「The Norman Conquests」は、アラン・エイクボーンが1973年に執筆した三部作の舞台劇です。スカボローで初演された後、1974年にロンドン、1975年にブロードウェイで上演されました。演劇として成功を収めたのち、Thames Televisionがこの三部作を映像化し、1977年10月5日・12日・19日の3週にわたってイギリスITVで放送されました。
この作品は、コメディドラマ(ミニシリーズ)であり、舞台劇「Table Manners」「Living Together」「Round and Round the Garden」の三部作で構成されています。
「三部作」と聞くと、よくあるちょっとした壮大な映画のように、
- 前編
- 中編
- 後編(完結編!)
のような、一連の流れのストーリーを思い浮かべるかもしれませんが、この三部作は少し異なります。
「The Norman Conquests」の魅力
「The Norman Conquests」は、3つのエピソードに分かれており、ある週末に起こった混乱をそれぞれ異なる部屋・異なる視点から描いているのです。
- 「Table Manners」
- 「Living Together」
- 「Round and Round the Garden」
登場人物は以下の6人のみです。
ノーマン(作品タイトルを意識するなら「ノルマン」かも)
アニー
レジ(アニーの兄)
サラ(レジの妻)
トム(近所の獣医)
ルース(ノーマンの妻、レジの妹、アニーの姉)
驚いた構成の巧妙さ
私はコメディのジャンルからこのDVDを入手し、話の筋をきちんと追えるようにDVDジャケットに記載されている順に観ていきました。
まず「Table Manners」では、舞台はダイニングルームのみです。土曜日の夕方から月曜日の朝の間にダイニングルームでの出来事が描かれています。
しかし、視聴しながら思いました。
「あれ?これはコメディだったはずだけど・・・?!」
「むしろシリアスなドラマなのでは・・・?」
不安になり、思わずDVDパッケージを確認してしまったほどです。タイトルの「ノルマン・コンクエスト」の「ノーマン」はしばらく登場しません。彼が「厄介な人物」という印象はつかめたのですが、日付や時間が変わるごとに人々の様子が少しずつ変化するので違和感を覚えました。
そして、途中で誰かが部屋に入ってきて意味不明な行動をしたり、隣のリビングルームから大きな音が聞こえたり、庭で何かが起こっていたりと、謎が多い展開が続きます。
「あれは一体どういう意味だったのか?」
と消化不良気味な気持ちを抱えたまま「Table Manners」は終わりました。
「この後に何かが起こる?」と思いながら、「Living Together」と「Round and Round the Garden」を観ていくうちに、徐々にその疑問が解けていきます。他のエピソードはその後の描写ではなく、シリアスなドラマなどもありませんでした。
「Living Together」は、リビングルームだけが舞台であり、「Round and Round the Garden」は裏庭だけが舞台になります。全てのエピソードを観ることで、すべてが「同じ週末」に同時進行で起きていたことに気づきます。
つまり、それぞれのエピソードが別の角度から描かれており、キャラクターたちの行動や背景が次第に明らかになっていくのです。
観るごとに印象が変わるキャラクターたち
ダイニングルームでの登場人物たちの印象が、リビングルームでのエピソードで次第に変わっていくのがこの作品の面白い点です。2話目、3話目でその印象が裏切られていく感覚です。最終的には一つの大きなストーリーだったというわけなのです。
たとえば、ダイニングルームでは意味不明だった誰かの行動が、次のエピソードで分かったりします。
「この人がこんなことを?!」
「あの音はそういうことだったのか」
「実はそんな背景があったのか!」
「Table Manners」では、ノーマンの浮気性っぽいところが見られ、「Round and Round the Garden」では、ノーマンの無計画な策略が露呈しカオス的な感じに・・・。
コメディなので面白い要素や台詞もたくさん含まれていますが、個人的には「発見の連続」という楽しみ方もできたので観終わったあとには感心してしまいました。3つの視点を自分なりに頭の中で整理するのも楽しいです。
「The Norman Conquests」のあらすじ
「Table Manners」ダイニングルームにて
