「Mind Your Language」シリーズ1エピソード1「First Lesson」のあらすじをご紹介します。
このエピソードは1977年12月30日に放送されました(古いですね!)。
「The First Lesson」あらすじ
舞台は、多国籍の生徒たちが集まる英会話学校(ファッションも70年代です)。
クラスの初日、パキスタン人のアリ・ナディムが学校を訪れ、コートニー校長の部屋で英語を学びたいと申し込みます。アリは「失礼します」のつもりで校長に声をかけるものの「Squeeze me(私を絞って)」と言うので、コートニー校長は驚きます。
校長は「(クラスにはまだ)早いですね(early)」と返事をすると、アリは「いや、私の名前はアリ(Ali)です」と混同して答えます。そして校長が教室への道順を説明するも、アリが理解していないので、校長はまた説明します。
アリが道順を復唱できたので、校長が「そうです(Right)」と返事をすると、アリは「右(right)なんですか?左(left)なんですか?」と混乱してしまいます。
英語の言い間違いや聞き間違いが、エピソードの冒頭から繰り広げられます。
新任講師のジェレミー・ブラウン
新任の英語講師のブラウンがコートニー校長の部屋に挨拶しに行きます。
しかし、コートニー校長は男性ではなく女性の講師を希望していたため不満を漏らします。前任の男性教師にはストレスで窓から飛び出し裸で歌い出すという衝撃的な過去がありました。そのため、校長は男性教師の能力に不安を抱いています。そもそも彼女にはフェミニストな部分もあるようです。
そしてブラウン講師も同じ運命をたどるのではないかと懸念しましたが、仮採用ということでブラウン講師をクラスに送り出しました。
教室に入るブラウン講師。生徒の何人かは既に教室に来ていました。「こんばんは」と生徒たちに声をかけますが誰も見向きもしません。そこでブラウン講師は机の上のベルを鳴らします。
一斉に注目する生徒たちにブラウン講師が「皆さんにお会いできて嬉しいです。私はブラウン(Brown)です」というと、アリが「いいえ、あなたは間違っています」と返事をします。
(ここでシットコム特有の笑い声が起こります。イギリス人なら分かるユーモア)
「あなたはブラウンじゃありませんよ。私たちがブラウンです」とアリは彼と一緒にいたジャミラの両方を指し「あなたはホワイトです」と指摘します。
(パキスタン人であるアリとジャミラと、ブラウン氏の肌の色の違いについて言及しています)
生徒の自己紹介
ブラウン講師は、生徒それぞれの名前、国籍、職業を記録していきます。
ギリシャ人のマックスは、職業を聞かれると「私は羊と一緒に歩いています」と答えます。ブラウン講師が「あなたは羊飼いですか?」と聞き返すと、マックスは船の様子をジェスチャーで説明します。
彼が言いたかったのは「I work with ships.(船関係の仕事)」であり、答えたのは「I walk with sheeps」でした。(ただし「sheep」は単数形も複数形も「sheep」)
ドイツ人のアナは「アナ・シュミッツです。ドイツ人。au pair(住み込みの子守)です」というべきことを簡潔に答えます。ブラウン講師が「いつもながらのドイツの効率性ですね」と褒めると、アナは「ドイツ人はいつでも効率的です」と返答します。
すると、後ろの日本人男性が手を挙げて立ち上がります。日本人のタローは「日本人はもっと効率的です」と主張し、アナが「ドイツが一番よ」と軽く言い合いになります。
イタリア人のジョヴァンニは「Restaurante(リストランテ、イタリア語でレストラン)」でシェフをしていると自己紹介します。
いつも編み物をしているジャミラは全く英語を話しません。やっと名前を聞かれていることを理解して、前に出て黒板に右から左へと名前を書きました。そして、持っていた書類からインド人の主婦であることが判明します。
パキスタン人のアリは「Yes」と言いたいところを、「Yes, please」と答えることが多く、とても丁寧ですが、これは「はい、お願いします」という意味になってしまいます。
彼は「失業中ですが、週に1日だけ働いています」と話します。週一で何をしているのかとブラウン講師が尋ねると、アリは「週一で「the unemployment exchange(職安のようなところ)」に行ってます。驚くべきことに、働かない方がお金が多くもらえるんです」と答えます。
