ミスタービーン(Mr. Bean)青い車・タルタルステーキ・彼女・オープニング

ミスタービーンのレビュー記事

「ミスタービーン」は、世界的に有名なイギリスのシットコムです。コメディの中でも特に「ビジュアル・コメディ」や「スラップスティック・コメディ」と呼ばれるジャンルに分類されることもあると思います。

テレビ版の「Mr. Bean(1990~1995年)」はオリジナルの14話があり、映画版やアニメ版もありますが、私が個人的に好きなのはテレビ版(オリジナル)です。90年代の少し古ぼけた雰囲気のある映像も味わいがあります。この頃のミスタービーンには彼女がいて、一緒に映画を観に行ったり、クリスマスには料理を作ったり、プレゼント交換をしたりする様子が描かれています。

また、愛車のミニクーパーを巧みに運転する一方で、青い三輪車に出くわすといたずらを仕掛けたりします。子どもや体の不自由な人に対しても容赦ない態度を取ることがあったり、機械や車を操作するような賢い部分があったり、風変わりで奇妙な部分が合ったり、狡猾な部分もあったりします。

目次

オリジナルエピソードから

オリジナルエピソードの中で印象深かったものについてふれてみます。

青い(水色)の車(三輪車)

ミスタービーンは青い(水色の)三輪車を見かけると、なぜか敵意をむき出しにします。横入りをしたり、後ろからあおったり、駐車場に停まっている青い車にわざと追突して場外に押し出すな、なかなかひどいことをやらかします。この三輪車は「リライアント・リーガル」で、かつてリライアント・モーターズによって製造されたもの。現在ではこのような三輪車が走っているのは珍しくなりましたが、まれに見かけることもあります。

なぜミスタービーンが青い三輪車に敵対心を抱いていたのかについては公には説明されていないようです。単に彼の「理不尽な行動」を際立たせるための演出なのかもしれません。一方で「ミスタービーンは貧しい人をいじめて優越感に浸っている」という説もあります。

リライアントはもともと安価な車であり、三輪車であることからイギリスではオートバイと同様の軽車両として分類され、四輪車よりも税金や保険料が安く設定されていました。当時、この三輪車に乗ることは「お金がない人の乗り物」というイメージがあったようです。

もっとも、ミスタービーン自身の愛車もそこまで高価ではないそうです。そのため、彼が勝手に「どんぐりの背比べをしている」という、皮肉を込めたユーモアだったとも考えられます。

ゴルフをするエピソードでは、ミスタービーンがヒッチハイクをするために手でサインを出したとき、青い三輪車が親切に止まってくれました。それなのにミスタービーンは・・・。

ミスタービーンはしゃべらない?

ミスタービーンの台詞は少ないですが、しゃべっていることがしばしばあります。

例えばミスタービーンが数学の試験に挑む回。隣に座っている受験生が勉強をしてきたかと尋ねてきます。ミスタービーンは「僕は三角法に集中して勉強した」とか「去年は微積分が出題されたと思いますが」といった発言をします。そこで隣の受験生が焦る様子を見せると、ミスタービーンは鼻で笑い、ライバル心を見せ始めます。しかし、いざ試験が始まると、違うところに山をはっていたことに気づき、必死でカンニングを試みる羽目に。

レストランではメニューを指差しながら「これをください」と注文したり、公園では先にベンチに座っていた人に「ちょっとお昼を食べようと思って」と話しかけたりしています。また、大晦日のパーティではミスタービーンの部屋に友人2人が訪ねてきて会話をしてますし、クリスマスには彼女にお茶を勧めたり、自分があげたプレゼントの何がいけなかったのかと独り言を言ったりしています。

誰かに何かを説明したり苦情を述べたりするときには長々と話す様子も見られます。その時は「blah, blah, blah(ブラブラブラ、あれこれあれこれ)」などと話しています。もちろんミスタービーンが実際に何を言っているのかは聞き取れません笑。

オープニングの讃美歌

「ミスタービーン」のオープニング曲は、ハワード・グッドール(Howard Goodall)によるものです。オックスフォード大学の聖歌隊員にいた彼は、このオープニングのために讃美歌風の音楽を制作しました。

ハワード・グッドールのオックスフォード大学時代に、ローワン・アトキンソンと作家のリチャード・カーチスと出会い、舞台活動で共に関わりました。彼は主に音楽面でのサポートを行い、ローワン・アトキンソンとリチャード・カーチスが初めてテレビでブレイクした「Not the Nine O’Clock News」を含むいくつかのプロジェクトでも協力しています。その他にも「レッド・ドワーフ」、「ブラックアダー」、「Thin Blue Line」、「The Vicar of Dibley」といった番組で関わっています。

リチャード・カーチスは「ミスタービーン」のエピソード1~7の脚本を担当しています。テレビや映画でも多くを手がけており、代表作には「ブラックアダー」、「The Vicar of Dibley」、「フォー・ウェディング(1994)」、「ノッティングヒルの恋人(1999)」、「ブリジット・ジョーンズの日記(2001)」、「ラブ・アクチュアリー(2003)」、「パイレーツ・ロック(2009)」、「アバウト・タイム(2013)」、「マンマ・ミーア!(2018)」、「イエスタデイ(2019)」などがあります)