土曜日の午後6時。次女アニー(ペネロペ・ウィルトン)は、母親の介護を兄のレジ(リチャード・ブライアーズ)とその妻サラ(ペネロペ・キース)に任せて週末旅行を計画しており、彼らが到着するのを待っています。
サラは、てっきり近所の獣医トムが旅行の同伴者だと思っていたものの、実際は姉ルースの夫ノーマンであることを知って驚きます。アニーによれば、昨年のクリスマスに家族が集まった際、ノーマンと二人きりになったときに思わぬ関係になってしまったとのこと。良妻賢母のお手本でお節介焼き、正義感が強いサラは、これに強く反対し、アニーを説得して思いとどまらせます。
夕食ではレジ、サラ、アニー、トム(デヴィッド・トラウトン)が食卓を囲みますが、ノーマンは隣室で大音量の音楽を流し歌声が聞こえるだけで姿を見せません。ノーマンがアニーの旅行相手だったことを聞いても、無邪気なレジは驚きつつもそれほど気に留める様子もなく、アニーと昔話で盛り上がり楽しく過ごします。意見の合わないサラは苛立ちます。
日曜日の朝9時。ようやくノーマン(トム・コンティ)が姿を見せますが、レジ、サラ、アニーは彼を無視して朝食を取り始めます。彼の分の朝食も用意されていません。イギリスではガウン姿で朝食をとることが多く、この場面でも全員がその姿でテーブルについています。紅茶やトースト、コーンフレークといった典型的な朝食が並び、サラの手慣れた所作が光ります。
ノーマンは話しかけ続けますが誰も返事をしません。ただ、それぞれ無関心を装いながも、ちょっとした反応やいら立ちが見られます。ノーマンに感情をかき乱されたアニーはついにダイニングを飛び出し、サラが後を追います。そこへお約束のように現れるのが、ノーマンの妻・ルース(フィオナ・ウォーカー)です。キャリア志向で言葉が強くまくし立てるように話し立てる彼女は、朝一でやってきました。
ノーマンはルースが自分を愛していないと訴えますが、ルースは「不幸せに感じるなら結婚を続けなくてもいい」と冷静に返します。ノーマンは愛を語り続け、ルースは「家計を支えるための仕事なのだから、邪魔をするな」と現実的なスタンスです。ノーマンの旅行相手がアニーだったことを知ると驚きますが、行き先が「イースト・グリンステッド(East Grinstead)」だと聞いて大笑いします。
夕方、サラは「今夜こそは文明的な夕食にしましょう」とレジとノーマンに声をかけ、張り切ってテーブルを準備します。本格的なテーブルセッティングにアニーやルースは戸惑うものの、ノーマンは楽しそうに協力します。全員が集まり、サラが伝統的な座席配置を提案するも他の面々は落ち着かず、それぞれ好きな位置に座ります。ノーマンはなぜかレジ達の亡父のスーツで現れます。
質素な即席料理の夕食がスタートするも雰囲気はすぐに崩れ、サラとルースが衝突。ルースが誤ってレジの服にシチューをこぼし、それがレジとサラの口論の引き金となります。さらにノーマンがルースに苦言を呈したところ、それをアニーへの批判と誤解したトムがノーマンを殴ります。レジは着替えるために怒って退室し、ルース、アニー、トムもバタバタとそれに続きます。そこに残されたのはノーマンとサラ。サラは感情を抑えきれず泣きながらノーマンにすがりつきます。
月曜日の朝8時。皆が帰宅の準備をする中、サラとノーマンが静かに朝食を共にします。前日とは異なり、ノーマンが無視される雰囲気はありません。昨晩、ルースが専業主婦のサラに厳しい言葉を投げかけたことが影響しているのか、ノーマンはサラの家事や育児への献身を称賛し「休暇を取って旅行に出たらどうか」と提案します。
サラは「子供がいるから休めるわけはないし、そもそも一人で行きたくない」と即座に否定します。すると、ノーマンは「なら僕が連れて行くよ。ボーンマス(Bournemouth)はいい場所だし、部屋も別だから」と続けます。唐突な誘いにサラは驚き呆れますが、ノーマンの「ただサラに幸せになってほしいだけ」という真剣な言葉に心が揺れ「昼間なら電話で話せる」と打ち明けてしまいます。
トムが現れ、前日にノーマンを殴ったことを謝ります。ノーマンはまったく気にしておらずトムを安心させます。サラとノーマンが部屋を出ていくと、トムは気分が晴れた様子で自分の紅茶の準備をします(小さな紅茶のカップにスプーン4杯の砂糖を入れてます笑)。
アニーがやってきて週末の騒動をトムに謝ります。トムは気にしておらず、アニーへの気持ちも変わらないと伝えます。アニーは「旅行を計画したのは寂しかったから」「家を売って引っ越すかもしれない」とほのめかしてトムに何らかのアクションを起こしてほしい様子。しかし、悲しいことに超鈍感なトムはその意図をくみ取れません。アニーは苛立ち、テーブルの上の皿を割り、ただただ驚くだけのトム・・・。私でもイラっとします笑。