そこに遅れて入って来たインド人生徒のランジート。彼は「Thousand apologies(千の謝罪)」を「すみません」の代わりに頻繁に口にします。彼のバスが逆方向に(going backwards)行ってしまったと釈明します。(正しくは「My bus went the wrong way」)
ブラウン講師は彼をアリの隣に座るよう勧めますが、ランジートは「病気だから(I am sick)」と言って拒否します。「病気なら出直してきた方がいいのではないか」というブラウン講師に、ランジートは「そうじゃなくて、肉体的な状態のことではなく、私の宗教が『シーク教(Sikh)』だと言ったのです。そして彼(アリ)はイスラム教徒です」と答えます。
それを聞いたアリは「イスラム教こそ唯一の真の信仰だ!」と言い放ちます。
この一言で二人の言い争いが始まります。ランジートはシーク教の男性と女性が持つ「キルパン(kirpan)」という短剣を取り出し、戦う姿勢をとります。
もちろんそんなことは教室内で許容されるわけもなく、ブラウン講師に制止されます。
ランジートは誇りをもって「私はプンジャブの五つの川に誓って、お前の喉をここからここまで(there to there)切り裂く!」と真剣です。
(正しくは「I will slice your throat from ear to ear!」で、映画や小説などで使われる「喉を大きく切り裂く」という表現)
するとブラウン講師は彼の英語を冷静に正します。「ああ、耳から耳まで(ear to ear)ですね」
しかし、ランジートは勘違いしたままひるまずに言い直します。「ここからそこまでだ!(Here to there!)」まだ間違っています笑。
彼の席は「ローマカトリック教徒の隣なら座れる」という理由で、ジョヴァンニの隣です。
ランジートはインドのプンジャブ地方の出身で、職業を尋ねられると「地下(underground)のとても重要なメンバーです」と答えます。ブラウン講師は驚いて「何の地下組織?」と尋ねます。
「地下鉄です。ドアにご注意ください~(Mind the door!)!」と答えます。彼はロンドン地下鉄の職員でした。(ロンドンの地下鉄は「underground」や「tube」と呼ばれます)
日本人のタローは律儀に立ち上がりお辞儀をします。それにつられてお辞儀をするブラウン講師に、丁寧に名刺を差し出し「武士道エレクトロニクスの代表である」と述べます。
タローは返事をするとき「ああ、そう」とよく言いますが、これは「Asshole」というスラングに聞こえるので、ブラウン講師がしばしば驚きます。(「Asshole」は「お尻の穴」とか「アホ」のような意味で使われる)
スペイン人のフアンは、ブラウン講師が何を尋ねても「Por favor?(お願いします?)」としか答えません。イタリア語とスペイン語が似ていることから、ジョヴァンニが通訳に入り、ようやくフアンがバーテンダーであることが分かりました。
彼は、教室に入って来たときには「Por favor, Señor」とスペイン語でブラウン講師に声をかけ、ブラウン講師に「座ってください」と言われたときには、意味が分からずブラウン講師の席に座ってしまいました。相手にお構いないしにスペイン語で話し続けることもしばしばあり、それで一人で大爆笑することもあります笑。
つぎに遅れてやってきたのがフランス人のダニエル。彼女のフランス訛りの英語はとてもチャーミングです。ジョヴァンニとマックスは、どちらがダニエルの隣に座るかを巡って言い争い、ついには外に出て決着をつけようとします。
そこで教室に入って来たブラウン講師が「いったい何があったの?」と聞くと、ジョヴァンニは「聞いてください、ホワイト先生(Mr. White)!」と訴えます。
ブラウン講師は「私はブラウンです」と訂正します。
ジョヴァンニは「僕たちがどこに座るかについてもめているんです、先生。僕の目が悪いんです。もっと前に座らないといけません!ここの席にです!」とダニエルの横の席を指します。
(ジョヴァンニはブラウン講師のことをよく「professori」と呼びます。イタリア語で「先生」とか「教授」など)
何かを察したブラウン講師は「なるほどー、ここにダニエルが座っていることは関係ないですよね?」と質問します。核心を突かれたジョヴァンニは、
「ここにダニエルが座っていたんですか?全くもって知りませんでした!」
と言わんばかりのわざとらしい演技をします。そしてジョヴァンニが続けます。
「全然気が付きませんでした!私は少し近視なんですよ、グリーン先生(Mr. Green)!」
ブラウン講師繰り返し訂正します「私の名前はブラウンだ」
するとジョヴァンニ「だからね、僕は色覚異常なんです!」
呆れたブラウン講師は二人を元の席に戻しました。
