「Open All Hours」は、1976年から1985年までBBC2で放送されたイギリスのシットコムです。
サウスヨークシャー州ドンカスターにある、小さな伝統的な街角の店の日常をユーモラスに描いています。
タイトルの「Open All Hours」は、「常に営業中」や「いつも開いている」といったニュアンスを持っています。営業時間が長い、あるいは年中無休というイメージです。実際には24時間営業ではありませんが、朝の暗いうちから店を開けているシーンがよく登場します。
アークライトの食料品店を舞台にしたこの番組は、多くの人が共感できるユーモアで人気を博しました。なお、長い年月を経て、2013年には「Still Open All Hours」として復活し、グランヴィルが店長を務める形で2019年までシリーズが続きました。
2004年にBBCが実施した「イギリスのベスト・シットコム」投票では、「Open All Hours」は100作品中第8位にランクインしています。
「Open All Hours」の魅力とあらすじ
「Open All Hours」の舞台は、イギリス南ヨークシャーのドンカスターにある小さな食料品店。
店主のアークライト(ロニー・バーカー)は、非常に倹約家で、人に物を売りつけるのが上手です。自分の出費は極力抑えようとする一方で、店に入ってきたお客には巧みに言葉を操って何かしら商品を買わせてしまいます。
アークライトのお気に入りは、向かいに住む助産師のグラディス(リンダ・バロン)です。彼女には、いつでも「結婚しよう」「僕たちは婚約すべきだ」「僕の吃音には君が必要だ」「結婚したら店の商品を割引してあげる(無料じゃない笑)」などと、かなりストレートな言葉でプロポーズしていますが、いつも軽くあしらわれてしまいます。
店では、アークライトの甥であるグランヴィル(デヴィッド・ジェイソン)が働いています。グランヴィルは幼い頃にシングルマザーの母親を亡くしており、アークライトが父親代わりとなって育ててきました。優しく、少し奥手な性格の持ち主です。ちなみに、デヴィッド・ジェイソンはイギリスでは大御所として知られる俳優であり、「Open All Hours」では若くスリムな彼の姿を見ることができます。
作中では、グランヴィルが時々アークライトの吃音をからかうような場面もあります。例えば、アークライトが「天気予報(weather forecast)」と言おうとして「fore-, fore-, fore-…」とつかえていると、グランヴィルが「4かける3で、12castsかな?」などと冗談を言うようなシーンです。
また、舞台が1970〜80年代であるため、昔のイギリスの商店の雰囲気や店頭に並ぶレトロな商品がたくさん登場し、見ていてとても楽しいです。「日本でおなじみの商品って、昔はこんなパッケージだったんだ」とか、「パンやハムって、こうやって買っていたんだ」といった発見があるのも魅力のひとつです。朝の暗い時間にはミルクマンが牛乳を配達しています。
個人的に特に気に入っているのは、店のレジです。「ガチャン、ガチャン」と音を立てて操作する重厚な仕組みが時代を感じさせます。ただし、アークライトの店のレジは、お札を入れる部分のバネが非常に強く、引き出しが殺人的に勢いよく閉まるため、アークライトもグランヴィルも毎回お札を恐る恐る差し込む姿が見られます。
昔の海外のお店や文化に興味がある方には、非常に楽しめる内容だと思います。
また、イギリスの個人商店だからこそか、あるいは昔の習慣なのか、飲み食いしながら接客するなど、時代の空気を感じさせます。
主要なキャスト
役名:役者名の順で記しています。
アークライト:ロニー・バーカー(Ronnie Barker)
ロニー・バーカーはイギリスのコメディ界を代表するレジェンドで、多彩な演技力が高く評価されています。主な出演作に「Porridge」「The Two Ronnies」「Going Straight(Porridgeの続編)」などがあります。
グランヴィル:デヴィッド・ジェイソン(David Jason)
「Only Fools and Horses」での「Del boy(デルボーイ)」、「A Touch of Frost」「The Darling Buds of May」など、数多くの人気作品に出演しています。
看護師グラディス・エマニュエル:リンダ・バロン(Lynda Baron)
「EastEnders」「Doctor Who」「Fat Friends」などに出演。
グラディスを見た瞬間に「どこかで見たことがある」と感じて調べてみたところ、彼女は子ども向け教育番組「Come Outside」に出演していた人でした。その昔、私の子どもたちが再放送でよく観ていた番組です。この番組は元々は1993年から1997年に放送されたもので、リンダ・バロン扮する「Auntie Mabel」が愛犬ピピンを連れて、カラフルな水玉模様の小型飛行機に乗り込み、子どもたちが身近な世界について学べるよう案内する内容でした。スペイン産オレンジを取り上げた回が特に印象に残っています。
脚本
脚本家はロイ・クラーク(Roy Clarke)。
彼は、イギリスで最も長く続いているシットコム「Last of the summer wine」(1973〜2010年)で最もよく知られています。この作品では、ヨークシャー地方の老人たちのユーモラスな日常や友情を描いています。ノスタルジックな冒険を、登場人物中心の優しいコメディとして描きました。英国最長寿のシットコムです。また、彼は2013年から2019年の続編「Still Open All Hours」も手掛けています。
撮影地
撮影は主に実際のサウスヨークシャー州ドンカスターで行われました。並ぶテラスハウスは当時の労働者階級の街並みを思わせ、現在でもその家並みがほぼそのまま残っています。ロケに使われた建物は、現在ヘアドレッサー(理髪店または美容院)として営業しているようです。
視聴方法など
「Open All Hours」は、することができます。残念ながら日本語字幕や吹き替え版のDVDはないようです。私のDVDはイギリスのアマゾンで購入したもので、英語の字幕も収録されていません。日本で購入すると比較的価格が高いようなので、イギリスのアマゾンから直接取り寄せたほうがお得になることが多いです。日本のアマゾンアカウントではイギリスのアマゾンは利用できないため、別途イギリス用のアカウントを作成する必要があります。
作中の英語は標準よりやや速めで、イギリス特有の言い回しやスラングが頻繁に登場します。特に店主アークライトはヨークシャー訛りに加え、吃音まじりの早口で話しています。