トムと入れ替わりで部屋に入ってきたノーマンは、割れた皿を見て驚きアニーを心配します。その優しさにアニーは泣き出し、ノーマンに抱きつきながら「イースト・グリンステッドに連れていって」と懇願します。
「Living together」リビングルームにて
土曜日の午後6時半。ノーマンはリビングで落胆した様子で座っており、レジとサラは、2階で寝たきりの母のためにサラが編んだベッドガウンやレジの自作ボードゲームをスーツケースから取り出していました。サラは週末旅行の件についての不快感をノーマンにぶつけますが、ノーマンはアニーにも自分にも休暇が必要であり計画が中止になったことを残念に思っていると伝えます。
サラが部屋を出るとアニーが現れ「この計画は最初からうまくいくはずがなかったし、周囲の人は巻き込めない」と話しますが、ノーマンは依然として残念がります。少々の罪悪感を感じたアニーがノーマンの頬にキスした瞬間、レジが部屋に入ってきます。これは、ダイニングルームのエピソードでサラがレジをリビングルームに差し向けていたことの答え合わせになります。様子を見に行ったレジがなぜかゴミ箱を持ってダイニングに戻ってきました。
トムもさらに促されてリビングにやってきます。ノーマン、アニー、トムの3人はアニーの母が寝たきりになる前に作った3種の自家製ワインを試飲します。ノーマンがアニーの気持ちに寄り添えるのに対し、トムは正直で善良ではあるものの、超がつくほど鈍感で天然なため、それがアニーを苛立たせます。アニーが出て行った後、トムはノーマンにアニーについての助言を求めると、ノーマンはわざと的外れなアドバイスを与えます。悪い奴だな笑。
隣のダイニングでは夕食が始まっているのに、酔いが回ったノーマンは一人、古い蓄音機を持ち出してレコードをかけて大きな声で歌い始めます。
夕食を終えたレジとトムがリビングに戻ると、ノーマンはラグの上で酔いつぶれていました。アニーとサラも加わりレジの自作ボードゲームで遊ぶことにします。トムは獣医としては優秀でも、ゲームに関しては覚えが遅いようで、またアニーを苛立たせます。サラは最初からレジのボードゲームには乗り気でなく、終始文句を言い続け、それがレジを苛立たせます。
そんな中、ノーマンが目を覚まし、部屋の電話を使って妻のルースに電話をかけ始めます。酔っているせいもあり口論に発展し、電話機をいじっているうちに誤って2階の母の部屋につながってしまいます。電話を邪魔されたと思ったノーマンは母の部屋に突撃し、アニーとサラがその後を追います。
2階から降りてきたアニーは「トムは何もしてくれない」と不満を口にします。不幸にも、数時間前にノーマンから伝授された役に立たないアドバイスに従って反論したトムでしたが、アニーに憤慨され、そのまま帰ることに。すると、サラが泣きながら母のために編んだベッドガウンを持って降りてきます。ガウンはノーマンのせいでボロボロになっていました。
日曜日の夜9時。夕食の騒動の後、レジ、ルース、アニーの三人がソファに座りながらそれぞれの結婚生活における考え方の違いや母親に対する思いについて語り合います。そこに加わったサラが「ノーマンが皿洗いをしている」と伝えると、ルースは驚きます。サラは「ノーマンを誤解しちゃいけないわ。彼は優しく頼めば手伝ってくれる」と説明しますが、ルースは何か裏があるのではと疑う素振りを見せます。
その後、ルースとレジは早めの就寝のために退室し、サラはアニーにも「もう寝たらどうか」と何度も勧めた上でその場を離れます。しかもアニーがまだいるのに部屋の電気を消してしまう笑。
ほどなくして、エプロンをつけたノーマンがフライパンを片手に「どこにしまったらいいのか」と聞きに来たものの、ほぼ全員がいなくなっていることに驚きます。でも、そのおかげでアニーと二人きりになり、静かに会話を交わす時間が生まれます。「もう最後だから」とサヨナラのキスを交わしていると、そこにサラが戻ってきてしまいます。サラは取り乱しアニーに向かってわめき立てます。ちょうどの瞬間にいつも誰かが入ってくるんですね・・・笑。
そこへルースが現れてサラを部屋から追い出します。続けてアニーにも部屋を出るように言い、ルースとノーマンの間で口論が始まります。ルースはアニーのことを知らされただけでなく、何となくサラとも何かあったのでは気づいている様子。
