シットコムってどういう意味なのでしょうか?
シットコムとは、「シチュエーション・コメディ(situation comedy)」を略した名称です。
特定の状況や設定(家庭、職場、友人グループなど)といった舞台があって、そこに繰り返し登場するキャラクターがいて(当たり前ですが・・・)、その中でキャラクターたちがユーモラスなことをしたり、ユーモラスな状況が起こったりしてエピソードが展開していきます。通常は1話20~30分程度で完結するエピソード形式で、観客や視聴者に笑いを提供することが目的です。軽快な会話やドタバタ劇、誤解や皮肉が笑いの種になることが多いです。
つまりは「コメディ」の一種です。
シットコムの特徴って?
シットコムの舞台は作品ごとにユニークです。たとえば:
- 『Friends』ならアパートやカフェ
- 『The Office』なら職場
- 『Fawlty Towers』ならホテル
- 『Vicar of Dibley』なら教会や主人公の家
- 『Porridge』なら刑務所
- 『Mind Your Language』なら英会話学校
- 『Is it Legal?』なら法律事務所・・・等々
登場するキャラクターも個性が強くて、すぐに「この人、こういうタイプだな」と分かるような特徴や癖を持っていたりします。毎回同じ顔ぶれが登場するから、だんだん愛着が湧いてくるんですよね。
ユーモアの形も多彩で、社会風刺や日常の滑稽さ、言葉遊び、時にはチャップリンのような物理的なコメディ(スラップスティック)まで、いろんな笑いが詰まっています。
シットコムの歴史を少し
「シットコム」という言葉は、もともとアメリカで誕生したそうです。その形態は1930〜40年代にアメリカやイギリスでラジオ番組として始まり、1950年代にはテレビへと移行したとされています。
ただ、イギリスにはシェークスピアの時代よりもずっと以前からコメディを楽しむ文化が存在していましたし、チャップリンのような存在も時代を超えて人気を博しました。こうした背景を考えると、コメディがラジオからテレビへと時代に合わせて形を変えていったのは、ごく自然な流れだったといえるでしょう。
イギリスでテレビのシットコムが本格的に人気を集め始めたのは1950年代頃からです。もともとはラジオ放送用に考案された形式でしたが、現在ではほとんどがテレビで放映されています。
一般的によく見られるパターンとしては、「30分のエピソードが6話で1シリーズ」という構成が挙げられます。これは、放送時間が頻繁に変わるイギリスのテレビ事情に柔軟に対応するための工夫だったようです。
イギリスには放送チャンネルも豊富にあり、BBC(BBC1、BBC2、BBC3、BBC4)、ITV、Channel 4など、さまざまな局が存在します。それぞれに個性があり、大衆向けの笑いを届けるチャンネルもあれば、熱心なファン向け、若者向け、あるいは知的なテーマを好む層に向けたものなど、特色がはっきりと分かれています。
また、時代によってシットコムのテーマも変化しています。1950〜70年代には、社会批判や差別といった重いテーマを扱ったユーモアも受け入れられていました。現代の視点から見ると少し驚くような内容もありますが、それも当時の社会の空気を反映しているのだと思います。
シットコムのあの「笑い声」の秘密
シットコムを見ていると、よく聞こえてくるあの「笑い声」。
ちょっと大げさに感じることもありますよね。でも、この笑い声があることで、私たちもつられて笑いやすくなる効果があるそうです。
初期のイギリスシットコム(1950~60年代)は、スタジオに観客を招いて「ライブ観客方式」で収録するのが主流でした。観客の自然な笑い声が番組に臨場感を与え、雰囲気を盛り上げてくれたのです。
初期のシットコムは、生のスタジオ観客の前で録音されていましたが、すべてが常に順調に進んだわけではありませんでした。
たとえば、あるシーンではアンティークのライターでタバコに火をつける場面があったのですが、そのライターがうまく機能せず、10回以上も撮り直しをする羽目になりました。そして、ようやく16回目に火が点いたときには、観客が思わず拍手喝采してしまい、その反応が録音に入ってしまったため(笑うシーンではなかったため)、再度やり直しになってしまうという、厄介な出来事もあったそうです。
ところが1970年代になると、技術の進歩やアメリカの影響で、事前に撮影した映像に「缶詰の笑い声」(canned laughter)や「ラフトラック」(laugh track)を追加するスタイルが広まりました。たとえば、『Fawlty Towers』(1975-1979)はライブ観客の前で収録されつつも、編集の自由度を高めるために笑い声が調整されることもありました。『The Good Life』では、観客の笑い声と録音済みの笑い声を組み合わせたハイブリッド型が用いられたそうです。
1980~90年代にはさらに多様化が進みます。『Only Fools and Horses』はライブ観客方式を続けていましたが、『Blackadder』や『The Young Ones』では、制作側がコントロールしやすい環境を好み、笑い声の追加や調整が一般的になりました。
そして2000年代以降、UK版『The Office』や『Peep Show』のように、笑い声を一切使わないスタイルが人気に。「どこで笑うかは自分で決めて」という自然な笑いを重視するトレンドもでてきました。
『Friends』の笑い声やあの声も印象的
たとえば『Friends』では、笑い声だけでなく、拍手や驚きの声、がっかりした声まで入っていて、こちらの感情をさらに盛り上げてくれます。
例えば、レイチェルとロスが言い争いをして、別れたと思ったロスが別の女性と一晩共にしてしまったとき。レイチェルがロスに
「私と彼女とどっちが良かった?」
と、問い詰めたとき、ロスは、
「君と彼女は違うから」
と答えます。このとき、
「Oh~(それを言っちゃうかー)」という声が背景から聞こえてきます。または、
ロスとレイチェルがロスとよりを戻した瞬間には、
「Oh~(よかったわね(ため息のような感じ)」
が含まれたりします。
これらの声は絶妙なタイミングで入るので、自分の感情との相乗効果でさらに笑ったり感動したりしてしまいますが、2000年以降のシットコムには「笑うところは自分で決めろ」のような傾向の作品もあります。どちらが良いかは視聴者それぞれの好みでしょうね。
おわりに
日本でも「シットコム」とは呼ばなくても、コメディ番組はたくさんありますよね。エキストラのおばちゃんたちが大笑いしているような作品はまさにそれです。日本でも笑い声は効果的に利用されていたということですね。