが胸に響きました。心温まるエンディングではありましたが、個人的には、読書会やガーンジー島への愛情を感じさせる演出で締めくくってほしかったです。

エンドロールでは、シドニーを含めた読書会の楽しい議論の様子が登場します。

ジュリエットがパブで食事をしながら書きものをしていると、そこにドーシーがやってきて、エリザベスにハーフパイント、自分にはパイントを購入して一緒に座ります。素朴なパブの雰囲気がとても心地よさそうです。ドーシーのパイントからビターが少しこぼれていたのも美味しそうでした笑。持ってくるときによくこぼれたりするので笑。

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