ノーマンは「本当に申し訳なかった」と悲しそうな顔で謝罪し「愛しているのはルースだけだ」と訴えます。ルースは半ば呆れて諦めてノーマンを許します。そして二人は寝室に向かわず、リビングルームのラグの上で一晩を共に過ごすことに。このラグは、去年のクリスマスにノーマンとアニーが思わぬ関係になった思い出のラグでもあったのです・・・。
月曜日の朝8時。帰り支度をしていたレジがリビングルームに入ると、ノーマンとルースがラグの上で眠っているのを見て驚きます。ルースは大慌てて部屋を出て行きます。
トムが前の晩にノーマンを殴ってしまったことを謝りに来ますが、周囲はあまり気にしていない様子。彼は診療へ向かう途中でしたが、アニーに朝の紅茶を勧められしばらく立ち寄ることにします。
ノーマンとルースも帰り支度を進めており、ルースは出勤するつもりでいましたがノーマンに説得されて休むことに決めます。ノーマンはアニー、レジ、サラに別れの挨拶をします。去り際にはサラの手に触れながら家から出ていきます。
サラとレジもリビングルームのドアから出ようというときに、サラがふと「ボーンマスの天気はどうかしら」とつぶやきます。それを聞いたレジは「行きたいなら連れて行くよ」と申し出るものの、サラは「一人で行けると思うわ、週末に」と出ていきます。レジは「ボーンマスでなくても、他にもいいビーチリゾートはあるけどね」と考えを巡らていると、ふと何かに気がついて慌ててサラを追いかけます。
「Round and round the garden」裏庭にて
ダイニングルームとリビングルームのやりとりだけでも週末の出来事は十分に伝わってきますが、裏庭のカオスな雰囲気が加わることで、登場人物たちの個性や関係性がより深く浮き彫りになります。
土曜日の午後5時半、アニーはレジとサラの到着を待ちながら、部屋に飾るために裏庭で美しいバラを数本切っていました。当初の予定ではノーマンとは午後7時に郵便局の裏で落ち合うはずだったのに、ノーマンは突然「会いたくなったから」と家に来てしまいました。なんだか困ったやつですね笑。
その予想外の訪問に戸惑い苛立ちを感じるアニーに、ノーマンは「ヘイスティングス(Hastings)の宿が満室で予約できなかったから、代わりにイースト・グリンステッド(East Grinsted)の宿を取った」と説明します。海辺のリゾート地を期待していたアニーは、普通の街に滞在すると言われて少しがっかりした様子です。
さっさと郵便局の行ってその辺りで待っていればいいものを、ノーマンは庭でぐずぐずしてトムに見つかります。そしてレジ達が到着し、庭の方から入って来たレジにも見つかります。予期していないノーマンが庭にいたので驚くレジに「イースト・グリンステッドで出張会議があるから」と嘘をつきます(職業は図書館司書なのに)。
そこにダイニングルームでアニーと話していたサラが出てきて「アニーは行かないことにしたらしいわ」と告げます。ショックを受けるノーマン。レジが「もう行くの?それとも少し寄っていく?」と尋ねると、ノーマンは「寄っていくに決まってるよ!」と叫び、リビングルームに入っていくのです。
午後9時。7月のイギリスでは、まだ空が明るい時刻です。
レジとサラが酔いつぶれているノーマンを裏庭に運び出します。ノーマンは「誰も僕のことを愛していない!」と叫びます。酔っている人に語りかけても無駄だとは思うのですが、サラはノーマンの横に座り説教を始めます。ところが、いつの間にかノーマンは彼女と手をつなぎ、キスをしたり体に触れたりし始めるので、サラは慌ててその場を離れます。
アニーは旅行をドタキャンした罪悪感からか、まだ未練があるのか「今晩、私の部屋に来てもいいよ」とノーマンに告げます。しかし酔いつぶれていたノーマンは、レジに引きずられてリビングルームへ運ばれていきます(漫画の一コマのように引きずられます笑)。
日曜日の午前11時。トムはルースに、アニーへの愛の告白の仕方についてアドバイスを求めますが、超がつくほど鈍感なトムは、ルースが自分に好意を寄せていると勘違いしてしまいルースを呆れさせます。
一方、アニーはトムに対し週末旅行の真相を打ち明けます。トムが何かを言える前にレジとノーマンが裏庭に出てきます。そして4人でボールを使って軽く遊び始めます。しかし、レジとトムが目を離した隙に、ノーマンとアニーはじゃれ合いそのまま庭で抱き合って寝転んでしまいます。
そこへリビングルームからルースが出てきて二人の様子を見て取り乱します。振り返り、二人に気づいたトムもパニックに陥ります。先ほどのルースとの勘違いの勢いもあり、なぜかルースに「愛している」と告白し抱きついてしまいます。そうこうしているうちに、ちょうどリビングルームから出てきたサラも驚いてわめき散らします。裏庭はまさにカオス状態となるのです。