レストランでのタルタルステーキ

ミスタービーンは誕生日に一人でレストランに行きます。
席に着くと、自分宛てのバースデーカードを書き、封をし、そして封を開けて一人で喜びます(クリスマスにも同じことをしてます笑)。

メニューを見ると料理の値段が高いことに気づき、自分の持ち金で注文できる「タルタルステーキ」を選びます。そして料理が届くと、料金を支払うタイミングだと思い込み、ウェイターに持っていたお金をすべて渡してしまいます。さらにチップまで。ウェイターはチップとしてそのまま持って行ってしまいます。

ところが届いた料理は彼の予想とは異なるもの。「タルタルステーキ(Steak Tartare)」はフランス料理で、生の牛肉(または馬肉)を細かく刻み、玉ねぎ、ケッパー、ピクルス、パセリなどの薬味と混ぜたものらしいです。イギリスの一般家庭では生肉を食べる習慣があまりないせいか、彼は驚きます。

見てもびっくり一口食べてこれまたびっくりでまったく口に合わない様子。「タルタルステーキを知らない」とは言いたくないプライドが働いたのか、残すのは悪いと思ったのか、何とか「完食した」と装おうとします。そのため、あちこちに肉を小分けにして隠していきます。料理は大丈夫かと聞きに来たウェイターにも「大丈夫」と答えてしまいます。

ほどなくして、客席を回るバイオリンの演奏者がミスタービーンの席にやってきます。演奏者はテーブルの上のバースデーカードを見つけ、気を利かせて「ハッピーバースデー」のメロディを奏でます。そして「食べるのか!?食べないのか!?」とでも言いたげなドラマチックなメロディを弾き、ミスタービーンはステーキを口にしなければならなくなります笑。

お会計のシーンでは、ミスタービーンが文無しで・・・という結末を予想しましたが、実際はそうではありませんでした。

湯たんぽで紅茶

公園でサンドイッチを食べようとやってきたミスタービーン。
ベンチにはすでに先客がいます。ミスタービーンは「お昼を食べにちょっと外に出てきました」と男性に声をかけ、ベンチに座っていた男性も「私もです」と答えます。

しかし、ミスタービーンのお昼は「ちょっと」というレベルではありません。サンドイッチを最初からすべて自分で作るつもりで、さまざまな材料を持参していました。パンはブルーマー(bloomer)を丸ごと持ってきており、パンをスライスするところから始まります。

ブルーマーとは、イギリスの伝統的なパンの一種。楕円形で表面に浅い切り込みが入った、皮がパリッとして中はふんわりした食事用パンです。甘くなく、食事と一緒に食べるのに適しています。やや厚めに切ってバターを塗り、スープと一緒に食べると美味しいです。

レタスを洗ったら水を切らなければならず、さらにコショウもホールのまま持参しているため、その場で挽く必要があります。レタスをパンに乗せた後、魚を取り出しました。イギリスには「pickled herring(酢漬けニシン)」というものがありますが、ミスタービーンが手にしている魚はそれよりも少し大きく見えます。何かの生の魚のようです笑。

隣の男性は熱いお茶を飲んでおり、それを見たミスタービーンは「僕にも当然お茶がありますよ」とでもいうように紅茶の用意も出してきます・・・笑。

ミスタービーンには彼女がいた

ミスタービーンには「イルマ」という彼女がいました。一緒に映画に出かけたり、マジックショーを観に出かけたり、クリスマスを過ごしたり。イルマにとってミスタービーンは彼氏で、ミスタービーンにとってもイルマは彼女だったのでしょうが、彼女をかなり粗末に扱ってしまうことがありました。

一緒に映画に出かけても、ミスタービーンは自分にだけ大きいサイズのポップコーンを買い、小さいサイズを彼女に渡します笑。そして、彼女のポップコーンに手を伸ばして食べます。それならそうと、彼女がミスタービーンのポップコーンに手を伸ばすと「これは僕のだ」と言って彼女の手を叩きます笑。

テーブルに着くときには、イルマのために椅子を引いたかと思えば自分でさっさと座ってしまいます。そしてマジックショーを観たあと(というより台無しにしたあと)、イルマが他の男性と踊っているのを見て焼きもちを焼いて邪魔をします。すっかりミスタービーンに呆れてしまった彼女は、彼を無視して他の男性と踊り続けます。寂しく部屋を出たミスタービーンはちょっとした仕返しをします。

おわりに

教会の礼拝に訪れたミスタービーンは、眠気を必死にこらえようとします。
賛美歌「All Creatures of Our God and King(我らの神であり王であるすべての生き物)」を歌う場面では、歌詞を知っているふりをしようとしますが「ハレルヤ」の部分しか歌えません。

隣の席に座っている男性はリチャード・ブライアーズで、「The Good Life」や「The Norman Conquests」に出演していた俳優です。

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