最後に教室にやってきたのは、中国人のスーリーです。彼女は外交官の秘書をしています。彼女は「L」と「R」の発音が逆になる傾向にあります(日本人もこの区別を難しく感じる傾向にある)。ブラウン講師はスーリーの席を決めるため、タローに日本と中国の関係について尋ねてみます。
タローはきちんと立ち上がり一礼して「政治的な観点によります。日本は右翼、中国は左翼です」と答えます。ブラウン講師は、タローの発音に思わずつられながらも「あなたはどちらなの?」とスーリーに尋ねます。
スーリーは「毛主席語録」を片手に「私は毛沢東主席の教えに従います」と返答。彼女の席はジャミラの隣に決まりました。(スーリーとタローは、エピソードが進むにつれてよい友人になります)
授業の登録料
ブラウン講師はコートニー校長に、生徒から授業の登録料5ポンドを集めてくるよう頼まれていたので、集めた登録料をコートニー校長の部屋に持って行きます。
「生徒が9人なので、合計は45ポンドだ」という校長ですが、ブラウン講師は45ポンドを集めることができませんでした。
なぜなら、生徒全員は支払ったものの、全員がポンドを持っていたわけではなく自国の通貨で支払った生徒もいたからです。
ブラウン講師は「スターリング(sterling、イギリスポンドのこと)で29.5ポンド」と言っていましたが、それだと計算が合わないような笑。しかし、その日のレートでは利益が出ていたそうです笑。
70年代当時、5ポンドは2,000円ぐらいだったのですね・・・。それにしても、リラ、ペセタ、ドラクマ、フラン、ドイツマルク・・・懐かしいですね。
最初の授業
そして、初めての授業が始まります。
この日のテーマは動詞「to be」(つまりbe動詞)の練習。ブラウン講師は「I am …」「You are …」などと、be動詞を使った例を挙げていきます。
順番に生徒に質問していたブラウン講師は、フアンにも「It is…」を使って文章を作るよう指示しますが、「Por favor?」と質問し返すだけなので会話が成り立ちません。そこで、ブラウン講師は「It is raining.(雨が降っています)」と例文を示しますが、フアンはまた「Por favor?」といいます。
見かねたジョヴァンニが通訳し「It is raining」とフアンに伝えると、フアンは笑いながら「いいや、降ってないよ」と窓の外を指します。ジョヴァンニが「そういうことじゃないよ、It is raining!」と説明しているのに、フアンは「だから降ってないでしょう?お前はどこを見ているんだ?」と大げさな仕草で反論します。
ジョヴァンニは「なんてこった!(Santa Maria!)」と呆れて叫びます。
(「Santa Maria」は「OMG(Oh my god)」的にジョヴァンニが感嘆符としてよく使います)
スーリーに「It is …」で課題を出すと、彼女は「毛主席語録」を片手に堂々と「すべての市民の義務は、帝国主義の戦争挑発者を打倒することです!」といいます。
ダニエルに「We are …」で指示すると、彼女はブラウン講師に顔を近づけて微笑みながら「こんなにハンサムな先生がいて私たちは幸運です」といいます。それにつられてブラウン講師も「まったくその通りです」と返してしまいます。
アリへのお題は「You are …」でした。しかし、その「You are」がブラウン講師からアリに向けられた「You are」だと勘違いし、アリもブラウン講師もドツボにはまります。アリは「先生は私が答えるのを待っていますか?」とブラウン講師に尋ねますが、偶然にもそれが「You are」を正しく使った文になっていました。でも、アリが質問をよく理解していなかったので、再度やりなおすと「I am」と「You are」が混乱してしまいます。
そのやり取りを見ていたランジートがアリをからかいます。これに怒ったアリとランジートの間で言い争いが始まり、他の生徒たちは立ち上がり二人を止めに入ります。その混乱に乗じてマックスはアリを後ろの席に追いやりダニエルの隣にちゃっかり座ったりしています。
ブラウン講師が鐘を鳴らしてこの日の授業は終了します。
廊下でコートニー校長に出くわし「前任の講師が飛び出したあの窓には、念のため追加で釘を打っておいた方がいいかもしれません」といってブラウン講師は急いで学校をあとにします。
(「また誰かが窓から飛び出すかもしれません」ということですね、ブラウン講師が笑)
コートニー校長はこのクラスを問題児が多いと見なすこともあるようですが、実際にはどの生徒も魅力的で愛らしく、こんなクラスで英語を学べたらきっと楽しいだろうなと思います。