月曜日の朝。やっと帰宅して平和な日常に戻れると思いきや、ルースの車のエンジンがかからないので、ルースとサラは裏庭のガーデンチェアに座って待っています。ルースはノーマンとサラの間にも何かあったのではないかと勘繰っています。レジがやってきて、サラにヒューズ線を取りにキッチンに行かせます。その隙にレジは「サラがやけに愛想がいいがノーマンと何かあったのではないか」とルースに尋ねます。
その後、ルースの車は押しがけでエンジンをかけることになったので、レジ達の車でけん引することに。
騒がしい人々が去ったあと、トムとアニーは「大変な週末だった」と疲れた表情で語り合います。そしてトムは回りくどい言い回しでアニーとの結婚について話し始めますが、あまりにも遠回しすぎるため、アニーが「結婚のことよね?」と誘導します。結婚したいのどっちなの?って私も思ってしまいました笑。
そうすると・・・
ネタバレしない方が良いかなと思いましたので、ここまでで。
結末はご自身で確かめてください!
豪華なキャスト
キャスト陣は、イギリスではよく知られている「ベテラン中のベテラン俳優」ばかり。いずれも豊富な出演歴を持ち、長年にわたり多様なジャンルで成功を収めています。特にペネロピ・キースは、この作品への出演によってBAFTAを受賞しています。
トム・コンティ (Tom Conti)
映画と舞台の両方で国際的に成功を収め、アカデミー賞にもノミネートされた実力派俳優です。
「Merry Christmas, Mr. Lawrence(戦場のメリークリスマス、1983)」「The Dark Knight Rises(ダークナイト ライジング、2012)」「Oppenheimer(オッペンハイマー、2023)」「Shirley Valentine(シャーリー・バレンタイン、1989)」「Paddington 2(パディントン2、2017)」などの映画に加え、数多くの舞台作品にも出演しています。
また、アメリカのシットコム「フレンズ(Friends)」にも出演しています。
ロスがイギリス人の彼女エミリーとロンドンで結婚式を挙げるエピソードでは、ロスはエミリーの両親と対面します。その際に登場する、風変わりなお父さん役を演じているのがトム・コンティです。
継母役のジェニファー・サウンダーズ(Jennifer Saunders)はすぐに気がついたのですが、父役が誰だろうとクレジットを確認したところ「あのノーマン」だったことがわかり、感動しました。
ペネロピ・キース (Penelope Keith)
コメディの第一人者として、数多くの主演作で人気を集め、BAFTAを受賞した実績を持つ女優です。個人的に大ファンです。
代表的な出演作には、「The Good Life(1975–1978)」、「To the Manor Born(1979–1981、2007)」、「Executive Stress(1986–1988)」、「No Job for a Lady(1990–1992)」、「Margery & Gladys(2003)」などがあります。
リチャード・ブライアーズ (Richard Briers)
イギリスの名優として、コメディと古典劇の両方で活躍し、長年にわたり多くの視聴者に愛されました。
代表的な出演作には、「The Good Life(1975–1978)」、「Ever Decreasing Circles(1984–1989)」、「Monarch of the Glen(2000–2005)」、「Much Ado About Nothing(から騒ぎ、1993)」、「Hamlet(ハムレット、1996)」、「As You Like It(お気に召すまま、2006)」、「Peter’s Friends(1992)」、「Mary Shelley’s Frankenstein(1994)」、「In the Bleak Midwinter(1995)」などがあります。
ペネロピ・ウィルトン (Penelope Wilton)
現代英国ドラマの重鎮として、コメディからシリアスな役まで幅広く演じ分ける女優です。
代表的な出演作には、「Downton Abbey(ダウントン・アビー、2010–2015、2019)」、「Shaun of the Dead(ショーン・オブ・ザ・デッド、2004)」、「The Best Exotic Marigold Hotel(マリーゴールド・ホテルで会いましょう、2012)」、「The BFG(BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント、2016)」、「Pride & Prejudice(プライドと偏見、2005)」、「Calendar Girls(カレンダー・ガールズ、2003)」、「The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society(ガーンジー島の読書会の秘密、2018)」、「Doctor Who(ドクター・フー、2005–2008)」などがあります。
デヴィッド・トラウトン (David Troughton)
英国のテレビドラマで長年にわたり活躍し、特にSFや現代劇で知られている俳優です。
代表的な出演作には、「Doctor Who(ドクター・フー、2008)」、「A Very Peculiar Practice(1986–1988)」、「Sharpe(1993)」、「Fingersmith(2005)」、「Grantchester(2014–2016)」などがあります。
フィオナ・ウォーカー (Fiona Walker)
歴史ドラマやミステリーで名脇役として活躍し、安定した存在感を示した女優です。
代表的な出演作には、「I, Claudius(アイ・クラウディウス 〜ローマ帝国の栄光と崩壊〜、1976)」、「Death of an Expert Witness(1983)」、「All Creatures Great and Small(1978)」、「Pope John Paul II(1984)」、「Bleak House(荒涼館、1985)」、「The Woman in Black(1989)」などがあります。
何度も上演された舞台
「The Norman Conquests」はイギリス国内の舞台で何度も上演されています。一度に3部を同時に上演するというユニークな試みも行われたようです。
1974年のグローブシアター公演では、ノーマン役にトム・コートネイ(Tom Courtenay)、サラ役にペネロピ・キース、アニー役にフェリシティ・ケンドール(Felicity Kendal)、トム役にマイケル・ガンボン(Michael Gambon)、ルース役にブリジット・ターナー、レジ役にマーク・キングストンという豪華なキャストが揃っていました。
フェリシティ・ケンドールは、リチャード・ブライアーズと夫婦役で「The Good Life」や「Rosemary & Thyme(ローズマリー&タイム)」に出演しています。マイケル・ガンボンは「ハリー・ポッター」の「Albus Dumbledore(アルバス・ダンブルドア)」役でよく知られており、また、「クランフォード」、「コックと泥棒、その妻と愛人(1989)」など多数に出演しています。1970年代のトム・コートネイが素敵なのでぜひ観てみたかったものです。
視聴方法など
「The Norman Conquests」のDVDは、日本やイギリスのアマゾンで購入することができます。残念ながら日本語字幕や吹き替え版のDVDはないようです。私が持っているDVDはイギリスのアマゾンで購入したもので、英語の字幕も収録されていません。
日本で購入すると、価格が比較的高く、いまだにVHSが検索結果に出たりします(古い笑)。イギリスのアマゾンから直接取り寄せたほうがお得になることが多いです。なお、日本のアマゾンアカウントではイギリスのアマゾンは利用できないため、別途イギリス用のアカウントを作成する必要があります。
おわりに
歴史でよく知られている「ノルマン征服(ノルマン・コンクエスト、1066年)」は、ノルマンディー公ウィリアムがイングランドを征服した出来事です。
物語の主人公・ノーマンは、情熱的で無計画な人物で、なぜか周囲の女性たちを惹きつけてしまいます。本人に特別な野心はないのでしょうけど、自分の中の「愛」に素直に従って行動すると結果的にそのようになってしまうのかと。でも「君に幸せになってほしい」と言われて「幸せになりたい」と思うのは、ごく自然な感情だと思います。一度きりの人生だし。
そのためこのタイトルは、1066年のノルマン征服を匂わせるような言葉遊びになっており、ノーマン本人の意図とは裏腹に「征服(コンクエスト)」になってしまうというユーモアが込められているのかなと思います。
あまりに好きすぎて、アラン・エイクボーンの原作も購入しました。1970年代に発行されたもので、表紙がボロボロです笑。
